2015年12月24日

UI/UXデザイン

【イベントレポート】ぴあ、ピーチ・ジョン、TUKURUが語る “2016年のモバイルEC大胆予測”

こんにちは、in-Pocket編集部です。
去る2015年12月15日、アイスリーデザイン主催によるトークセッションが開かれました。
テーマはずばり、「2016年のモバイルEC大胆予測」!
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スマホでの買い物が当たり前の今、加速度的に広がるモバイルEC市場。その規模拡大は今年も一向に衰えず。そこで、モバイル業界を代表する3社のweb担当の皆様に、2015年の振り返りと、2016年のトレンドを大胆予測していただきました!
2時間しゃべりっぱなしで盛り上がったトークセッション、その中身を早速レポートします!


登壇者のご紹介

◆スピーカー
山中

ぴあ株式会社 山中 伸浩 氏
2002年ぴあ株式会社入社。Webセールスグループに在籍し、2008年に同社を退社後、アマゾン・ジャパンにてエレクトロニクスカテゴリー所属(カメラ、テレビ、オーディオ担当)のSite Merchandiserを務める。2011年、ぴあ株式会社に戻り、新規サービス事業開発および、ぴあのEC全般を担うWebセールスグループ グループ長に就任。
現在はチケット販売サイト「チケットぴあ」のマネジメント、及び、エンタテインメントジャンルの新規サービスのためのアライアンス、企画、開発、業務設計、運用のマネジメントに携わる。

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株式会社ピーチ・ジョン 安住 祐一 氏
2005年1月ピーチ・ジョン社入社。WEBサイトやアプリ開発・構築に関する複数のプロジェクトにPMとして携わり、直近ではDMP導入やグロースハックプロジェクトを担当。情報処理技術者試験情報セキュリティアドミニストレータを半年間独学で取得する。
2011年以降、デジタルマーケティング、WEB広告、インバウンドマーケティングなどに携わる。現在は、通販部門において、WEB戦略、CRM戦略全般を担っている。自社コミュニティサイト「My PEACH JOHN」も手がける。
石川さん

株式会社TUKURU 石川 森生 氏
2008年4月SBIホールディングス入社。SBIナビ(現ナビプラス)の立ち上げに参画、営業統括の責務を担う。2011年6月よりファッション通販サイトマガシークにてマーケティング部門の責任者となりサイトリニューアルや、サイト改善PDCAの確立、広告CRMの最適化、海外の最先端ソリューション導入の推進に携わる。2014年1月より製菓材料ECサイト「cotta」を運営する「TUKURU」を設立。ECサイトcotta(コッタ)の運営およびECと連携したキュレーションブックマークサイトme likey(ミーライキー)の開発運営にあたる。

 

◆ファシリテーター
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株式会社アイスリーデザイン 芝 陽一郎
1972年生、ドイツにて社会哲学専攻、早稲田大学大学院卒業後、1998年に野村総合研究所入社。金融機関むけのシステムコンサルティング業務に従事。2000年ソフトバンクに転職、海外ベンチャーキャピタルとの折衝、投資案件のデューデリを担当。当時グループ内の最年少役員。その後、複数のベンチャー企業の役員歴任を経てアイスリーデザイン設立。

 


 

2015年を振り返って

2016年予測のためにも、まずはおさらいを。はじめに2015年の施策を振り返っていただきました。

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芝: —— まずは今年の振り返りから。皆さん「2015年に実行してみて効いた施策」、どんなのがありました?

