2024年10月2日

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【DX推進企業スペシャルインタビュー Part3】経営を変えるDX。クラウド経営管理システム「Loglass」の浅見さんが語る予実管理DXとは

DX推進の最前線で活躍する企業に、DXの進め方や今後の展望などをお伺いするDX推進企業スペシャルインタビューの第三弾。今回は、株式会社ログラスの事業本部長/事業執行役員 VP of Revenueである浅見 祐樹さんに経営管理におけるお客様共通の課題、それに対するソリューションや経営管理ツールを取り巻く情勢についてインタビューしました。インタビュアーは、数々のSaaS製品の立ち上げやグロースを成功させ、現在は株式会社アイスリーデザインでCMOを務める吉澤和之。

ログラスのサービス概要

吉澤:貴社のツール、サービスの概要を教えてください。

浅見:ログラスの製品は、実際に経営企画、CFOという役割の方に使っていただいているプロダクトです。経営管理の領域で使われる、いわゆるEPM(※)と言われる製品になっています。具体的な活用シーンとしては、予算策定や予実管理といった経営計画・分析に使っていただく製品になっています。

(※)EPMとは?
EPM(Enterprise Performance Management)とは経営情報を可視化し、分析機能を提供することで、問題発見および解決を支援する管理手法やプロセスを指します。「企業パフォーマンス管理」とも呼ばれ、企業の業績を常に監視して、迅速に対処するためのものとして使われています。

お客様の特徴と共通課題

吉澤:今お客様はどういった業種、業態が多いですか?

浅見:我々は特定の業界に特化せずに利用できる、いわゆるホリゾンタルSaaSとしてサービス展開を行っており、基本的には管理会計(企業の内部管理と意思決定を支援するためのシステム)の機能を提供しています。すなわち、業界を問わずあらゆる企業様が共通で行う、会社経営における意思決定の支援をするといった形での機能提供をしています。

(※)ホリゾンタルSaaSとは?
ホリゾンタル(horizontal)とは「水平の」を意味する英語です。そして、ホリゾンタルSaaSは、業種や業界を問わず広く利用されるクラウドベースのソフトウェアサービスを指します。


特徴としては、部門の数が多かったり、取り扱っている製品が多い、ないしは子会社が数多くいらっしゃる、事業規模の大きい企業に活用していただくことが多いので、いわゆるエンタープライズのお客様が多いという特徴です。

吉澤:浅見さんのおっしゃる、事業規模の大きいエンタープライズのお客様が抱えている経営管理の課題はどういうものでしょうか?これが貴社のプロダクトのバリューになるのかなと思うのですが。

浅見:現在テレビCMでは、「予実管理が変われば、経営が変わる」というテーマで打ち出しておりまして、こちらを見ていただくと、イメージが湧きやすいのではないかと思います。

 

エンタープライズのお客様において、経営管理における課題としてあがっているのは、「バケツリレー経営」といわれる経営上の課題があります。

ほとんどの経営管理の実務というのは、エクセルやスプレッドシートといった、表計算ツールが活用されて行われています。各部門ごとの予算や報告の情報を、事業部単位でまとめていく、また、その事業部が集まったセグメント単位だったり、カンパニー単位で一定の粒度でまとめていくという、収集・統合を繰り返していくことになるので、結果的にバケツリレーのように、最終的に経営層に情報が集まっていくことになります。

そもそも各社で使っているエクセルのフォーマットが、ビジネスモデルの特徴だったり、部門の特性を踏まえると異なることが多くあります。前提(フォーマット)が異なることで、そこにかける収集・統合のプロセスが煩雑になり、属人化もしやすいと。

では、なぜ、このように収集・統合のプロセスが煩雑になり、属人化しやすくなるのかというと、ここに2つの課題があるからです。

1つ目は、収集・統合におけるリードタイムがかかっているというもの。我々の調査でも、前月の数字が集まってきてから、経営会議に報告できるまでに、5~10営業日かかるという結果が出ています。データ収集が遅れるというのが、課題の1つです。

2つ目として、属人化されたプロセスや手作業のプロセスが発生することで、データの精度や信憑性も薄れていくという課題です。結果として、経営会議で報告として挙がってくるのですが、「この数字本当に合っている?」という質問が飛び交い、数字を踏まえた議論というより、「この数字って正しいんだっけ?」という話が挙がってきてしまい、本質的な議論に至らないという事象が発生しています。

このように、スピードと精度の2つの課題が発生しているというのがわかりやすいところかなと思います。

経営管理のSaaS市場について

吉澤:経営管理のSaaS市場は、どういう市場でしょうか?ブルーオーシャンですか?

