この記事では、ECサイトの運用担当者が多く抱える課題をピックアップし、EC事業で売り上げを増加させる方法をご紹介します。
ECサイトにおける課題はあるものの、業務に追われてまだ手を付けられていない、課題は認識しているものの解決法が分からないという方は、ぜひこの記事を解決のヒントにしてみてください!
目次
アパレルECの市場規模推移と今後の予測
コロナ禍をきっかけにオンラインでの購買需要が飛躍的に増加しました。
経済産業省の調査によると、2019年には1兆9,100億円だったEC市場規模が2022年には2兆5,499億円となり、EC化率も13.87%から21.56%へと大きな伸びを見せています。
引用:【2023年版】アパレルECの市場規模と5つの課題をプロが徹底解説
しかし、2023年にはある程度コロナが収束し、巣ごもり需要の反動で商品を購入する「モノ消費」よりも旅行や外食などの「コト消費」にお金をかける動きが見られました。そのため、2019年から2020年にかけての大きなEC市場の拡大に比べ、2021年以降は成長が鈍化しているという現状があります。エネルギー価格や物価の上昇で買い控えが続いていることも原因の一つと言えるでしょう。
市場が急拡大した時期に、ECツール簡便化や多様なツールの登場によって事業者としての参入障壁が下がり、EC事業者の数が大きく増加しました。コロナ禍よりも成長が鈍化していることから、ECを始めれば売れるという状況は終わり、各社工夫をしなければ淘汰されてしまうフェーズに移行したという見方もできます。
つまり、売り上げ拡大のための対策をしっかりとしている企業とそうでない企業で大きな差が生まれる可能性があるということです。
しっかりとした対策をとるために、まずは課題から整理していきましょう。
EC担当者が抱えがちな3つの課題
課題①人が足りない…特にシステムに詳しい人材が不足している
EC担当者に限った話ではありませんが、リソース不足は慢性的に発生する課題と言えます。特にEC事業を始めて間もない企業の場合、現場優先となりECは最少人数で回さなければいけない状況もあるかもしれません。
現在はシステムの知識がなくても簡単に導入できるECツールが増えています。とはいえ、いざシステムトラブルが起きた場合に対処ができる人材は確保したいというのが本音ではないでしょうか。システムに詳しい人材を外部委託している企業も一定数いますが、対応のスピード感やコミュニケーションコストに悩みを抱えている担当者も多いはずです。
課題②データ管理が煩雑で、一人当たりの業務負荷が大きい
シーズンごとの商品のアップデートやセール品の処理において、データ入力や在庫管理の作業に忙殺されてしまうというのはよくある話です。在庫管理という側面では、EC上の作業だけでなく実店舗との連携も必要になり、しなければいけない作業は膨大です。
課題の解決には、単純に人を増やすという手もありますが、すでに人手が足りない場合は他の方法を考えなければなりません。
課題③ECサイトのユーザビリティが悪く、CVRが上がらない
ECサイトにおいて、「ユーザビリティ」、つまりユーザーがサイト訪問から商品購入までのプロセスをいかにストレスなくおこなえるかは、売り上げ拡大を目指すうえで重要なポイントになります。「使いやすいサイト」=「売れるサイト」と言っても過言ではありません。
具体的には、商品の絞り込み検索ができずサイトを離れてしまう、購入直前の会員登録画面でエラー表示が度重なり購入自体を断念してしまうなど、サイトの訪問者数に比べてCVRが低い場合は、こういったユーザビリティの悪さに起因することがあります。
簡易的に自社のECサイトが離脱ポイントに当てはまるか確かめてみたいという方はこちらを確認してみてください。弊社のデザイナーが、UIデザインのよくある課題とユーザビリティを改善するためのヒントをまとめた記事になります。
実案件から学んだ、本当に役立つUIデザインの法則50 ユーザビリティチェックリスト総集編|i3DESIGN Designers
このような課題感を認識しつつも、システム導入時のデフォルトのテンプレデザインのままアップデートしていない、顧客から使い勝手が悪いとの指摘があるが改善しきれていない、など後回しにしてしまっている担当者も多いのではないでしょうか。
課題を解決する3つの最適化
よくある課題は、3つの最適化をおこなうことで解決することができ、売り上げ向上につながる効果が期待できます。
- 課題①人材不足
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- 解決策:業務フローの最適化
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- 効果:工数削減とリソースの有効活用
- 課題②煩雑なデータ管理体制
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- 解決策:システム構造の最適化
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- 効果:データの一元管理とトラブルの軽減
- 課題③ユーザビリティの悪さ
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- 解決策:UI/UXの最適化
