2024年10月17日

テクノロジー

生成AIが進むべき3つの方向性について詳しく解説する[2024年版]

Kazuyuki Yoshizawa

本記事は、2024年1月にnoteにて公開された記事を転記した上で、2024年9月25日にin-Pocket編集部により情報を追記しております。


2024年、IT業界の今後の動向について考察してみたいと思います。

私が2010年にIT業界に転職した時、CRM(顧客関係管理)やメールマーケティングなどが流行しており、WEB2.0という言葉も一般的でした。これらは今では当たり前過ぎて、WEB2.0という言葉は若い方は知らないのではないでしょうか。それほど、技術は急速に進歩しています。

特に、昨年の生成AIの出現は予想外でした。シンギュラリティー(技術的特異点)という概念も昔は知りもしませんでしたが、いまではこの言葉は、リアルで、時として脅威のようにも捉えることができます。生成AIの急速な発展により、IT業界は大きな変化点が訪れたといっても過言ではないでしょう。

現在はまさに生成AIブーム

現在のIT業界は生成AIに大きな焦点を当てており、それをどのようにツールとして活用するかに多大な努力を注いでいます。生成AIは、自然言語処理や機械学習の技術を活用して、ユーザーの入力に応じてテキスト、画像、音声などのコンテンツを自動で生成するシステムです。代表的な例としてはChatGPTがありますが、これはテキストベースの対話に応じてユーザーの質問に答えたり、記事を書いたりすることができます。最近ではマルチモーダル化し、画像なども生成できるようになりました。

生成AIのツールは、幅広い領域で活用されています。例えば、コンテンツ作成において、記事やレポート、ソーシャルメディアの投稿を素早く生成するために使用されます。また、プログラミングにおいては、コードの自動生成やバグ修正、さらには教育分野でのカスタマイズされた学習資料の作成など、多岐にわたっています。

シンギュラリティへの道のり

一方、生成AIが進化するにつれて、これらのツールは単なる助け手以上のものになる可能性があります。特に、シンギュラリティが訪れると、AIは人間と同等か、それ以上の知能や創造力を持つようになり、人間の仕事や創造活動に大きな変革をもたらすと考えられています。日本を含む世界中の国々では、このような先進的な技術を取り入れ、業務効率化や新たな価値創造を目指しています。しかし、これらの技術を活用する上での国際的な進展の差は明らかで、アメリカを中心に、特定の国や地域が先進的な活用事例を生み出しています。

このように、生成AIは多様な形で私たちの生活や業務に浸透しており、その可能性を最大限に活用するための取り組みが進んでいます。これらのツールの進化は今後も続き、より複雑で高度なタスクをこなすことが可能になると予想されます。

[2024年9月25日追記]
シンギュラリティについては、9月に開催されたセミナー「未来の知能を解き明かせ!生成AIと脳科学が変えるビジネス戦略」でも言及されています。

また、2024年9月24日には、OpenAI社のサム・オルトマンCEOが、人類はAIがけん引する新時代に入りつつあるというコメントを表明しました。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2409/24/news088.html

 

 

 

新たな概念BYOAI(Bring Your Own AI)

こうしたなか、先進国アメリカでは、すでに生成AIをどうビジネスに活用するかという視点をさらに高度に検討しています。それは「BYOAI」という概念で説明されます。

「Bring Your Own AI(自分のAIを持ち込む)」という概念は、ビジネスの世界における技術のパーソナライズ化と自律化の傾向を反映しています。つまり、個々の従業員やチームが自分たちの特定のニーズに最適化されたAIツールやソリューションを職場に持ち込み、使用するという考え方です。BYOD(Bring Your Own Device)の発展形であり、従業員が自身のデバイスを職場に持ち込み、それを業務に活用する文化から派生しています。

BYOAIの流れは不可逆的であり、特にアメリカをはじめとする技術革新が進んでいる国々がこの分野でリードしています。 職場や業務の多様化に伴い、標準化されたAIソリューションでは個々のニーズに合わない場合があります。BYOAIは、個々の従業員やチームが自分たちの仕事に最適なAIを選択し、カスタマイズすることを可能にします。これは、AIは人単位で使われるべきという思想に基づいているものです。


[2024年9月25日追記]
BYOAIの一番のリスクは、情報漏洩です。
この情報漏洩を防ぐために、大企業を中心に、企業独自の大規模言語モデル(LLM)の構築をするということも視野に入れる企業が増えてきています。ChatGPTやGeminiといったオープンソース(誰もが無料で使える)LLMと違い、企業独自のLLMを構築することで機密情報や個人データを使えるようになります。今後はこういった独自のLLMの開発や、もっと小規模なLM(SLM)の構築の需要が増え、その企業に特化したAI開発が加速することが見込まれます。