 

安住:
2015年は、アプリをリプレースしてリリースしました。物理的な会員カードをアプリに載せ替えた効果もあって、カタログアップデート後は、アプリでの売上が伸びる傾向にありましたね。

あとは、2015年にLINEスタンプのリリースかな。LINEのお友達数が約23万人から一気に約840万人に増えました。これはLINEの記録になったらしいんですが、今まで10年かかって増やしてきたメルマガ会員の何倍もの数を、わずか2,3週間で達成してしまったという…!(笑)

「やってよかった」と思う一方、時代がかなり様変わりしてきた、っていう実感がわいた一件でしたね。

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PEACH JOHN LINEスタンプ
※現在はダウンロードできません。
石川:
うちは、売上でいえば前比で約70%伸びたんですが、うまくいった要因のひとつは「商品説明の導入をコンテンツ化させたこと」ですね。
「cotta」は商品を買うためのECですが、レシピ情報を保有しているので、メディア的役割も強い。スマホでレシピ情報を探している人に、商品の“安さ”をアピールしても届きません。それよりも、コンテンツを見ることでテンションを上げてもらって、「じゃ(商品も)買って帰ろう!」と思ってもらうことが大切です。

そこでCMSを新しく作り変えて、商品登録と連動、コンテンツを付けられるようにしました。結果、導線がキレイになり、CVRが跳ね上がったんです。

 

芝:—— それはすごいですね。商品数が多いと、「どれだけ労力をかけて、どれだけのリターンを目指すか」って部分が結構難しいと思うんですけど…そのあたりのバランスってどうですか?

 

石川:
cottaの強みはまさにそこなんです。バターや小麦粉などの商品は、いつも必要な“ストック型の商品”だから、中長期視点でみてもリターンをあまり考えずコンテンツにコストが掛けられます。そうしてコンテンツを作りこむと、SEOで有利に働くLPとしての役割が大きくなります。

一方で、いま1万件くらいのレシピがありますが、レシピコンテンツ自体はほとんど自作する必要がありません。会員がアップしてくれるんです。これが大きな特長ですね。コンテンツの作りこみは、いわゆる“フロー型”と呼んでいる商品、トレンドや季節感がある商品だと難しいと思います。

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Cotta 詳細ページのレシピコンテンツ
芝: —— なるほど。メリハリをつけたコンテンツ作成が大事なんですね。山中さんはどうでしょうか?
山中:
実はPUSH通知とかでアプリをやりたくって上司に10回くらい企画書を出したんですが、企画が全然通らなくて…(笑)そんな中、2015年はSEOとメールの対策に力を入れました。

スマホを意識して、メールの配信のロジックを変えたことで流入率が200%くらい増加しましたね。モバイルに注力することで、レガシーの技術でもまだまだ成果がついてくる。そのことがよく分かりましたね。

芝:—— それは収穫でしたね。逆に、今年やってみて「これイマイチだったな~」っていう施策何かありますか?

山中:
実際に失敗したっていうわけじゃないんですが、エンターテインメント系のオウンドメディアはまったく流行りそうにありません。ライブエンタメはメディアにしやすいので、みんなが飛びつきバイラルメディアを作ろうとするんですけど、どうもうまくいかないですね。アーティストはトピックの発表タイミングが、実はマネタイズポイントだったりしますから。

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チケットぴあトップページ

芝 —— どのあたりがうまくいかない理由なんでしょうかね?

山中:
一過性のニュースとしては価値がありますが、ストックしても価値がないものが多いんですよね。

そういう意味ではLINEスタンプの導入もうちではあまり考えていません。ライブエンタメ分野は、極度に嗜好性が高いので、どれだけ反応してもらえるかがなかなか見えないんですよね。

芝 —— 商材に合わせて考える必要があるわけですね。

 

 


2016年のモバイルECはこうなる!!大予測

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芝:—— 

私が注目している最近のトレンドを並べましたが、皆さん、どうですか?
ずばり「2016年はこうなる!」っていう大胆予測をお願いします。

 

石川:
2016年以降は、他社コンテンツの連動を含めて、「EC以外でのタッチポイントを増やすこと」が大切になると思っています。

 

