近年、デジタル化や競争の激化、ユーザー中心の開発、データに基づいた意思決定の重要性が増すなかで幅広い企業から注目を集める役職「PdM(プロダクトマネージャー)」。
GAFAやAirBnB、Slackなどの国際企業が採用したことでその存在が知られるようになり、日本でもソフトバンクや楽天がPdMを配置したプロジェクトで大きな成功を収めたことから需要が広がりました。
しかし、PdMの業務範囲や求められるスキルは幅広く、PM(プロジェクトマネージャー)やPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)とも混同されがち。
そこで本記事では、PdMとは何か、その多岐にわたる業務内容、役割が注目される理由に加え、PMやPMMとの違いについて解説していきます。
目次
PdM(プロダクトマネージャー)とは?
プロダクトマネージャー(以下、PdM)とは、プロダクトの企画、開発、リリース、そして成長まで、すべてのフェーズにおいて責任を持つ役割のこと。プロダクトとは、ウェブアプリ、スマホアプリ、ECサイト、SNSプラットフォームなどを指します。
PdMは幅広い責任を担うことから、「プロダクトの社長」や「ミニCEO」と呼ばれることもあり、特にデジタルプロダクトを提供する企業にとって企業成長のカギとなる存在として注目されています。
一般的には「プロダクトマネージャー(Product Manager)」の頭文字をとって「PM」と略されますが、「プロジェクトマネージャー(Project Manager)」と混同される場合があるため、「PdM」と表記する企業が増えてきています。
PdMの多岐にわたる業務範囲
PdMの仕事は、プロダクトを成功に導くための計画、管理、調整。
企画から市場投入、改善、成長まで、プロダクトのあらゆるフェーズに関わる役割であるため、その業務内容や必要な知識、スキルは多岐に渡ります。
下記は、業務内容をカテゴリ分けした図です。
PdMの業務内容
1. 製品企画
プロダクトのビジョンや市場におけるポジショニング、目標を設定します。たとえば、新しいアプリを開発する際、「このアプリはどのようなユーザーにどんな価値を提供するか」を明確にします。もしターゲットが忙しいビジネスパーソンであれば、「シンプルで直感的な操作を重視し、短時間で情報を得られるようにする」といったビジョンを設定します。また、プロダクトの「ロードマップ」(開発計画表)を作成し、実現に向けて各チームと調整を行います。
具体的な業務例
- 市場調査ミーティングを設定する
対象顧客層や競合製品の調査結果を共有し、ギャップを特定する。- 顧客インタビューのスケジュールを組む
現行製品の課題や新機能に対する期待をヒアリングする。- 製品ロードマップを作成・更新する
短期/中期/長期の製品開発計画を明文化。- ビジネス要件のドキュメント化
製品が達成すべき目標やKPIを明確にし、共有する。- 新機能のプライオリティ設定
顧客へのインパクト、開発コスト、収益性を基準に優先順位を決定。
2. エンジニアリング
プロダクトに新しい機能を追加したい時などには、エンジニアリングチームと協力し、技術的に可能かどうか確認しながら実現方法を決めていきます。たとえば、アプリに「お気に入り」機能を追加したい場合、エンジニアと一緒に「ボタンをどこに配置するか」「どういうデータの保存が必要か」などを話し合いながら進めます。実装に時間がかかる場合、必要なリソースを調整したり、最小限の機能(MVP)でリリースして徐々に改善を加えるスケジュールを立てることもあります。
具体的な業務例
- 要件定義書を作成する
機能概要、フロー、エッジケースを明文化し、エンジニアチームに共有。- 開発スプリントの計画ミーティングを実施する
各スプリントの目標とタスクを決め、JiraやTrelloで管理。- 技術的リスクを洗い出す
新機能の開発に伴うリスクや制約をエンジニアと検討。- 実装レビューを実施する
実装が要求通りか確認し、エンジニアと改善ポイントを共有。- テスト計画の策定を支援する
QAチームと協力し、テスト項目を作成・優先順位付け。
