2024年9月25日

UI/UXデザイン

ユニバーサルデザインからみるこれからのUI/UX

Kazuyuki Yoshizawa

新紙幣に見るユニバーサルデザイン

2024年7月3日、新紙幣が登場しました。10000円札は渋沢栄一、5000円札は津田梅子、1000円札は北里柴三郎という面々。この新紙幣ですが、デザインが公開されるや否や、その数字のフォントに一部で注目があつまりました。

新1万円札はダサい? 数字フォントにSNS不評も...実はユニバーサルデザインだった (J-CAST ニュースより)

ぱっと見、日本人の感覚としてはやや微妙な印象を受ける「10000」の表記ですが、どの国の人が見てもそれが「1」や「0」とわかるようにデザインされたユニバーサルデザインのフォントだそうです。

このように、ユニバーサルデザインは、すべての人にとって使いやすいデザインを目指したデザインと言えます。この考え方はUI/UXという観点においても重要な点を示しています。

まずは「カラー」によるユニバーサルデザインについて。

カラーに見るユニバーサルデザイン

カラーユニバーサルデザインは、色彩を通じて情報を正確に伝達するための重要なデザイン手法です。このデザインアプローチは、色覚特性の違いを持つ全ての人々に対して情報がアクセスしやすく、理解しやすいように配慮されています。

色覚検査において、先天性色覚異常とされる人は、実は日本全体で320万人以上とも言われています。男性だと20人に1人、女性だと500人に1人は「色弱者」のようです。このような色覚異常の人たちにもわかりやすく伝えるコミュニケーション手段として、カラーユニバーサルデザインはとても重要なのです。

採用する上で重要なポイントは以下の3つです。

1.できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ
色を組み合わせる時には、パステル調の彩度の低いカラー同士を選ぶのではなく、彩度の高いあるいは低い色を組み合わせてはっきりと色を際立たせます。色の濃淡・明暗の差(コントラスト)をつけることも重要です。

2.色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする
文字や線を太くすることも重要です。色弱者や高齢者になるほど、細い線や小さい面積のデザインはわかりにくくなるため、はっきり形や色の違いがわかりやすいように設計します。

3.色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする
カラーだけでなく、その色名を明記することも重要です。例えば「ピンク色の申請用紙にご記入ください」と案内をされても、色弱者にとってはどの用紙がピンク色なのかわかりません。色の名前を記載しておくことでコミュニケーションが図りやすくなります。 

インクルーシブデザインの重要性

UI/UXをユニバーサルデザインに近づけるためには、色覚異常だけでなく、デザインを享受する人たちの多様性を理解することが重要です。例えば人種・障がい・年齢など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々を理解し、それぞれが利用しやすいプロダクトをデザインすることが求められます。

代表的な例だと、代替テキストやキーボードナビゲーションなどが一般的ですが、これらは、視覚障がい者や運動障がいのある方などにも対応するための重要な機能です。また、Appleのアクセシビリティ機能やGoogleマップの音声ナビシステムは、障がい者にも使いやすいUIを提供する優れた例です。

こうしたあらゆる多様性を包含したデザインを「インクルーシブデザイン」と呼びます。インクルーシブデザインは、超高齢社会や多様なニーズに対応する施設、製品、サービスの設計に有効で、広範囲にわたって応用が可能です。平均的なユーザーの声だけではなく、多様な視点を取り入れることで、革新的で使いやすいソリューションを創出し、全ての人が可能性を追求できる社会を目指します。

改正障害者差別解消法とUI/UX

こうしたユニバーサルデザインに対する需要は年々高まってるように思えます。実際、2024年4月より施行されている改正障害者差別解消法において、ウェブアクセシビリティの合理的配慮が義務化されることになりました。

これにより、一般の事業者のウェブサイトやアプリケーションにおいても、合理的配慮に基づくアクセシビリティの向上が求められることになります。

このウェブアクセシビリティに対するガイドラインは、すでにデジタル庁が指針を出していますので、参考にしてみてはいかがでしょうか

ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック|デジタル庁

デジタル庁では「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を実現するため、継続的に「ウェブアクセシビリティ」の向上に取り組んでいます。この度、ウェブアクセシビリティに初めて取り組む行政官の方や事業者向けに、ウェブアクセシビリティの考え方、取り組み方のポイントを解説する、ゼロから学ぶ初心者向けのガイドブックを公開します。
優しいサービスのつくり手になるための一助として、ぜひご活用ください。

アイスリーデザインでも「とってもやさしい ウェブアクセシビリティチェックリスト」というホワイトペーパーを出しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。実際にどのような機能を対応する必要があるのか、対応することが望ましいのか、具体的なレベルで、イラスト付きで解説しています。

 

▼資料ダウンロードはこちらから

ウェブアクセシビリティチェックリスト | 資料ダウンロード | i3DESIGN アイスリーデザイン

デザインはすべての人が享受できるように

ユニバーサルデザインやインクルーシブデザイン、ウェブアクセシビリティなどは、いずれも「あらゆる人々が使いやすいものをつくること」を目指します。すべての人々にデザインが行き届く世界を目指すという意味ではとても重要な意義をもつ考え方でしょう。

これらの原則を踏まえ、UI/UX設計においては、幅広いユーザーのニーズに対応した使いやすいデザインの実現を目指すべきでしょう。これにより、ユーザーエクスペリエンスの向上に繋がり、デジタル製品やサービスの普及と利用促進に寄与することができるからです。

多様性がより叫ばれているこの社会において、この考え方に基づくデザイン設計、UI/UX設計は非常に重要な意味を持ちます。

さいごに

本記事をご覧いただきありがとうございます!更なる詳細やアドバイスを求めている方、私たちに直接ご相談したいことがあれば、こちらよりお気軽にお問い合わせください。メッセージの際に「CMOコラムを見て問い合わせた」とご記入いただくとスムーズに対応させていただきます!

Kazuyuki Yoshizawa

Kazuyuki Yoshizawa

フリーライターからキャリアを始め、創刊雑誌の初代編集長を務める。その後広告代理店でクリエイティブディレクターを経験した後、外資系MarTech企業(現Cheetah Digital社)に転職。ビジネスアーキテクトとして新規事業開発やマーケティングなどに従事。その後独立し、個人でSaaS企業の事業コンサルティングを行う傍ら、ニューヨーク発のIT企業MovableInkの日本進出支援、Repro株式会社にてCBDOなどを歴任。20年6月からは台湾発AIテックスタートアップのawooにジョインし、日本市場開発責任者として日本法人awoo Japanの立ち上げとグロースを成功させる。21年スタートアップピッチアジェンダ最優秀賞、22年繊研新聞主催ファッションECアワード受賞。23年2月より株式会社アイスリーデザインにCPO兼CMOとして参画。

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