2024年10月11日

ビジネスストラテジー

ブランドはフレームワークで定義できる。強力なブランドを作るための3つの柱とは?

Kazuyuki Yoshizawa

ブランドとは何か?頭の中で描かれるイメージがブランドの本質である

ブランドとは、単なるロゴや商品名、スローガンだけではありません。ブランドは、消費者がその企業や商品、サービスについて抱く「総合的なイメージ」です。このイメージは、消費者がそのブランドと接するすべての瞬間に影響され、形作られます。例えば、広告、製品のパッケージ、ウェブサイトのデザイン、そして実際に商品やサービスを使用した際の体験など、あらゆる要素がブランドイメージに寄与します。

さらにブランドは、消費者にとっての「約束」とも言えます。消費者がそのブランドに触れるとき、「このブランドは信頼できる」「この商品は高品質だ」という期待感を持ちます。そのため、ブランドは単なるビジュアルやメッセージではなく、企業と消費者の間で築かれる感情的なつながりを指すのです。

強力なブランドとは、消費者があるブランドを思い浮かべたときに抱く感情やイメージが、誰にとっても共通している状態を指します。たとえば、Appleと聞くと「革新」「デザイン性」「洗練されたユーザー体験」といったイメージがほとんどの人の頭に浮かぶでしょう。同様に、ユニクロは「手頃な価格で質の良いカジュアルウェア」という印象を持つ人が多いです。このように、ブランド力とは、そのブランドに対する消費者の共通したイメージの強さに左右されます。

しかし、このような強いブランドを作るためには、単に商品を提供するだけでは足りません。消費者に「どう感じてもらいたいか」「どのような価値を伝えたいか」を企業自身が深く理解し、それを一貫して伝えていく必要があります。そのために、ブランドに「人格」を持たせることが重要です。たとえば、ブランドが持つべき性格や価値観を明確にし、それを一貫して外に発信していくことで、消費者はそのブランドに対して特定の感情を抱きやすくなります。

しかし、注意が必要なのは、この「人格」や「イメージ」が表面的なものに留まってはいけないということです。たとえば、冷静で静かな性格の人が、表面上だけ明るくふるまっていても、いずれそのギャップが露呈し、周囲に違和感を与えるように、ブランドのメッセージと実際の製品やサービスが乖離していると、消費者はそのブランドを信頼できなくなります。だからこそ、ブランドの本質を深く理解し、その核となる価値を忠実に反映したコミュニケーションが重要となるのです。

ブランドを構成する3要素

ブランドを効果的に構築するためには、体系的なアプローチが不可欠です。ブランドフレームワークを用いることで、企業の存在意義や価値を整理し、それを消費者に一貫して伝えることが可能になります。フレームワークを活用することで、ブランド戦略をただのマーケティング戦術ではなく、企業の中核的な価値観に基づいた長期的な戦略に昇華させることができます。

1. ブランドコアを定義する

ブランドコアは、企業の存在意義、ビジョン、価値観を明確にする最初のステップです。ブランドが「何のために存在するのか」「どのような未来を目指しているのか」「どのような価値観に基づいて行動するのか」を整理することで、ブランド全体の方向性が定まります。これがしっかりしていないと、ブランドメッセージがぶれ、消費者に一貫性のない印象を与えてしまう可能性があります。

例を挙げると、コーヒーチェーンのスターバックスは、ただのコーヒーを提供する企業ではありません。彼らのブランドコアは、人々をつなぎ、コミュニティを形成するという存在意義を掲げています。この存在意義に基づき、スターバックスは「人と人とのつながりを大切にし、心地よい第三の場所を提供する」というビジョンを持ち、全ての店舗でその価値観を反映しています。スターバックスの店舗に入ると、ただ商品を購入するだけではなく、快適な空間でリラックスできるという一貫した体験が提供されるのは、このブランドコアがしっかりしているからです。