3. デザイン/UIUX
ユーザーが使いやすく魅力を感じるプロダクトを作るために、デザインチームと協力しながら必要な要件を明確にします。たとえば、新しく「検索機能」を追加する場合、デザインチームと「検索バーの位置はどこが一番使いやすいか」「検索結果がどう見えると分かりやすいか」について話し合います。
具体的な業務例
- ペルソナ設計のワークショップを開催する
ターゲットユーザーの行動やニーズを具体化。- FigmaやMiroでワイヤーフレームをレビューする
UIの流れや使い勝手を確認し、フィードバックを提供。- A/Bテスト案を企画する
複数のUIデザイン案を試し、データに基づいた意思決定をする。- デザイン仕様書をエンジニアに共有する
各コンポーネントの動きやスタイルの詳細を伝える。- アクセシビリティを考慮したUI設計を推進する
視覚障害者や色覚異常者向けのデザイン改善案を作成。
4. セールス
プロダクトが顧客のニーズに応えられるように、セールスチームから顧客のフィードバックを収集し、プロダクトに反映することも重要です。たとえば、ある機能について「顧客から使いづらいという声が多い」とセールスチームから報告があった場合、そのフィードバックをもとに、機能を改善できるか検討します。また、セールスチームから「この機能が追加されれば、より多くの顧客に提案できる」といった要望があれば、実現可能かを技術チームと話し合い、ロードマップにその機能を加えることを検討します。
具体的な業務例
- 製品トレーニングセッションを開催する
新機能や更新内容を営業チームに説明し、質問を受ける。- 営業資料を作成する
製品の強みや導入事例を含むスライドやドキュメントを準備。- 競合製品比較資料を共有する
自社製品が競合より優れている点を分かりやすくまとめる。- フィードバックを収集する
営業チームが顧客から得た意見を製品開発に活用。- 営業支援ツールを整備する
CRMシステムに製品情報やFAQを登録し、営業活動をサポート。
5. マーケティング
プロダクトの特長を顧客に伝えるためのメッセージングや市場での位置付け(ポジショニング)、競合分析、ターゲット市場の定義などを行います。たとえば、新しい家計簿アプリをリリースする際、「シンプルで初心者でも簡単に使える」という強みをどのように伝えるかを検討します。「初心者でも1分で始められる!」などのキャッチフレーズを考え、広告やウェブサイトで訴求することで、アプリの特長をわかりやすく伝えます。
また、競合のアプリと比較し、「どこが他社より優れているのか」を分析します。たとえば、他社が多機能を売りにしている場合、「このアプリはシンプルに使えることを強みとして、忙しい人におすすめ」といったメッセージを打ち出します。さらに、ターゲット市場を「時間に余裕がないが、家計管理をしたい人」と設定し、そのニーズに合ったプロモーションを行い、製品企画チームと連携しながら市場のニーズに応じたプロダクトの強みを伝えます。
具体的な業務例
- ローンチキャンペーンの企画会議を実施する
新機能の認知度向上施策をマーケティングチームと話し合う。- ターゲットユーザー分析を行う
Google Analyticsやその他のツールでユーザーの行動を把握。- コンテンツカレンダーを作成する
ブログ記事やSNS投稿のスケジュールを計画。- リードジェネレーション施策を策定する
ウェビナーや無料トライアルキャンペーンを企画。- 広告クリエイティブのレビューを行う
広告用バナーや動画を確認し、ターゲットに響く内容を確保。
6. カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、プロダクトを使う顧客の満足度向上や課題解決を目的とする領域で、PdMはカスタマーサクセスチームからのフィードバックを製品改善に活用します。たとえば、カスタマーサクセスチームから「使いづらい」という声が多い機能について報告を受けた場合、PdMはその機能のデザインや操作手順を見直し、改善を検討します。
