2024年10月1日

テクノロジー

アジャイル開発とは?メリット・デメリット、他の開発手法との違いを解説

ソフトウェア開発の世界は、常に変化と進化を続けています。その中で、アジャイル開発は近年の変化の激しい顧客ニーズに柔軟に対応するための手法として知られています。

顧客ニーズを素早くサービスやプロダクトに反映させるため、ビジネスサイドとのコミュニケーションも重要になってくるアジャイル開発。そこで、開発者ではなくても押さえておきたい、アジャイル開発の基本的な概要とメリット・デメリット、具体的な実践方法、他の開発手法との違いまで解説していきます。

1. アジャイル開発とは?その特徴と成り立ち

アジャイル(agile)とは「機敏な」「素早い」といった意味をもち、その語源の通りアジャイル開発は、ソフトウェア開発において状況の変化に素早く対応する柔軟性を持ち合わせた状態を指します。

アジャイル開発では、要件定義から設計、開発、テスト、リリースといった開発工程を短期間で繰り返し回していきます。各サイクルは機能や要件を単位に細かく区切られていて、一つのサイクルで、顧客にとって価値のある機能を少なくとも一つ完成させることを目指します。

開発サイクルを細かく区切り、短期間で繰り返すことにより、市場へのリリースが早まり、頻繁にフィードバックを得ることができるのです。環境やニーズの変化に迅速に対応できる点が、アジャイル開発の大きな特徴の一つです。

アジャイル開発の誕生:「アジャイルソフトウェア開発宣言」

アジャイル開発は従来の重量ソフトウェア開発の問題を解決するための手段として、生まれました。重量ソフトウェア開発とは、予め厳格に定められた開発計画とガイドラインに従い、一般的には数か月以上の長期的な開発サイクルで回していくやり方です。

1990年代後半になると、インターネットの普及やオープンソースソフトウェアの台頭により、多くの開発者が同時に作業できるようになり、開発スピードが飛躍的に向上するなど、ソフトウェア開発の在り方が大きく変わりました。それに伴い、重量ソフトウェア開発は、主に開発の非効率性と柔軟性の欠如が問題視されるようになりました。

  • 非効率性:包括的なドキュメント作成が重視されており、詳細な設計書や仕様書作成に手間が取られ、開発作業の効率が低下する。

  • 柔軟性の欠如:長期開発によりリリース時には市場ニーズが変化している可能性があるにも関わらず、開発途中での要件変更に対応しづらい。

重量ソフトウェア開発へのアンチテーゼとして、前述の問題点を解決するために生まれたのがアジャイル開発です。2001年に17名の技術者やプログラマーがアメリカのユタ州に集まり議論した内容が、アジャイルソフトウェア開発宣言という文書にまとめられました。

この宣言はアジャイル開発とは何かが定義されており、4つの価値と12の原則で構成されています。

4つの価値

(引用:https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html

以下4つの観点において、従来重視されてきたものとの対比を示しつつ、それにも当然価値があると認めながらも、アジャイル開発では太字部分により価値があるとしています。

  1. プロセスやツールよりも個人と対話を(Individuals and interactions over processes and tools)
  2. 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを(Working software over comprehensive documentation)
  3. 契約交渉よりも顧客との協調を(Customer collaboration over contract negotiation)
  4. 計画に従うことよりも変化への対応を(Responding to change over following a plan)

12の原則

(引用:https://agilemanifesto.org/iso/ja/principles.html

また、アジャイル宣言の背後にある原則として以下12点が定められています。

  1. 顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供します。
  2. 要求の変更はたとえ開発の後期であっても歓迎します。変化を味方につけることによって、お客様の競争力を引き上げます。
  3. 動くソフトウェアを、2-3週間から2-3ヶ月というできるだけ短い時間間隔でリリースします。
  4. ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければなりません。
  5. 意欲に満ちた人々を集めてプロジェクトを構成します。環境と支援を与え仕事が無事終わるまで彼らを信頼します。
  6. 情報を伝えるもっとも効率的で効果的な方法はフェイス・トゥ・フェイスで話をすることです。
  7. 動くソフトウェアこそが進捗の最も重要な尺度です。
  8. アジャイル・プロセスは持続可能な開発を促進します。一定のペースを継続的に維持できるようにしなければなりません。
  9. 技術的卓越性と優れた設計に対する不断の注意が機敏さを高めます。
  10. シンプルさ(ムダなく作れる量を最大限にすること)が本質です。
  11. 最良のアーキテクチャ・要求・設計は、自己組織的なチームから生み出されます。
  12. チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整します。