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- 効果:ユーザビリティ向上による購買率アップとリピート客増加
具体的にどのように解決できるのか、一つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 業務フローの最適化:工数削減とリソースの有効活用
限られたスタッフ数で膨大な業務量をこなしている場合、その業務は必ずしもやらなくてはいけないものなのか、削れないものなのかを考えてみてください。
ECツールは一般的に、基幹システム、CRM / MA、受注処理システム、在庫管理システム、物流システム、決済システムなど多様な外部サービスと連携しています。単にシステムがつながっているだけだとしたら、やらなくてもいい作業が二重に発生している可能性があります。
たとえばデータベースを連携している場合、エクスポートする側とインポートする側でファイル形式を統一しておけば、形式を整えるという作業を削減できます。手作業で対応している場合もあれば、RPA等を使って自動処理している場合もあるかとは思います。どちらにせよこういった事務的な二重作業はシステムの見直しで削減できる可能性が高いです。
このようにこれまで当たり前のようにやっていた作業を見直し、新しいツールの導入やシステム再構築によって改善できないか検討することで、作業を大幅に軽減し、その分の人的リソースを戦略策定や新商品の開発などに有効活用することができます。
2. システム構造の最適化:データの一元管理とトラブルの軽減
各所に散らばっているデータを一元管理することで、作業を効率化し、さらにヒューマンエラーを防止することができます。たとえば複数のチャネル(ECサイト、モール、実店舗)でそれぞれ管理されている在庫を一つのシステム内で連動させることができれば、大幅な工数削減とデータの転記間違えなどのリスク回避につながります。さらにデータ分析も容易になるので、現在の傾向を見定めての対策や売り上げ予測も立てやすくなります。
また、システムを再構築しシンプルな構造にすることで、トラブル発生のリスク軽減や原因がすぐに判明しやすくなるといったメリットがあります。これまで必要なタイミングでとりあえずサービスを連携してきたという企業も多いかと思いますが、その場合システムが複雑に入り組んでしまい、予期せぬタイミングでトラブルが発生することがあります。
そのようなリスクを取り除き、技術的な知識がなくてもシステムの状態を把握できるようになると、新たに人を雇ったり外注したりする必要はなく、今のスタッフのままでも十分対応できるようになります。
ツールの入れ替えやシステム改修に高額な費用がかかったとしても、中長期的な目で見て費用対効果があるかどうかを慎重に見極めることが重要です。
3. UI/UXの最適化:ユーザビリティ向上によるCVR改善とリピート客増加
サイトの使い勝手が悪いと顧客満足度の低下や顧客の離脱ポイントになるため、売り上げにも直結してきます。UI/UX改善とは、離脱ポイントを排除していったり、より顧客満足度の高くなる仕組みを盛り込む作業になります。
具体的には、現状のサイトの問題点(顧客が使いづらいと感じるポイント)を分析し、どのようにすればその課題を取り除けるのか、どのようなレイアウトやボタンのデザインであれば顧客がストレスなく直感的に操作できるのかを考え、デザインに落とし込んでいきます。商品購入までのアクションをスムーズに誘導できれば、CVRの向上が期待できます。
また、既存の機能にプラスして顧客体験が向上する仕組みをプラスすることもUI/UXの最適化に含まれます。例えば、ログインボーナスでポイントが付与されたり、そこにゲーム性を加えるなどすれば他社サービスとの差別化やリピート客の増加も見込めます。
必要な機能があれば問題ないという考えではなく、UI/UXデザインにはトレンドもあるので他社サイトなどもチェックしつつ常にデザインをブラッシュアップしていく気持ちでいることが大切です。
開発会社への依頼:専門家ならではの知見を取り入れ、効率的に課題を解決しよう
3つの最適化を解決法としてご紹介しましたが、3つをあわせて実行することで複合的に課題を解決することができます。専門的な知識やノウハウが必要になるため、実際には外部ベンダーにシステム構築を依頼することが多いかと思います。
外部に依頼するメリットは、専門家ならではの知見が活用できる点と効率性です。ゆくゆくは内製化を目指したいという場合でも、まずは外部の知見を取り入れリリースを早めることで、昨今素早く変化する市況にも対応しやすくなります。
では外部に依頼した場合、どのようなソリューションを提供してくれるのでしょうか。
課題の洗い出しと業務フローの再設計
データ管理の煩雑さを感じているのならば、無駄だと感じている作業があるはずです。そういった改善したいポイントをまずは洗い出す必要があります。このときポイントとなるのは、限定された業務範囲内で考えるのではなく、関係部署とその顧客、あるいは組織全体を見て網羅的に課題の洗い出しをおこなうことです。
すでに社内で課題の洗い出しをされているケースも多いと思います。しかし連携する複数のシステムに付随する業務フローを整理する必要があるため、システムを熟知した開発会社に課題の整理から依頼することも可能です。