また、PdMは、顧客維持率を高めるために「定期的に利用したくなる仕組み」を検討し、ユーザーエンゲージメントを高める施策を企画します。たとえば、毎月の利用状況レポートを提供する機能を追加することで、顧客が自分の成果を確認しやすくし、利用頻度を上げることを目指します。
具体的な業務例
- 顧客満足度調査を実施する
NPS(ネットプロモータースコア)やCSAT(顧客満足度)アンケートを配信。- オンボーディングプロセスを最適化する
新規顧客向けにわかりやすいガイドや動画を作成。- サポートデータを分析する
顧客からの問い合わせデータを分析し、製品改善に反映。- 顧客ロイヤルティ向上施策を企画する
長期利用者向け特典やプログラムを設計。- 定期的なフォローアップミーティングを実施する
キーアカウント顧客と定期的に話し、課題や要望を確認。
PdMに求められるスキル
プロダクトの企画から開発、リリース、改善までをリードするPdMには、技術的な知識からマーケティング、ビジネス、リーダーシップまで幅広いスキルが必要です。
そのため、PdMになる人は幅広い業務経験を積んでいることが前提です。エンジニアリングやデザイン/UX領域のバックグラウンドを持ち、ビジネススキルもある人が社内で抜擢されるケースが多いのではないでしょうか。技術に関する知識があるビジネス・マーケティング領域の出身者がなるケースもあるようです。このように高い専門性と幅広い経験が求められることから、PdMは一般的に高給で処遇されており、キャリアアップを目指す優秀な人材が競って挑戦するポジションとなっています。
専門的なバックグラウンドに加えて、ビジネススキル、ユーザーリサーチスキル、リーダーシップスキルなどを身につけることで、PdMとしてより満足な働きができるでしょう。
- ビジネススキル
プロダクトの成長戦略を長期的視点で立案し、競争力を高める力が必要です。そのため、市場分析や投資対効果(ROI)の評価を通じて、プロダクトがビジネス目標にどのように貢献するかを具体的に描ける能力が求められます。また、プロダクトの進行管理力、スケジュール管理や優先順位の判断力を持っていることも重要です。 - ユーザーリサーチスキル
ターゲット市場のニーズを深く理解し、それをプロダクトに反映する上で不可欠です。定量的なデータ分析や競合分析だけでなく、ユーザーインタビューを通じた定性的なインサイトを得ることで、競争力のあるプロダクトを設計できます。 - リーダーシップスキル
多職種のチームをリードする役割のため、リーダーシップやコミュニケーション能力は必須です。異なる専門性を持つチーム間の調整やモチベーション管理のため、プロダクトのビジョンを明確に示しチーム全体を同じ方向に導く力、迅速かつ適切な意思決定力が成功に大きく影響します。
PdMとPM・PMMとの違い
PdM(プロダクトマネージャー)は、PM(プロジェクトマネージャー)やPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)と混同されやすい役職です。特にこれら3つの職種はプロダクトやプロジェクトに深く関わり、それぞれ重要な役割を果たすため、名称だけでは違いが分かりにくいことがあります。そこでこの章では、PdMとPM、PMM、それぞれの役割や特徴を解説していきます。
PM(プロジェクトマネージャー)とPdMの違い
プロジェクトマネージャー(PM)は、プロダクト開発のためのプロジェクトの計画・進行管理を行い、スケジュール、リソース、コストを最適化します。要件に基づいて具体的なタスクを分解し、進捗を管理。チーム間の調整やリスク対応を行い、納期内に高品質な成果物を完成させることに注力します。PMは「どのように作るか」に焦点を当て、プロダクト開発の実行部分をリードします。
一方、プロダクトマネージャー(PdM)は、プロダクトの価値と方向性を定義して、長期的な成功を目指します。ユーザーのニーズや市場動向を分析し、プロダクトのビジョンやロードマップを策定し、優先順位を定めて必要な機能や改善を開発チームに伝えます。また、リリース後もデータやフィードバックをもとに改善を続け、プロダクトの成長を推進します。PdMは「何を作るべきか」「なぜ作るのか」を中心に戦略的な意思決定を行います。