4つの価値と12の原則を読んでみると、アジャイル開発において、主に以下の点が重要視されていることが分かります。

  • 顧客満足
  • 要求変更への柔軟な対応
  • 顧客との密接なコミュニケーション
  • 自己組織的な開発チームの構築
  • 開発の効率化と価値の最大化

「アジャイルソフトウェア開発宣言」は、アジャイル開発の実践において重要な指針となっており、多くの企業や開発チームがこの理念に基づいた開発手法を採用するきっかけとなりました。この宣言は、急速に変化するビジネス環境や顧客ニーズに対応するための新しいアプローチを提示し、ソフトウェア開発の世界に革新をもたらしたと言えます。

2. アジャイル開発を実現するための手段

アジャイル開発自体は、実は決まった形式があるわけではなく、ドキュメントよりも動くソフトウェアが重視されている状態、そして計画に従うよりも変化に対応することが出来ているときにアジャイルな状態であると言えます。

というのも、アジャイル開発という言葉が存在する以前から以下に挙げる具体的な開発手法が存在し、それらの軽量な開発プロセスにおける価値と原則をベストプラクティスという形でまとめたものを総称して、アジャイル開発と呼ぶためです。

では、アジャイルな状態になるための手段として、代表的な手法を4つご紹介していきます。

スクラム

アジャイル開発の手法の代表格で、最も一般的に使用されているのがスクラムです。スプリントと呼ばれる短期間の開発サイクルを繰り返し、チームで効率的に開発を進めるフレームワークです。スクラムにおけるチームには、以下の3つの役割が存在します。

  • プロダクトオーナー:顧客の要求を理解し、プロダクトの方向性を決定する役割
  • スクラムマスター:スクラムプロセスを円滑に進行させる役割
  • 開発チーム:実際の開発作業を行うメンバー(通常3-9人程度)

一般的に以下のようなプロセスで進めていきます。

引用:https://www.ryuzee.com/contents/blog/7124/

  1. プロダクトバックログの作成:プロダクトオーナーが顧客の要求を基に、開発すべき機能や要件のリストを作成し、優先順位をつけます。
  1. スプリントプランニング:開発チームがプロダクトバックログから次のスプリントで実装する項目を選択し、作業計画を立てます。通常2〜4週間のスプリント期間を設定します。
  1. スプリント実行:開発チームがスプリントの目標達成に向けて実装作業を行います。この間、以下のイベントが行われます。
    • デイリースクラム:毎日15分程度のミーティングで、進捗状況や課題を共有します。
    • バックログリファインメント:必要に応じて、プロダクトバックログの詳細化や見積もりを行います。
  1. スプリントレビュー:スプリント終了時に、開発した機能をステークホルダーにデモンストレーションし、フィードバックを得ます。
  1. スプリントレトロスペクティブ:チームでスプリントを振り返り、プロセスの改善点を議論します。
  1. 次のスプリントへ:フィードバックや改善点を反映し、次のスプリントのプランニングを行います。

スクラム開発は、チーム全体で頻繁にコミュニケーションを取り合い、常に進捗状況を確認した上で、定期的な振り返りによりプロセスを継続的に改善していくことがポイントになります。効率的かつ柔軟なソフトウェア開発を実現する手法です。

カンバン

カンバンは、効率的なタスク管理と継続的な改善を目指すソフトウェア開発手法です。この手法の核心は、作業の流れを視覚化することにあります。カンバンボードと呼ばれる板を使用し、タスクを付箋やカードで表現して、「To Do」「進行中」「完了」などの列に配置します。これにより、チーム全体が作業の進捗状況を一目で把握できます。