安住:
確かに今はブランドのエンゲージメントやコミュニケーションに力を入れて、自社媒体の充実を図ってきたところが勝ち組になっていますよね。

デジタルマーケティングが経営に影響することが多くなってきていて、デジタルの変化とリソースの変化を総合的に見て、さらにブランドイメージとのバランスを見ながら、経営判断のスピードを上げていく必要がある。UNIQLOが示したEC化率50%というのも、そういう意思表示だと思います。
山中:
ライブエンタメ業界の現状でいうと、今の日本の音楽系のストリーミングサービスはほとんどうまくいっていません。日本は閉鎖的な市場音楽売り手市場のため新曲や有力曲が全く揃わないんですね。さらに、チケット購入者は非常に嗜好性が高くて、自分が知っているキーワードしか検索しないんです。

 

石川:
Googleに振り回されることが多いんですが、今後はGoogleを経由する比率が下がると思うので、コンテンツマーケティングやキュレーションメディアなど、いわゆるバズワードと呼ばれるものの本質が出てくると思いますね。

 

安住︰
うちもGoogleに振り回されたくないという思いがあって、今はFacebookやTwitterなどのSNSのタイムラインの消費量が増えているので、PUSH通知とかではなくて、オウンドメディアに直接来てもらえるような、価値ある内容にしていくことが重要だと思います。

 


—— うちもオウンドメディアを始めたきっかけは、ユーザーとの接点づくりや関係性構築のためでしたね。今後もこういった視点での模索は大事になりそうです。

動画コマースやVRが創る新たな未来

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芝:
—— ちょっと話変わっちゃうんですが、今年春に開催された「Mobile World Congress 2015」へ参加したとき、VR商品がたくさんでていましたね〜。

安住:
2016年はVRがさらに盛り上がると思っています。スマホの次のデバイスチェンジは、VRヘッドセットがふつうのメガネで体験できるようになる時。2020年くらいまでには、動画もGoogle EarthもVRメガネで見ることができるようになると思います。その時、スマホにチェンジした時と同じように「コンバージョンしない」「どうやって広告出すんだよ」という現象が起こる。旅行へ行く人が減ったり彼女を作る人が減るかもしれない。そこで消費の傾向が変わるので注視していきたいですね。

 

石川:
デバイスの特性に応じたUI、販促、接客のしくみづくりもどんどん変えていかないと駄目ですよね。

 

山中:
VRが来たらプラットフォーマーになれないかぎり、うちはつぶれますね(笑)。なので、そこは、気をつけて見ていかないと思っています。

 

芝:
—— VRのコンテンツ自体を、ぴあさんでやったらどうですか?!

山中:
技術屋じゃないので、なかなか難しいですね〜(笑)。でも、VRがどこまで盛り上がるかは注目ですね。

安住:
ジョブスみたいな人が出てきたら、一気にいくと思うんですよね。

石川:
レシピの動画を制作しているんですが、実はVRは意識しています。確かに、これから面白いですよね。
今は実験的にレシピ動画を制作している段階でなのですが、ユーザーから「レシピ通りに作ってもうまくできない」という声があるので、動画でその行間を埋めたいと思っています。実際、すごく効果がありそうです。

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山中:
うちもやるとすれば動画です。映像に動きがあると海外に通用するサービスになると思います。
NETFLIXは制作費80億、PRに80億かけて、3ヶ月でペイしたと言われています。うらやましい限りですが、ネットサービスは、世界を見据えながらやる必要があると思います。
もちろん、予算を達成するための施策をやりながらですが、動画とオウンドメディアを組み合わせた動きを展開していきたいと思っています。

 

安住:
ピーチ・ジョンで運営しているコミュニティサイトでは、2〜3年かけて会員を3〜4万人増やそうと思っています。
まだまだ道半ばですが、固定的に買っていだだけるファンをじっくり増やしたほうが、将来的にWEBのコストを下げられると思います。

ただ、すでにキュレーションメディアに載っている情報を載せるのではなく、キュレーションメディアが使いたくなるような情報を載せたいですね。
先日、会員にアンケートをお願いしたところ、インセンティブなしに5,000人くらいが回答してくれました。

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芝:
インセンティブなしに?それはすごい!