PdMがPMの業務も担当するケースが多いですが、両者が配置されるプロダクト開発の場合、PdMが方向性を決め(例:注文時にカスタマイズできる機能が必要)、PMは進行計画を立てて(例:カスタマイズ機能を2週間で実装するにはどうするか)、タスクをエンジニアやデザイナーに割り振る形で分業することがあります。
「プロダクトマネージャー(Product Manager)」も「プロジェクトマネージャー(Project Manager)」も「PM」と表記されることがありますが、混同を避けるため、最近はプロダクトマネージャーを「PdM」と表記する企業が増えてきています。
PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)とPdMの違い
PdMはプロダクトの企画、開発、改善に加え、市場調査やマーケティング戦略、顧客対応まで幅広い業務を担当しますが、これらすべてを1人でカバーするのは非効率です。
特に、ターゲット層の細分化や競合分析、プロモーション戦略などのマーケティング領域が複雑化し、専門的な対応が必要になったことで生まれたのがプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)です。
PdMとPMMの業務内容。PMMは、PdMの業務領域のうち、ユーザーに直接関わる「セールス」「マーケティング」「カスタマーサクセス」の部分を主に担う役割です。
PMMの主な仕事は、プロダクトのマーケティング戦略やプロモーション、ブランディング、ユーザーに向けたメッセージの構築です。プロダクトを売り出すためのキャンペーンを企画し、ユーザーにどのように伝えるか、また、競合との差別化ポイントを明確にし、ターゲット層に訴求する戦略を練ります。
PdMとPMM、2つの役割が配置されたプロジェクトではどのように業務が分かれるか、新しい写真編集アプリを例に考えてみましょう。
- PdM:アプリに搭載するフィルターや編集機能を計画し、どうすればユーザーが簡単に美しい写真を作れるかを考えます。また、ユーザーからのフィードバックを受けて、必要な機能の追加や改善を行います。
- PMM:アプリの魅力を伝える広告や紹介ページを作り、ターゲット層に「どのように使えるか」「他のアプリと何が違うか」を効果的に伝えるマーケティングキャンペーンを計画します。さらに、ローンチ時にどの媒体でプロモーションを行うかや、最適なメッセージを検討します。
つまり、PdMとPMM、2つの役割が配置されたプロジェクトでは 、PdMはプロダクト自体の計画、設計、機能改善など「プロダクトを作ること」にフォーカスし、PMMは「プロダクトをどう伝え、売るか」にフォーカスします。PMとPMMは密に連携し、優れたプロダクトを作り、効果的にユーザーに届けるために協力して働きます。
PMMの設置は、製品の市場適応性を高め、ユーザーエンゲージメントを促進する上で重要ですが、部門間の役割の曖昧化や意思決定プロセスの複雑化といったデメリットもあります。また、コスト面での負担なども考慮し、これらのメリットとデメリットを天秤にかけた上で導入を検討するといいでしょう。
なおアイスリーデザインでは、「プロダクトの追加開発が勘に頼って進められている」「開発方針と市場向けメッセージが一致していない」など、自社のプロダクトに当てはまる項目がいくつあるかによってPMMの導入が適切か確認できるリストを公開していますので、PMMの導入を悩んでいる方はぜひご利用ください。
まとめ
PdMは、単なるプロジェクト管理者ではなく、プロダクトの戦略から開発、マーケティングまで幅広く関わるポジションであり、組織におけるその存在意義はますます高まっています。
アイスリーデザインでは、プロダクトマネジメント業務を効率化し、事業成長を加速させたい企業様に向けて最適なサポートをご提供しています。デジタルプロダクトの立ち上げからグロースフェーズまで、幅広い課題に対応いたします。
プロダクトマネジメントに課題感をお持ちの場合や、具体的なご相談をご希望の際は、お気軽にお問い合わせください。