カンバンの特徴は、時間枠を設けずに柔軟に作業を進められる点です。必要に応じてタスクの優先順位を変更でき、市場の変化や顧客のニーズに迅速に対応できます。また、「進行中の作業」の量を制限することで、チームの負荷を適切に保ち、効率的な作業を促進します。

カンバンは会議の頻度が少なく、チームの自主性を重視します。ただし、定期的な振り返りを通じて、プロセスの改善を継続的に行います。この手法は、元々は日本語の「看板」に由来する生産管理手法で製造業から生まれましたが、その柔軟性と効率性から、現在では様々な業界のプロジェクト管理に広く採用されています。カンバンを導入することで、チームの生産性が向上し、より価値の高い成果物を迅速に提供することが可能になります。

エクストリーム・プログラミング(XP)

エクストリーム・プログラミング(Extreme Programming / XP)は、顧客満足と高品質なソフトウェア開発を目指す手法です。XPでは、短期間の開発サイクルを繰り返し、顧客との密接なコミュニケーションを重視します。開発チームには顧客が常駐し、即座にフィードバックを提供します。

XPには特徴的な作業方法があります。例えば、二人の開発者が一緒に一台のコンピュータで作業を行う「ペアプログラミング」や、プログラムを書く前にテストを作成する「テスト駆動開発」などです。また、頻繁にプログラムの部品を組み合わせて動作確認を行い、問題があればすぐに修正します。

XPでは、必要最小限の機能から始め、徐々に改良していくことを重視します。これにより、急な変更にも柔軟に対応でき、常に使える状態のソフトウェアを提供し続けることができます。つまり、XPは、お客様のニーズに素早く応え、高品質なソフトウェアを継続的に作り出すための方法なのです。

ユーザー機能駆動開発(FDD)

ユーザー機能駆動開発(Feature Driven Development / FDD)は、顧客にとって価値のある機能を中心に開発を進めるソフトウェア開発の方法です。この方法では、まず全体の計画を立て、その後に小さな機能ごとに開発を進めていきます。顧客の視点から見た機能を「フィーチャー」と呼び、これを基準に開発チームを分けるのが特徴です。

FDDでは、顧客との話し合いを通じて必要な機能を明確にし、それぞれの機能について詳しい設計を行います。その後、設計に基づいて実際にプログラムを作り、テストを行います。この一連の流れを機能ごとに繰り返すことで、少しずつ製品を完成させていきます。

FDDの利点は、大規模なプロジェクトでも対応できることと、高品質なシステムを作れることです。ただし、顧客のニーズを正確に把握するのに時間がかかる場合があり、その分開発が遅れる可能性もあります。このように、FDDは顧客の要望を重視しながら、効率的にソフトウェアを開発する方法です。

代表的なアジャイル開発実現のための手段をご紹介しましたが、最終的にどのようなサービスやプロダクトを作りたいのか、また開発を実施するのはどんな組織化ということに応じて適切な方法を選択する必要があります。場合によっては複数の手法を組み合わせて開発を実施することもあります。

3. アジャイル開発の流れと基本ステップ

アジャイル開発は手法によっても多少異なりますが、基本的に以下のような流れで進めていきます。

STEP1:リリース計画の立案

リリース計画の立案は、プロジェクトの方向性を定める重要なステップです。優先度の高い機能から順にリリースする大まかな計画を立てます。ただし、仕様変更に柔軟に対応できるよう、計画は固定化せず、継続的に見直しを行います。

最後に、ステークホルダー全員で計画を評価・調整し、合意を形成します。この過程を通じて、プロジェクトの全体像を把握しつつ、柔軟な開発体制を整えることができます。

STEP2:開発チームの構築

前述のアジャイル開発ソフトウェア宣言の中でも「プロセスやツールよりも個人と対話を(価値とする)」とあったように、アジャイル開発においては、プロセスやツールよりも開発する人を重視します。そのため、開発チームの構築は、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。