2. ブランドポジショニングを明確にする

ブランドポジショニングは、競合他社との差別化を図り、自社のブランドが市場でどのように位置づけられるかを決定するプロセスです。ターゲット市場のニーズを理解し、その市場で自社がどのような価値を提供するかを明確にすることで、ブランドは消費者に対してより魅力的に映ります。たとえば、競合が提供できない「独自の強み」を見つけ、それを中心にメッセージを発信することが重要です。

例えば、スポーツウェアのナイキは、競合であるアディダスやプーマと異なり、「アスリートの精神を鼓舞する」というブランドポジショニングを強く打ち出しています。ナイキの有名なスローガン「Just Do It」は、単なる製品を超え、挑戦や努力を促進するメッセージを伝えています。このようなポジショニングによって、ナイキは市場で他のスポーツブランドと差別化され、消費者に対して「成功や達成感を求める人にふさわしいブランド」としての地位を確立しています。

3. ブランドパーソナリティを定義する

ブランドパーソナリティとは、ブランドがどのような「人格」を持つかを定義する段階です。ブランドのトーンや声を決めることで、消費者に一貫した印象を与えることができます。ブランドがどのような性格を持ち、どのような態度で消費者と対話するのかを決定することで、感情的なつながりを深めることができます。ブランドは、企業の顔であり、その人格が消費者にどのように伝わるかが重要です。

例えば、アウトドアブランドのパタゴニアは、地球環境保護に深い関心を持つ「環境意識の高いリーダー」としてのパーソナリティを持っています。彼らのコミュニケーションは一貫しており、製品の広告やキャンペーンも、サステナビリティや環境への責任を強調しています。さらに、パタゴニアは製品の修理やリサイクルを促進する取り組みを行っており、このようなブランドの行動がそのパーソナリティを強化しています。これにより、パタゴニアは単なるアウトドアギアのブランドではなく、環境保護に貢献したいという消費者との強い感情的なつながりを築いています。

このように、ブランドコア、ポジショニング、そしてパーソナリティを定義し、それに基づいた一貫したメッセージと行動を取ることが、消費者に強いブランド体験を提供するための重要なステップとなります。

ブランド戦略を実施する重要性

ブランド戦略の実施は、単なる企業の成長を促す手段に留まらず、長期的な成功と市場での差別化を図るための必須要素です。ブランド戦略を持たずして、強力なブランドを築くことはほぼ不可能であり、企業の生存力を左右するものでもあります。その重要性を、いくつかの観点から説明します。

1. 一貫性のあるメッセージを消費者に届けるため

現代の消費者は、情報の洪水の中で生きています。膨大な選択肢の中から、消費者が特定のブランドを選ぶ理由は、そのブランドが一貫したメッセージを発信しているからです。例えば、あるブランドが「環境に優しい」ことをアピールしているにも関わらず、実際には持続可能性に配慮していない製品を販売していたとしたら、その信頼はすぐに崩れてしまいます。ブランド戦略は、企業が消費者に対してどのようなメッセージを伝え、どのように行動するべきかを体系的に整理し、企業全体で統一された方向性を保つためのツールです。

2. 競合との差別化を図るため

市場には常に競合が存在し、消費者の選択肢も増え続けています。この中で、競合他社と差別化を図るためには、ブランド戦略を通じて自社の独自性を強く打ち出す必要があります。ブランド戦略を持つことで、消費者が「他のブランドではなく、なぜこのブランドを選ぶべきか」という明確な理由を提示することができます。差別化ができていないブランドは、市場の中で埋もれてしまい、消費者に選ばれる機会を失ってしまう可能性があります。

3. 長期的な顧客関係を築くため

ブランド戦略を実施することで、企業は単に商品やサービスを売るだけでなく、消費者との長期的な関係を築くことができます。ブランドは感情的なつながりを持ち、消費者がそのブランドに対して信頼や愛着を持つようになると、単なる価格競争から脱却し、ロイヤルティを獲得することができます。強力なブランド戦略を持つ企業は、消費者との深い関係性を築き、その結果として長期的な成功を収めることができます。

