目次
はじめに
みなさま。こんにちは。
株式会社アイスリーデザイン マーケティング部インサイドセールスチームの鈴木と申します。
本日は「ARとは?~ARプロジェクトを成功させる5つのポイント~」をテーマに記載させて頂きます。
この記事を通じて、そもそものARに対する理解やプロジェクトを検討していく方にとって少しでも参考になればと考えております。それではどうぞ宜しくお願いいたします。
ARについて
1. そもそもARとは?
AR=Augmented Reality(オグメンテッド・リアリティ)の略語であり、拡張現実と呼ばれています。
現実の世界にデジタルコンテンツを重ね合わせることで、現実世界を拡張する技術です。
スマホをかざすと現実世界の中にデジタルのコンテンツが表示されて、映したものの追加情報表示されるなどがARの一般的な技術です。現実世界を基本として、情報を補足する技術となっている点が特徴です。
2. ARの歴史
ARのアイデアが登場したのは、100年以上前の1901年と言われています。
『オズの魔法使い』の著者として有名な米国の小説家ライマン・フランク・ボーム氏が書いたSF小説「マスターキー」の中で、ARグラスのような装置が登場しています。装着すると視界に入った人間の性格が表示されており、現実の中にデジタル情報が重ね合わさるという点がAR技術と一致しています。1901年の段階で、すでにARのアイデアが存在していたと言えるでしょう。
時が経ち、現在のようなAR技術が誕生したのは1990年代以降になります。
米国アームストロング空軍研究所で操作可能なARシステム「Virtual Fixtures」が航空機の操作能力向上のために開発されました。他には、米国コロンビア大学が開発したレーザープリンターをメンテナンスサポートするシステム「KARMA」で、ARヘッドセットを使った仕組みが使われました。また、1990年代後半には、アメリカンフットボールのテレビ中継でプレイ映像にフィールドラインを重ね合わせて表示するアイデアが登場しています。現在は当たり前のようにスポーツ中継において、AR技術が活用されておりますが、そのきっかけであると言えます。
2000年代に入ってからは、AR技術を使ったゲームやスマホアプリなどが続々と登場。
代表的なのは2016年の「ポケモンGO」かと思います。このゲームでは、現実世界と仮想的な要素が融合し、スマートフォンを通じて現実世界でポケモンを捕まえる体験を提供しています。
ポケモンGOの成功は、ARが日常生活に革命をもたらし、エンターテインメントや教育、観光など様々な分野での可能性を広げる一例となっています。
3. ARの種類
大きくロケーションベースARとビジョンベースARに分けられるのが特徴です。またビジョンベースARの中でマーカーベースとマーカーレスに分けられます。
●ロケーションベースAR
GPSや他の位置情報を使用して、特定の位置に関連付けられたARコンテンツを提供します。例えば、特定の場所に行くと、情報や案内が表示されます。例えばポケモンGOはこのロケーションベースARになります。ポケモンGOの特徴はGPSを使用してプレイヤーの位置情報を取得し、現実世界の特定の場所でポケモンを捕まえることができます。
●ビジョンベースAR
〇マーカーベースAR:
特定のマーカー(印)を使用して、ARが表示される位置を指定します。スマートフォンやカメラなどのデバイスがマーカーを認識し、それに関連するデジタルコンテンツを表示します。マーカーを見つけることで、ARが起動します。例えば、図鑑にスマホやタブレットをかざすことで動物の動く様子を確認できる仕掛けは、マーカーベースARになります。
〇マーカーレスAR:
マーカーを必要とせず、カメラを通じて周囲の環境を認識し、そこにARを重ねて表示します。特定のマーカーを必要としないため、より自由度が高く、周囲の物体や環境にARを重ねることが可能です。例えば、実際に着ることなく衣類やアクセサリーを試着できるデジタルファッションの仕掛けは、マーカーレスARになります。
4. VR、MRとの違い
ARは現実世界に仮想的な要素を重ねて表示し、VRは完全に仮想の世界を提供します。MRは両者の中間であり、現実世界と仮想世界を組み合わせた環境を提供します。それぞれの技術は異なる用途や体験を可能にし、それぞれ独自の利点を持っています。
●VRとは
VR=Virtual Reality(バーチャル・リアリティ)の略語で仮想現実や人工現実感と呼ばれています。
VRは、100%仮想空間をユーザーを体験させる技術です。多くはVRゴーグルなどを使用することでユーザーは現実世界から分離され、仮想空間へ没入します。ヘッドセット内のディスプレイや音響によって、ユーザーは別の場所や環境にいるように感じることができます。これにより、ゲーム、訓練、視覚化、ストレスリリーフなど、様々な目的で利用されています。
ARとVRの違いは、ARが現実世界にデジタル要素を追加するのに対し、VRは完全な仮想空間にユーザーを没入させることです。
●MRとは
MR=Mixed Reality(ミックスド・リアリティ)の略語で複合現実と呼ばれています。MRは、現実世界と仮想世界を統合する技術です。MR専用のデバイスを装着することで、周囲の環境を認識しそれに合わせてデジタル情報を表示します。ユーザーは現実世界で物理的な操作を行いながら、同時にデジタル情報を見ることができます。この技術は、訓練、設計、修理、デジタルツインの作成などの分野で利用され、ユーザーが現実とデジタルの双方を同時に操作できるため、効率的な作業が可能となります。
ARとMRの違いは、ユーザーの体験の程度にあります。ARは主にデジタル情報を現実世界に重ねるのに対し、MRはユーザーが現実世界の環境で物理的な操作を行いながら、同時にデジタル情報を見ることができます。MRは現実世界とデジタルの両方を同時に操作・統合することが可能です。