まず、3〜9人程度の小規模なチームを作り、多様なスキルを持つメンバーを選定します。チームには自主性を持たせ、全員で協力して仕事を進められるようにします。

プロジェクトの目的や進め方をみんなで共有し、チームの結束を強めます。また、チーム内のルールや大切にする価値観を決めます。各自の役割と責任を明確にし、情報を見える化することで、チームワークと効率を高めます。必要に応じて、外部の専門家(アジャイルコーチ)の助言を受けることで、チームの能力をさらに高めていきます。

STEP3:イテレーションの実施

イテレーションとは、短期間で繰り返される開発サイクルのことです。通常1〜4週間程度の期間で設定され、この間に計画、設計、開発、テスト、改善、リリースという一連の工程を行います。

まず、チームで目標とスケジュールを決め、リスクを検討します。次に、機能の設計を行い、実際にプログラムを作成します。作ったプログラムはテストで確認し、必要に応じて改善を加えます。最後に、完成した機能をリリースします。

このサイクルを繰り返すことで、少しずつ製品を完成させていきます。各イテレーション終了後には、チームで振り返りを行い、顧客からフィードバックをもらいます。これにより、途中で要望の変更があっても柔軟に対応でき、顧客のニーズに合った製品を効率的に開発できます。

STEP4:リリース計画の更新

最初に立てたリリース計画は、「いつまでにどの機能をリリースするか」という大まかな見取り図であり、固定的なものではないため、プロジェクトの進行に合わせて柔軟に計画を更新していきます。

開発チームはイテレーションごとに作業を進め、その都度成果を確認します。この過程で新しい情報や課題が見つかることがよくあります。例えば、ある機能の開発が予想より難しかったり、顧客の要望が変わったり、市場の状況が変化したりすることがあります。

そのような場合、チーム全体で話し合いながら、最新の状況に基づいてリリース計画を見直します。機能の優先順位を変更したり、リリース時期を調整したりすることで、より現実的で効果的な計画を維持します。

4. アジャイル開発を成功させるためのポイント

アジャイル開発はただ決められたプロセスを遂行していくだけで実行できるわけではありません。アジャイル開発を成功させるためには、以下のようなポイントに注意を払いながら進める必要があります。

  • 適切なコミュニケーション:
    関係者間で十分なコミュニケーションを取ることが不可欠です。発注側、開発側、PMなど全ての関係者が密に情報共有し、フィードバックを行うことでシステムの質が向上します。

  • 明確な役割分担と責任の遂行:
    例えば、スクラム開発であれば、特にプロダクトオーナーとスクラムマスターの役割が重要です。プロダクトオーナーはプロジェクトの方向性を決定し、スクラムマスターは開発をスムーズに進めるよう調整します。それぞれが自身の役割を理解し、責任を持って遂行することが求められます。

  • 発注側の積極的な関与:
    発注側も開発プロセスに積極的に参加し、フィードバックを提供することが重要です。実際に開発に関わるシステム部門だけではなく、ビジネス部門も巻き込んで進めていくことでユーザーが本当に求めるアウトプットに近づけることが出来ます。

  • 柔軟な対応と迅速な意思決定:
    要件の変更に柔軟かつ素早く対応できる体制を整えることが必要です。そのためには、関係者全員がアジャイル開発のあるべき姿を理解し、共通認識を持って協力することが求められます。

  • チームの生産性向上:
    アジャイル開発においては、開発メンバー個人の能力が重要視されており、各個人の能力を最大限に引き出せるよう継続的にチームビルディングを行うことが必要です。例えば、アジャイル開発におけるチーム形成と成長のプロセスを説明するモデルに「タックマンモデル」というものがあり、形成期⇒混乱期⇒統一期⇒機能期という段階を経て、チームは高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

5. アジャイル開発のメリット・デメリット

アジャイル開発は近年の変化の激しいビジネス環境に適した方法であり、多くのメリットがありますが、当然デメリットも存在します。導入を検討する際の注意点として、デメリットもしっかりと把握しておくことが重要です。