安住:
そうなんです。そのリアルな声をコンテンツ化していくのは独自性が出て面白いと思っていて、いま模索しているところです。

他には、ゲーミフィケーションの要素を入れているので、コミュニティサイトで貯めたポイントに応じてイベントに参加できたり、モニターとして参加できたりする施策、つねにお客さんがウォッチしたくなるサイトをつくりたいですね。

 

芝:
VR、動画、オウンドメディアの独自性といったあたりが、2016年ますます注目されるという感じですね。確かに、VRでどうやってコンバージョンさせていくのかというのは、とても興味があるところです。今日ご参加の皆様、こういった所に注目してみるのも面白いんじゃないでしょうか。
個人的に登壇者に聞いてみたいという方もいると思いますので、ぜひこの後の懇親会で直接お話してみてください。
みなさん、本日はありがとうございました!

 


熱く語ってくれたお三方のトークの中で、特に印象に残ったものを最後にまとめてみました。

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<山中氏>
●オウンドメディア的な施策は、ライブエンターテイメントでは失敗しているケースが多い
●やるとすれば、動画が切り口。画面に動きがあると海外に通用するサービスになるはず
●NETFLIXは制作費80億、PRに80億かけて、3ヶ月でペイしたと言われているが、ネットサービスは、世界を見据えながらやる必要があると思う。
●もちろん、予算を達成するための施策をやりながらだが、ぜひ動画とオウンドメディアを組み合わせた動きを展開していきたいと思っている。

 

<石川氏>
●当社も動画に着手しはじめている。ユーザーから「レシピ通りに作ってもうまくできない」という声があるので、動画でその行間を埋めたいと思っている。
●Googleに振り回されることが多いが、今後はGoogleの比率が下がると予測しているので、コンテンツマーケティングやキュレーションメディアなど、いわゆるバズワードと呼ばれるものの本質が出てくると思う。ECサイトとしてリーチ出来ていないユーザーに、レシピなどの別の側面から情報を届けたい
●あとは、別のタッチポイントをどれだけ作れるか。ユーザーがECサイトを意識せずともタッチポイントとしてメディアを使うという視点が大切だと思う。

 

<安住氏>
●FacebookやTwitterなどのSNSのタイムラインの消費量が増えているので、Googleなどのプラットフォームに振り回されないようにしたい。オウンドメディアに来てもらえるような、価値ある内容にしていくことが重要
2016年はVRがさらに盛り上がると思っている。スマホの次のデバイスチェンジは、VRヘッドセットがふつうのメガネでVR体験できるようになる時ではないか。2020年くらいまでには、動画もGoogle Earthもメガネで見ることができるようになると思う。
その時、スマホの時と同じように「コンバージョンしにくい」など課題が生まれたり、旅行へ行く人が減ったり彼女を作る人が減るかもしれない。そこで消費の傾向が変わるので注視していきたい。

 

最後に

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トークセッションの熱も冷めぬまま、登壇者と参加者による懇親会へ。
ケータリングによる軽食をつまんでもらいながら、モバイル・EC・オウンドメディアなど様々なワードが飛び交うにぎやかな交流の場になりました。
ここでも話したりない方々は、みんなで打ち上げ会場となる近隣の居酒屋に!
こうなることを予想して予約していた甲斐がありました(笑)

 

――いかがだったでしたか?
2016年が間近に迫る今、新年早々参考&活用できる具体的アクションが盛りだくさんだったように思います。
これからもアイスリーデザインでは色んなテーマでトークセッションやセミナーを開催したいと思っています。
今回お会い出来なかった皆さんと、次の会場でお会い出来ることを願って、イベントレポートとさせて頂きます。
それでは皆さんよいお年を!
来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

in-Pocket編集部

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デザインとテクノロジーに関する情報を発信するアイスリーデザインのオウンドメディア、"in-Pocket"の編集部です。テクノロジー・デザイン関連の解説記事やビジネス戦略にまつわるインタビュー記事などを投稿しています。日々の業務における知識のインプットとしてぜひお役立てください!

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