このパターンのメリットは、要件定義から依頼する場合よりも開発会社の中で皆さんの会社に対するビジネス理解が深くなる点です。つい自身の業務範囲内での効率化を考えがちですが、本質的な業務フローの改善には全体最適の考え方が不可欠です。課題の整理から第三者に依頼することで、客観的な視点で全体感の把握をすることができます。
課題を一覧にし可視化ができたら、最適な業務フローを検討します。まずは現在のシステムで実現可能な範囲で考えることも一つの案ですが、しっかりと予算を準備して改善に取り組める場合には、システム的な制限を設けずに自由な発想で考えてみることをおすすめします。
オペレーションまで考慮したシステム構築
最適な業務フローが検討出来たら、そのフローを実現できるようシステムに落とし込んでいきます。このプロセスにおいて重要になってくるのが、オペレーションまで考慮してシステム設計ができるかどうかです。
データを一元管理できるようになっても、エラーが多かったり、修正がすぐに反映できなかったりと保守・運用フェーズになって問題が浮き彫りになるケースもあります。システムトラブルがあった場合にも、しっかりとしたオペレーションが組めていれば、たとえ外部にお願いするとしてもスムーズに対処ができるようになります。
セキュリティを担保しつつ、リリースまでの工程を最小限に圧縮することで、修正や機能アップデートを素早く本番環境に反映できるというメリットがあります。
顧客からの要望を迅速にシステムに反映することで、顧客体験の向上にもつながります。
機動的なオペレーション体制を組むには、チームとしてある程度の経験値が必要です。まずは開発会社に体制の土台を作ってもらい、内製化を目指す場合には徐々に自走へと転換させるのが近道と言えます。
UI/UXの改善
顧客の行動特性やインサイトまで分析して、システムのUIに反映させることで、ECでの購買という顧客体験を向上させることができます。
具体的には、サイト訪問は多いもののカゴ落ち率が高い、という課題がある場合には、スムーズに購入できる導線設計を組みなおすことでリピーターの増加や購買率の向上につながります。意匠的なデザインの向上以上の良い効果が期待できます。
顧客やターゲットの分析には、ペルソナ設定やカスタマージャーニーマップの作成、ユーザーインタビューなどの手法があります。これらの手法を用いることで、属人化しがちなデザインに一貫した論理性や軸となる考えを持たせることができます。企業のビジョンや事業戦略と連動させることでブランドイメージの確立にもつなげることができます。
開発会社を選ぶ際のポイント
開発会社の中にも、デザインが得意な会社や開発に特化した会社、バックエンドに強い会社などバリエーションがあります。システムに詳しくない場合、どのポイントを見るべきか迷ってしまいますよね。
ECのシステム改善を依頼する場合に、見ておくべきポイントを解説していきます。
価格
基本的には、システム改善の対象範囲によって開発費は大きく変動し、数百万~数千万円の価格差があります。また、デザイナーやエンジニアの単価も各社で幅があるため、クオリティーを担保したい場合には価格の安さだけで決めるのではなく、過去の実績やその会社のビジョンやミッションが自社と親和性があるかなども考慮したうえで検討するのがよいでしょう。
デザインと開発を一気通貫で任せられるか
デザイン会社と開発会社に別々に依頼することもできますが、依頼先が多いとその分だけコミュニケーションコストが高くなり、作業依頼やレビューのやり取りも煩雑になりがちです。コミュニケーションにおけるボタンの掛け違いを防ぐためにも、どちらも一気通貫で任せられる会社に依頼することがおすすめです。
特に社内にデザイナーやエンジニアがいないという場合には、全ての工程をまとめて任せられる会社に伴走支援を頼むのが安心です。
UI/UXに強いか
顧客体験の向上が売上の増加につながるというのはみなさんご存じの事実であり、顧客体験を向上させるために昨今ほとんどの企業がUI/UXに力を入れています。いまやUI/UXを開発に取り入れるというのは、ECのシステム改善において必須になりつつあるのではないでしょうか。
すでに社内で取り組んでいる場合でも、なかなか内部で気づくことができない課題があったりするものです。UI/UXに強い会社であれば、第三者の意見が必要、もしくは専門家目線の調査を依頼したいという要望にも応えてくれます。
UI/UXの手法は各社で多少違いがあるため、具体的にどんな手法を用いてデザインに落とし込むかも注目してみるとよいでしょう。
ビジネス要求定義も含まれているか
要件定義において、システムにおける要求定義とは別に「ビジネス要求定義」というものが存在します。ビジネス要求定義とは、業務上の課題を把握しどの課題をどのように解決するかを定めていく作業です。
この作業は社内で実施することもできますが、ヒアリング段階から開発会社にお任せすることも可能です。最終的にビジネス要求定義の内容をシステムに反映することになるため、システムの専門家である開発会社に任せることで網羅的な課題の洗い出しをすることができます。
おすすめの開発会社まとめ
おすすめの開発会社を簡単な紹介とともにまとめてみました。アパレルに限らずEC関連の実績も記載しています。ぜひご参考ください。(大人の事情で、1番目にあえて弊社のご紹介をさせていただいております…!)