AR(拡張現実) | XR(複合現実) | VR(仮想現実) | |
---|---|---|---|
ベース | 現実世界 | 現実世界 | 仮想空間 |
技術 | 現実世界にデジタル情報を重ね合わせて、現実世界を拡張する技術 | 現実世界と仮想世界を統合する技術 | 仮想空間をユーザーに体験させる技術 |
主なデバイス | スマホ ARグラス | MR用ヘッドセット | VR用ヘッドセット スマホ PC |
ARプロジェクトを成功させる5つのポイント
では、このARを実現していくにあたって、どのようにプロジェクトを進めていくべきでしょうか?成功させる5つのポイントを解説したいと思います。
1. コンセプト定義とゴール設定
ARプロジェクトの最初のステップは、明確なコンセプトとゴールの設定です。これはプロジェクトの方向性を定め、成功を評価する基準を提供します。利用シナリオや目標ユーザーを洗練し、プロジェクトの目的を確立します。また、成功を測るためのKPIを定義し、プロジェクトの進捗を追跡するための枠組みを確立します。
ARは技術革新に満ちた分野ですが、技術だけにフォーカスしすぎないように注意が必要です。魅力的な技術を提供するだけでなく、ユーザーが求める体験や価値を提供することが不可欠です。技術とユーザーエクスペリエンスのバランスを取ることで、ARプロジェクトが成功する可能性が高まります。
例えば、IKEA Placeは家具の配置をARで体験できるアプリです。このプロジェクトは、ユーザーが家具を実際の部屋に配置して、購入前にどのように見えるかを体験できるよう設計されました。これは、利用シナリオを明確にし、ユーザーのニーズに対応するためのプロジェクトゴールを達成する良い例です。
2. テクノロジー選定と開発環境構築
ARプロジェクトの成功には、適切なテクノロジーと開発環境の選択が必要であり、特に3Dコンテンツの制作と開発環境は重要な軸です。
AR体験を魅力的にするためには、高品質でリアルな3Dコンテンツが不可欠です。デバイス上でリアルな体験を提供するには、リアルタイムレンダリングやアニメーションの制作が必要です。この際に、3Dモデリングやアニメーション、テクスチャリングなどの専門的なスキルが求められます。適切なツールやソフトウェアを選定し、開発者が最適な3Dコンテンツを制作できる環境を整えることが重要です。
開発プラットフォームとしては、iOS向けのARKitやAndroid向けのARCoreなどモバイルARアプリケーションや、複数のデバイスで動作するARアプリ開発が可能なUnityなどがあります。ARコンテンツの正確なトラッキングやシームレスなユーザーエクスペリエンスを実現するためにも、プロジェクトの要件に合った最適な開発環境を選定する必要があります。
3. ユーザーエクスペリエンス(UX)の設計
AR体験の成功には、優れたUXが不可欠です。直感的な操作性、適切な情報提示、シームレスな体験を提供するUXデザインが重要です。ユーザーのニーズを理解し、ユーザーが自然にAR機能を活用できるようなデザインを構築します。プロトタイプを使用して、実際のユーザーのフィードバックを集めることも重要です。
ポケモンGOは、UX設計が成功したARプロジェクトの一例です。シンプルな操作で楽しめるため、幅広いユーザーに愛されています。ユーザーのニーズを的確に捉え、直感的な操作性を提供しています。
4. プロトタイプ開発とテスト
ARプロジェクトにおけるプロトタイプ開発とテストは、アイデアの具体化やユーザーのニーズに合った体験を提供するために極めて重要です。プロトタイプ開発の際に特に留意すべき点は次のとおりです。
●アイデアを具体化:プロトタイプは、コンセプトやアイデアを具体的な形にする手段です。ARプロジェクトにおいては、AR技術の有効性や提供する体験を具体化することが重要です。ユーザーがARを通じて何を得られるか、具体的な利点や価値を示すことが目的です。
●ユーザーのフィードバックを取得: プロトタイプのテスト段階で、ユーザーのフィードバックを積極的に収集しましょう。ユーザーの反応や意見を基に、AR体験の改善点や課題を把握し、アプリケーションの調整を行います。ユーザーのニーズを正確に理解し、アプリケーションの方向性を調整することが重要です。
●技術的な挑戦や制約を確認: ARプロジェクトでは、技術的な制約や挑戦が多く存在します。プロトタイプの開発段階で、AR技術の制約やデバイスの性能、環境条件などを確認し、それらに対処する方法を検討します。例えば、トラッキングの精度やデバイスの互換性など、技術的な問題を特定し、改善することが重要です。
●スケーラビリティを考慮: プロトタイプの開発段階で、将来的なスケーラビリティや拡張性を考慮することが重要です。ARプロジェクトは成長する可能性があるため、柔軟性や拡張性を備えた設計を行い、将来の変更や追加機能の実装を容易にすることが望ましいです。
5. ローンチとマーケティング戦略
完成したARプロジェクトを成功させるためには、効果的なローンチとマーケティング戦略が欠かせません。ターゲットユーザーに対する適切なプロモーション戦略や普及策を立て、プロジェクトの認知度を高めます。また、ローンチ後のユーザーのフィードバックを収集し、改善や拡張を継続的に行います。
ポケモンGOのローンチ戦略は、大規模な成功例と言えるでしょう。特定の地域で段階的にローンチし、ソーシャルメディアを活用した口コミやプロモーションを行うことで、急速な普及を達成しました。適切なマーケティング戦略が成功につながった良い例です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
以上になりますが、少しでもみなさまのARに対する理解やARプロジェクトを進める際のヒントとなっていれば幸いです。XR、VR、AR領域について詳しく知りたい方、ご検討中の方はぜひこちらからご相談ください。
最後まで読んで頂き有難うございました。