詳しい説明は「
LLMとLMとSLMって何が違うの?3分で開始できるGoogle Notebook LMの使い方講座【初心者向け】」をご覧ください。

 

BYOAIが生み出すビジネスチャンス

BYOAIの流行は、以下のような新たなビジネスチャンスを生み出すかもしれません。

  • 新たなデバイスの開発: 個人のAIツールをサポートするためのデバイス、特にモバイルやタブレットなどの持ち運びやすいデバイスとして、新たなツールが登場するかもしれません。それを開発するのはAppleなのでしょうか、Googleなのでしょうか。はたまたOpenAIが自らデバイスを作るかもしれませんね。

 

[2024年9月25日追記]
2024年6月には、AppleとOpenAI社による提携が発表されました。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/world/00653/

これを皮切りに、独自AIが搭載された新たなデバイスが開発されることが期待されていた矢先、9月、Apple16、Apple 16 Plusの発売が開始となりました。
https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/09/apple-introduces-iphone-16-and-iphone-16-plus/

バーチャルアシスタントSiriは、Apple Intelligenceによって大幅アップデートがなされ、カスタム絵文字(Genmoji)の生成ができるなど画像生成機能も搭載。作文機能も充実しており、メモアプリや電話アプリにおける音声の録音、書き起こし、構成、要約なども行えるようになるそうです。

 

  • セキュリティサービス: 個人が持ち込むAIツールの安全性を保つためのセキュリティサービスやプロトコルが重要になります。データ保護、プライバシー管理、ネットワークセキュリティなどが注目されています。特にAIの分野においてセキュリティは最重要事項となるため、ビジネスチャンスは大きく広がります。一方、世界的なルールがまだ定まっておらず、長期化する見込みです。

  • AI間の連携プラットフォーム: 異なるAIツール間でデータや学習結果を共有し、連携を促進するプラットフォームの開発が進められています。これにより、より複雑で洗練されたタスクの処理や、新たなビジネスモデルの創出が可能になります。

 

BYOAIは、従業員がより自律的かつ効果的に業務を行うための新たな道を開いています。これにより、ビジネスの世界では新しい形の働き方と、それを支える技術やサービスが求められています。この動きは、今後もさらなる技術革新を促し、多くの業界において変化をもたらすことが期待されます

注目されるマルチモーダルAI

最近では生成AIがマルチモーダル化しています。テキスト、画像、オーディオ、ビデオなど、複数のデータタイプを統合して活用することが可能になり、マルチモーダルAIは、これら異なる種類のデータを組み合わせて解析し、より豊かで複雑なタスクを効率的に処理できるように設計されています。

マルチモーダルAIの主要な要素

  • テキスト処理: 自然言語処理(NLP)を用いて、テキストデータからの情報抽出、意味解析、言語生成などを行います。

 

  • 画像認識: コンピュータビジョン技術を使い、画像やビデオからの物体認識、シーン理解、感情分析などを実現します。

 

  • オーディオ分析: 音声認識や音楽理解、感情の分析などを行うことができます。

 

  • ビデオ解析: 映像と音声情報を組み合わせて、より複雑なシナリオやストーリー理解、活動認識などを行います。

 

マルチモーダルAIの進歩による影響

  • 複雑なタスクの処理: 異なるモードのデータを組み合わせることで、単一モードでは難しい認識や分析が可能になり、例えば、テキストと画像を統合してニュース記事の真偽を判定する、感情分析をより正確に行うなどの応用が実現されています。

 

  • 新たな応用の創出: ヘルスケアでの患者監視、自動運転車の環境認識、教育分野での個別化学習支援など、多岐にわたる分野で新しい応用が生まれています。

 

  • インタラクティブな体験の強化: マルチモーダルAIは、ユーザーインターフェースを豊かにし、より自然で直感的な対話が可能になります。例えば、音声アシスタントが視覚的な情報を統合してより精度の高い回答を提供するなどです。

 

マルチモーダルAIの研究と開発は急速に進んでおり、今後もさらなる進化が期待されます。データの種類や処理技術の進歩により、より洗練されたアプリケーションが可能になり、私たちの日常生活やビジネスの多くの側面に革新をもたらすことが予想されます。これにより、人間と機械のインタラクションが一層深まり、新しい価値創造や解決策の開発に寄与すると考えられます。