※上記の選定ポイントは、なかなかコーポレートサイトや事例を見るだけではイメージが掴めないかもしれません。気になる企業があれば、一度問い合わせしてみることをおすすめします。
株式会社アイスリーデザイン
デザインとテクノロジーの力を駆使して、顧客の経営課題に寄り添い、中長期的な成長と繁栄に寄与するためのサービス開発を重視しています。UI/UXデザインに強みを持ち、ユーザーファーストのアプローチを用いたWebサービスやアプリ開発の支援実績が豊富にあります。エンジニアが在籍する組織ならではの強みとして、開発フェーズでの効率性や実現可能性を考慮し、デザインしている点も特徴です。
【実績紹介】
・セブンネットショッピング:https://www.i3design.jp/cases/7net
・会宝産業:https://www.i3design.jp/cases/kaiho
株式会社グッドパッチ
「デザインの力を証明する」をミッションに、ユーザー体験を重視したプロダクト開発を行うデザインカンパニーです。デザインスプリントやワークショップを通じて、企業のデザイン思考を強化し、DXを推進することに力を入れています。国内外の多様な業界で実績を持ち、常に高品質なデザインと技術を提供しています。
【実績紹介】
・JINS:https://goodpatch.com/work/jins
・出前館:https://goodpatch.com/work/demaekan
株式会社モンスターラボ
デジタルコンサルティングとプロダクト開発を専門とし、55カ国以上の戦略家、デザイナー、エンジニアが所属するグローバル企業です。これまでに2,200以上の開発実績を持ち、最新技術を駆使して企業の成長を支援しています。大規模なプロジェクトの支援実績が豊富で、DX推進のためのサービスを包括的に提供しているのが特徴です。
【実績紹介】
・松屋銀座/松屋浅草:https://monstar-lab.com/work/matsuya
・ユニメイト:https://monstar-lab.com/work/uni-mate
株式会社セブンデックス
セブンデックスは、UX・UIデザインに特化したコンサルティング会社です。ユーザー視点で事業成長の改善設計を考え、150以上の事業でUXデザインを手掛けた豊富なノウハウを持っています。新規事業の立ち上げから既存事業のグロースまで幅広く対応しており、ブランディングやマーケティングの領域に強みを持っているため、アイデア開発から依頼が可能です。
【実績紹介】
・ライトオン:https://sevendex.com/work/right-on
・学研プラス:https://sevendex.com/work/ieben
株式会社ニジボックス
UIUXデザインに特化したリクルートグループの100%子会社です。ユーザー中心設計を採用し、プロトタイプ作成とユーザーインタビューを繰り返すことで理想的な顧客体験を実現します。調査から制作まで内製化し、クライアントのPDCA推進もサポート。上位戦略から伴走できるUXスペシャリストを擁し、事業立ち上げから改善運用まで幅広いサポートが可能です。
【実績紹介】
・エアークローゼット:https://www.nijibox.jp/works/project17
まとめ
コロナ禍を経て、SNS経由のアパレルECやライブコマース、サステナブルファッションのトレンドなどチャネルの多様化や新たなトレンドの発生でEC業界の進化は加速しています。よいコンテンツが溢れているからこそ、顧客に自社商品を届けるためには今まで以上の工夫が必要です。
リソースを有効活用して業務効率化を高めるために、デジタルの力を最大限活用しましょう。また、移り変わりの早い市場の要求を可能な限りリアルタイムでキャッチアップするために、ユーザーファーストの考え方とスムーズな開発運用体制を整えておくことが重要です。この記事が、今まさにECの売り上げ拡大を模索している担当者の皆さまのヒントとなれば幸いです。
アイスリーデザインでは、既存ECサイトのリニューアルや、新規アプリ開発を支援しています。事業戦略の策定やUI/UX改善、開発~保守/運用のサポートまで一気通貫でサポートが可能です。まずは詳しく事例を知りたい、もしくは軽く相談してみたいというご要望もお受けしております。こちらよりお気軽にお問い合わせください。
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