浅見:現在でいうと、市場がつくられているフェーズかなと思います。

これまでは、いわゆるSAP(※)のような基幹システムの中に1つのモジュールとして、経営管理やプランニングのソリューションが存在していましたが、実態として、各社のプランニングをサポートできるほどの役割まで保持できていなかったのがこれまででした。

すなわち基幹システムの中にモジュールの一つとしては存在していたものの、浸透していなかったということですね。

(※)SAPとは?
SAPは、ドイツのSAP SE社が開発した企業の基幹業務を包括的に支援するエンタープライズリソースプランニング(ERP)ソフトウェアの代表的なブランドです。多くの大企業で採用されているERPシステムです。


そんな中、徐々にFP&A(※)という概念、すなわちファイナンス、プランニングという2つの観点から、より事業部と接続しながら、会社や事業の成長に向けて推進していく役割が会社の中に重みづけされていくようになっていきました。プランニングという取り組みの中に、システムやソリューションを入れて強化していきましょう、という流れがアメリカの方で強まってきたのが、日本においても徐々に影響を受けてきています。

(※)FP&Aとは?
FP&Aとは、Financial Planning & Analysisの略であり、会計の知識を駆使して企業の財務状況を分析し、経営陣に対して財務的な助言を行うことを指します。


吉澤:日本国内における、経営管理クラウドは、考え方や機能などが、海外と比べて遅れているのでしょうか?

浅見:FP&Aの機能は遅れています。

FP&Aに限らず、大体、海外の事例から日本は5年位遅れてきているという話がよくあるのですが、この領域においても5年ほど遅れています。これは機能構造的な問題があるという風に思っています。日本側の組織としてよくあるのは、CFO側の組織と事業部門組織(利益を創出する組織)という形で完全に分かれている。このように分断が生じたことで、実際に事業部との連携や統制が利かせにくいという組織的な構造の問題があります。

FP&Aを先進的に取り組んでいる組織は、この構造が違っていて、CFOの役割が横串的に設置されていて、各事業部門に事業CFOが配属される形になっています。CFOの役割が機能するための組織的な構造がつくられているという感じですね。

吉澤:貴社のサービスを活用していく上で、キーマンとなるのはCFOになってくると思うのですが、CFO自体の認知度は少ない印象でしょうか?

浅見:CFOが会社経営においてイニシアチブをとれるかどうかも大きなテーマだと思います。流れ自体は来ていると思っています。例えば、ラクスルの永見さんが松本さんに代わってというところだったり、CFOがイニシアチブをとっていきながら会社成長をけん引していくというのは求められていると思っています。一方で、組織構造的な問題によって推進しきれないというのが根底にあるのかなと思っています。

吉澤:これは、個人的な興味ですが、貴社のスタンスは、CFOが営業とかマーケティングなどの事業側にコミットしていくスタイルが良いのですか?

浅見:我々としては、各事業部門とCFOラインとの連携を強めていく、シナジーを利かせていくためのプロダクトにしていこうという思想を持っています。

事例を出したいなと思うのですが、「予実管理の成熟度モデル」というものをつくっていて、

経営管理において、いくつかレベルがあるよねというお話をしていて、結局どんなレベル状態で、どういう経営管理の実務を行なっていて、どんな仕組みで成り立っているのかという話があるのですが、大体国内の企業のほとんどは部門別の予実を取りまとめて終わっているということが多いです。よくあるのが、数字集め屋さんになって、それ以降のディスカッションまで至れていないというところ。

やはり、ここのレベルをあげていくためにシステム、ソリューションを活用していきましょうというのが僕らが会話していることであります。まず、データ整備やデータフローがつくられていくと、収集のプロセスがぎゅっと縮まることで、集まったデータでどういったことが起きているかを早く知ることができるようになります。そこでLv3(予実分析)にいけて、そこで、振り返りができ、分析の議論ができます。

そして、経営管理の次のステップは何かというと、振り返りではなく、先々の予測、つまりフォーキャストなんですよね。動き出してからのフォーキャスト、先々何が起きそうかというのを予測することがすごく大事になる。そうなってきたとき、事業部門との連携やボトムアップ的な情報の集め方が必要になってくる。各事業部門を巻き込んだ形で、意思決定モデルがつくれるかだったり、最終的には外部の情報、トレンドも入れていきながら、アジャイルにいろんなシナリオを選択していく必要がある。

そういったモデルをつくっていきましょうというのが我々の世界観みたいな感じですね。

吉澤:今のログラスの売り出しているフェーズはこの図でいうLv3(予実分析)、Lv4(予予分析) を目指して行きましょうというやり方?

浅見:おっしゃる通りですね。お客様と会話する中で、自分たちがどういう位置づけにいるかというのを話してもらうと、「結構まだまだ今でもLv2(取りまとめ)です」「やっとLv3(予実分析)を目指せそうです」といわれることも多いので、3とか4とかに押し上げるためのものですと言っていますね。

吉澤:これによって数値の見える化が行われ、意思決定が早くなるということですね。

ログラスの今後の事業展開について

吉澤:プロダクトのロードマップについて知りたいのですが、今後ログラスはどんな拡張を図っていこうと考えられていますか?