AIと人間の融合

最後に、AIと人間の融合というテーマについてお話しします。このテーマは、特にニューロテクノロジーとコンピューター科学の進歩によって、ますます現実的な未来となりつつあります。この分野の研究は、人間の脳とデジタルインターフェースの直接的な統合を目指しており、神経科学、人工知能、ロボティクス、材料科学などの多岐にわたる領域が関与しています。

ニューロテクノロジーの進展

  • ブレイン・マシン・インターフェース (BMI): BMIは、脳の活動を読み取り、それをデジタルコマンドに変換する技術です。イーロン・マスク氏が率いるNeuralinkなどの企業は、脳とコンピューターを直接接続することにより、思考によるコンピューター操作や、障害を持つ人々の機能回復などを可能にすることを目指しています。また、一般消費者へBCI(ブレインコンピュータインターフェイス)が普及することを目指している企業の1つにKernelという企業もあり、脳活動の測定をするためのソリューション開発をしています。現在、人間が脳のスクリーニングを行うのは、生後数日で行われる聴覚テストのみであり、他に機会はない。Kernel社は、脳活動の測定が認知障害の早期発見へとつながることを示唆し、これを一般の人たちも測定できる機会ができるようになることを目指しています。

  • 神経インプラントとプロセッシング: 脳内に直接埋め込む微小なデバイスを通じて、脳の特定の領域を刺激したり、脳波を解析したりします。これらは、医療分野において、疾患の治療や機能回復に応用されています。

FDAの認証と臨床試験

イーロン・マスク氏のNeuralinkなどの企業は、臨床試験を開始し、FDA(Food and Drug Administration アメリカ食品医薬品局)の承認を受けていることが報告されています。これは、安全性と有効性の厳しい基準を満たすことを意味し、ニューロテクノロジーの商業化に向けた重要なステップです。

進化するAIとのシナジー

  • 共同作業と拡張能力: AIと人間の融合は、人間の認知能力や身体能力の拡張に寄与します。これにより、より複雑な問題解決や創造的な作業が可能になり、人間とAIの共同作業が新たな形で実現されます。

 

  • パーソナライズされたインタフェース: 個々の脳波や神経活動のパターンに合わせたカスタマイズが可能になり、より直感的で自然な人間と機械のインタラクションが実現します。

今後の展望と課題

AIと人間の融合は、IT産業における技術革新の重要な方向性を示しています。次の4〜5年で、生成AI、ニューロテクノロジー、AR/VRなどの進歩により、業界は大きく変わると予想されます。AppleのVision Proのような製品が市場に登場し、これらの技術が実生活に取り入れられる機会が増えていくでしょう。しかし、このような技術革新には、倫理的、法的、社会的な課題も伴います。プライバシーの保護、データセキュリティ、意識の自由など、人間の基本的権利に関わる問題を解決することが、成功へのカギとなります。

この分野の研究と開発は、私たちの仕事や生活に深く根差した変革をもたらす可能性があり、その進化と応用は、未来の社会を形作る上で欠かせないものになっていくでしょう。AIの進化は、私たちの生活において、ただのツール以上の存在となり、私たち自身の能力と経験を拡張するための動きが活発になっています。

[2024年9月25日追記]
また、今後の発展として、量子コンピュータの可能性にも注目が集まっています。
9月に開催されたセミナー「未来の知能を解き明かせ!生成AIと脳科学が変えるビジネス戦略」の後編でも言及されています。

 

さいごに

本記事をご覧いただきありがとうございます!更なる詳細やアドバイスを求めている方、私たちに直接ご相談したいことがあれば、こちらからお気軽にお問い合わせください。メッセージの際に「CMOコラムを見て問い合わせた」とご記入いただくとスムーズに対応させていただきます!

Kazuyuki Yoshizawa

Kazuyuki Yoshizawa

フリーライターからキャリアを始め、創刊雑誌の初代編集長を務める。その後広告代理店でクリエイティブディレクターを経験した後、外資系MarTech企業(現Cheetah Digital社)に転職。ビジネスアーキテクトとして新規事業開発やマーケティングなどに従事。その後独立し、個人でSaaS企業の事業コンサルティングを行う傍ら、ニューヨーク発のIT企業MovableInkの日本進出支援、Repro株式会社にてCBDOなどを歴任。20年6月からは台湾発AIテックスタートアップのawooにジョインし、日本市場開発責任者として日本法人awoo Japanの立ち上げとグロースを成功させる。21年スタートアップピッチアジェンダ最優秀賞、22年繊研新聞主催ファッションECアワード受賞。23年2月より株式会社アイスリーデザインにCPO兼CMOとして参画。

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