ブランドはフレームワークで定義できる

ブランド戦略を明確に定義し、成功へと導くためには、効果的なフレームワークを用いることが不可欠です。下記の図にあるように、ブランド戦略を9つの項目に分けて整理することで、企業の存在意義から市場での立ち位置、消費者とのコミュニケーションの取り方まで、一貫性のあるブランドメッセージを作り上げることができます。

ブランド戦略を定義するための3つの柱と9つの項目

このフレームワークは、「Brand Core」「Brand Positioning」「Brand Persona」という3つの大きな柱に分かれ、それぞれがブランドの重要な側面を表しています。

  • Brand Core(存在意義):企業が「何のために存在しているのか」「何を目指しているのか」「何をモットーにしているのか」を明確にすることで、ブランドの核を形成します。

  • Brand Positioning(対外的接点):ターゲットオーディエンスや市場での立ち位置を理解し、競合他社との差別化を図るための戦略です。ここで消費者に提供する価値を定義し、ブランドの独自性を確立します。

  • Brand Persona(特徴・性格):ブランドの個性や声を明確にし、消費者との感情的なつながりを深めます。「どのようなタイプのブランドか」「どのようなトーンでメッセージを発信するか」などを決定することで、ブランドに一貫した人格を持たせることができます。

これらの9つの項目をしっかりと定義することで、どのような施策を行っても揺るぎない軸が確立され、消費者に対して一貫した顧客体験を提供することが可能になります。このフレームワークは、ブランドを単なるデザインやマーケティングキャンペーンの枠を超え、企業全体で共有すべき戦略的資産として位置づけるための強力なツールです。

結果として、ブランドがどのように見られるか、どのような価値を提供するかを明確にし、消費者に深く刺さるメッセージを発信できるようになります。強固なブランドを築くためには、このようなフレームワークに基づいた戦略的なアプローチが欠かせないのです。

まとめ

ブランドは、消費者がその企業や商品、サービスに対して抱く総合的なイメージであり、そのイメージを効果的に形作るためには、戦略的なアプローチが欠かせません。フレームワークを用いてブランドコア、ポジショニング、パーソナリティを明確に定義することで、消費者に一貫したメッセージを伝え、強力なブランドを構築することができます。

さらに、ブランド戦略を実施することで、企業は一貫性のあるメッセージを発信し、競合と差別化し、消費者との長期的な関係を築くことが可能です。ブランド戦略は、単なるマーケティングツールではなく、企業の成長と成功を支える強力な基盤です。

私たちi3DESIGNでは、UI/UX・アプリケーション開発だけでなく、それに紐づく、企業の本質的な価値を引き出すための包括的なブランディング戦略も提供しています。市場における差別化が難しくなっている現代において、ブランドは消費者との関係を深め、企業の成長を支える重要な資産です。私たちは、そのブランドの「核」を明確にし、競合他社と差別化されたポジショニングを確立するための戦略を、一貫してご提供します。

「ブランディングと事業戦略が上手く連動していない」「商品やサービスの軸がブレていると感じる」というような課題感のご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

Kazuyuki Yoshizawa

Kazuyuki Yoshizawa

フリーライターからキャリアを始め、創刊雑誌の初代編集長を務める。その後広告代理店でクリエイティブディレクターを経験した後、外資系MarTech企業(現Cheetah Digital社)に転職。ビジネスアーキテクトとして新規事業開発やマーケティングなどに従事。その後独立し、個人でSaaS企業の事業コンサルティングを行う傍ら、ニューヨーク発のIT企業MovableInkの日本進出支援、Repro株式会社にてCBDOなどを歴任。20年6月からは台湾発AIテックスタートアップのawooにジョインし、日本市場開発責任者として日本法人awoo Japanの立ち上げとグロースを成功させる。21年スタートアップピッチアジェンダ最優秀賞、22年繊研新聞主催ファッションECアワード受賞。23年2月より株式会社アイスリーデザインにCPO兼CMOとして参画。

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