浅見:大きく2つですね。取り扱えるデータの幅を広げていくというお話とともに、先々の予測だったり、意思決定の深度を深めていきたいという2つがあります。

FP&Aの肝をいうと、バックグラウンドの中に、どういう計画がつくられているかという接続が非常に大事です。

何を言っているかというと、例えば、人件費がいくらですという話って、ヘッドカウントベースでどの部門に何人を配置して、兼務ではこういうものが発生していて、先々の予測として、こういう異動が起きそうだ、昇給が起きそうだ、といったシミュレーションの下で算出されるので、財務の計画の裏側にある人員の計画や要員の計画が重要です。そういった計画の精度をより上げていくためには、バックグラウンド計画も含めてプランニングできるようなモデルをつくっていった方がいいよねというのが我々の中であって。

直近リリースしたものでいうと、Loglass 人員計画というプロダクトがあるんですけど。

これはまさに、人員のヘッドカウントからログラスの財務的なところのモデリングにまでつながるような形で接続されているので、より高い精度の人件費予算がつくられるようになっています。そういった僕らの構想、まあ結構一般的にはXP&A(※)といわれているんですけど、FP&Aの形に紐づいていく、様々な計画領域を触っていこうというのが1つ目ですね。

(※)XP&Aとは?
XP&Aとは、Extended Planning and Analysisの略です。
従来の財務計画と分析(FP&A)の枠を超えて、組織全体のさまざまな機能を統合して計画・分析を行う手法を指します。


2つ目は、意思決定の深度を深めていきたいというところになるんですけど。最終的に意思決定をしていきましょうとなった時に、今後どういうことが起こりそうかだったりとか、どのレバーをひいていくと、事業がどう変わっていくかという、いわゆる分析や予測が大事になったりします。そこの領域はAIの投資を強くやっていきながら、AI分析の方にも我々の機能拡張をしていきたいと思っています。

集まったデータからAIによってどんな示唆が生まれるか、そこから人間がどんな議論をしていくかというのを、AIの文脈では注力しているという感じですね。

吉澤:AIのところで直近計画しているのは?

浅見:まさに直近、シリーズBのリリースと同時にAI予実分析レポートという機能をリリースさせていただきまして。

この新機能は、集まったデータに対して、どういった分析軸で掘り下げていきたいよとか、どのデータ見ていきたいよという指示をすると、AIが自動でグラフやサマリーをつくってくれます。AIによって、全社の予実分析を広い視点で行なった上で、徐々にドリルダウンし最終的に論点を絞りだすことができているという感じですね。

吉澤:コメント的なところはAIがサマライズしている?

浅見:そうですね。簡単な事実だけではなくて、こういうことが起きてそうである、だったりとか、確認したほうがいいとか、次のアクションの提案までしているという感じですね。

吉澤:お客様からどういった声が届いていますか?

「議論がここから始めやすくなった」というのが大きく頂いているフィードバックでして、AIに「原因がこうだから」といわれて、「こうします」とはならないんですよ。AIは論点を探す役割であり、論点に対して、議論を踏まえて意思を込めることが大事なんですよね。

なので「Bをやるとなったら、Bになる」のではなく、「AではなくBを気にした方がいい」という論点を出すまでが大変なんですよね。また中にいるとその論点に気づかないことも多いんですよ。そこでバイアスのかかっていないAIから言われると、その意見をフラットに受け止めて考えられるので、議論の活性化が進めやすいというお声を頂いています。

さいごに

吉澤:このツール自体を使っていくお客様はどういう方々を想定していますか?

浅見:ツールを使っていただく方々は大きく3つの層がいらっしゃるかなと思っております。

1つ目は経営企画の方々。
2つ目は各事業責任を持っている事業部長であったり、各部門長の方々ですね。実績としてもよくあります。
3つ目は経営陣ですね。実際に経営会議で使われたり、経営会議を待たずとして、今何が起きているのかスピーディに分かるので、このような3つのステークホルダーがいます。

吉澤:改めて、どういった方々にログラスを使っていただきたいかというのをメッセージも込めて言っていただけると。

浅見我々の会社としては「良い景気を作ろう。」というミッションを掲げさせていただいております。この「良い景気を作ろう。」というのはまさに、事業の成長や会社の成長もそうですし、事業、会社の成長通して、最終的には従業員だったり、社員全員にも還元していって、日本社会に貢献するということを掲げています。そういった意味合いでは各社様のミッションの実現や事業の成長を、僕らがどれくらい支えられるかというのも非常に大事だと思っていて、そういった際に単純な業務効率化のツールというよりは良い景気をつくっていくためにつなげていく意思決定のご支援が我々のプロダクトの肝だなと思っております。今後、CFOを中心に、経営企画やCFO組織が事業を推進していくドライバーとなっていくことが大事だと考えています。オーナーシップをとっていきたいと考えていらっしゃる方々であったり、現場と連携しながら事業グロースを推進していきたい方々には、ログラスの可能性を感じてもらえるのではないかなと思っています。色々ご活用の可能性があるのではないかなと思っています。

in-Pocket編集部

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