アジャイル開発のメリット

主なメリットは、仕様変更に柔軟に対応できる点です。短期間のサイクルで開発を進めるため、顧客のニーズを反映しやすく、優先度の高い機能から順次リリースできます。

また、小さな単位で開発とテストを繰り返すことで、手戻りの工数を抑えられ、開発スピードが向上します。さらに、顧客との密なコミュニケーションにより、顧客満足度を高めやすいという利点があります。

開発者にとっても、多様な作業を経験できることでスキル向上につながり、チーム全体の成長を促進します。これらの特徴により、変化の激しい環境下でも効率的な開発が可能となります。

アジャイル開発のデメリット

デメリットとしては、計画とリソースの不一致が生じやすい点が挙げられます。柔軟な対応を重視するため、全体の見通しが立てにくく、プロジェクト管理が複雑になる可能性があります。

また、頻繁な変更に対応するため、ドキュメンテーションが不十分になりがちで、長期的な保守や引き継ぎに課題が生じることがあります

さらに、顧客との密接な関わりが必要なため、顧客側にも相応の時間と労力が求められます。開発チームにも高いスキルと自律性が要求されるため、チーム編成や人材育成に課題が生じる可能性があります。これらの点から、組織全体でアジャイル開発の理解と体制づくりが必要となります。

6. アジャイル開発が向いている / 向いていないケース

アジャイル開発に向いているケースとそうでないケースが存在します。それぞれのケースの特徴と具体例を挙げていきます。

アジャイル開発が向いているケース

以下のようなプロジェクトはアジャイル開発が適していると言えます。

  • 要件が固まりきっていないプロジェクト:
    プロジェクトの開始時点で全ての要件が明確でない場合に非常に効果的です。アジャイル開発の反復的なプロセスを活用することで、開発を進めながら要件を徐々に明確化し、製品を成長させていくことができます。

  • 顧客の要求や市場ニーズに迅速に対応する必要があるプロジェクト:
    顧客側から頻繁に変更要求がある場合や市場から迅速なアップグレードが求められている場合などは、アジャイル開発の柔軟性が活きてきます。

  • 固定メンバーで継続的に開発が行われるプロジェクト:
    アジャイル開発は一長一短で実現できるものではなく、同じメンバーでトライ&エラーを繰り返しながらチームの連携を深めていきます。振り返りと改善を繰り返すことで、より精度の高い開発が可能になります。

上記の特徴を踏まえると、例えば、ユーザーのフィードバックを反映しながら機能を追加・改善していく必要があるWebサービスやスマートフォンアプリの開発、もしくは試行錯誤が多く、開発にスピード感が求められる、DX推進プロジェクトなどがアジャイル開発に適していると言えます。

アジャイル開発が向いていないケース

一方で、以下のようなケースにはアジャイル開発は向いていません。

  • 要件が明確で変更の可能性が低いプロジェクト:
    仕様が固定的で変更の余地がほとんどない場合、アジャイル開発の柔軟性よりも、後述するウォーターフォール開発の方が適している可能性があります。

  • 大規模で複雑なシステム開発:
    多くの部門や外部ステークホルダーが関わる大規模プロジェクトでは、アジャイル開発の導入が難しい場合があります。ただし、一部のケースでは大規模システムでもアジャイル開発を成功させている例もあります。

  • 厳格な規制や法令遵守が求められるプロジェクト:
    金融系システムなど、厳密な計画と文書化が必要な場合、アジャイル開発の柔軟性が逆に障害となる可能性があります。

7. アジャイル開発以外の開発手法

適切な開発手法はプロジェクトの特性や要件に応じて選択することが重要です。以下に、アジャイル開発以外の代表的な開発手法を説明していきます。

  • ウォーターフォール開発:従来型の重量ソフトウェア開発における代表的な開発手法です。プロジェクトを要件定義、設計、実装、テスト、リリースという段階に分け、順番に進めていきます。滝が上から下に流れるように、各段階を順序よく進めるため、この名前がついています。大規模で複雑なプロジェクトや、要件が明確で変更が少ないプロジェクトに適しています。

  • スパイラル開発:ウォーターフォールとアジャイルの中間的な手法です。計画、リスク分析、開発、評価というサイクルを螺旋状に繰り返しながら、徐々にシステムを完成させていきます。リスクの高いプロジェクトや、長期的な大規模プロジェクトに適しています。

  • プロトタイプ開発:システムの一部や簡易版を先に作成し、それを基に顧客からフィードバックを得ながら開発を進める手法です。要件が不明確な場合や、ユーザーインターフェースが重要な場合に適しています。

  • リーン開発:リーン開発は、ムダを排除し効率性を最大化するソフトウェア開発手法です。顧客価値の創出を重視し、最小実行可能製品(MVP)を早期にリリースして迅速にフィードバックを得ます。「仮説」「構築」「計測」「学習」「意思決定」のサイクルを繰り返し、継続的な改善を行います。

  • V字モデル:ウォーターフォール開発を改良した手法で、開発工程とテスト工程を対応させて進めます。各開発段階に対応するテスト計画を立てることで、品質管理を強化します。高い信頼性が求められるシステムに適しています。

▼様々な開発手法の変遷について知りたい方はこちらをご覧ください。

開発手法の変遷からその未来について、考えてみた | in-Pocket インポケット

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い

アジャイル開発と対照的な開発手法としてよく比較されるウォーターフォール開発ですが、両者の違いを比較してみましょう。

アジャイル開発は、小さな単位で機能を開発し、頻繁に顧客のフィードバックを得ながら柔軟に進める方法です。一方、ウォーターフォール開発は、全体の計画を最初に立て、段階的に進めていく方法です。

主な違いを表にまとめてみました。

特徴アジャイル開発ウォーターフォール開発
開発の進め方小さな単位で繰り返し開発全体計画に基づき段階的に開発
柔軟性高い(変更に対応しやすい)低い(変更が困難)
顧客との関わり頻繁(定期的なフィードバック)限定的(主に開始時と終了時)
リリースのタイミング頻繁(機能単位で随時)プロジェクト終了時に一括
計画の詳細さ大まかな計画(詳細は随時決定)詳細な計画(最初に決定)
リスク管理早期発見・対応が可能後半で問題が発覚するリスクあり
適している案件要件が不明確、変更が多い案件要件が明確、変更が少ない案件

まとめ

この記事では、ソフトウェアの開発手法の中でも、状況の変化に素早く対応する柔軟性を持ち合わせたアジャイル開発について詳しく解説しました。従来のウォーターフォール開発に代表される重量ソフトウェア開発の問題点を解消する、革新的な手法とされていますが、その実現は簡単なものではありません。アジャイル開発を成功させるためには、常に顧客中心の考え方を持つことと、それをサービスやプロダクトに落とし込むための体制作りやチーム構築が欠かせません。

アイスリーデザインでは、市場への迅速なリリースや顧客満足度の向上を目指し、開発体制を改善したいという企業様に向けて、最適な開発手法をご提案しています。まずは、現在の開発体制の状況把握がしたいというご相談も承っております。

さらに、私たちは内製化支援にも力を入れています。外部ベンダーへの依存度を減らし、自社でソフトウェア開発を行う能力を高めたいというご要望に対して、段階的な内製化プロセスを提案します。社内人材の育成から効果的な開発プロセスのご提案まで、最終的に自走できるよう支援させていただきます。

開発スピードの向上や開発体制に課題感をお持ちの場合には、こちらからお気軽にお問い合わせください。

in-Pocket編集部

i3DESIGN

デザインとテクノロジーに関する情報を発信するアイスリーデザインのオウンドメディア、"in-Pocket"の編集部です。テクノロジー・デザイン関連の解説記事やビジネス戦略にまつわるインタビュー記事などを投稿しています。日々の業務における知識のインプットとしてぜひお役立てください!

おすすめの記事

Recruit

アイスリーデザインでは

一緒に働くメンバーを募集しています

採用情報はこちら矢印