in-Pocket編集部が新サービス開発に取り組む様々な企業にお邪魔し、プロダクト誕生の裏側と成功のヒントに迫るこの企画。
オウンドメディア新参者のin-Pocketが今回訪れたのは、コンテンツマーケティングの雄・株式会社イノーバ。「イノーバ」は、フランス語で「イノベーション(革新)」の意味。そして、その革新の対象を「マーケティング」に定める同社。代表である宗像さんに、イノーバ誕生までの波乱万丈エピソードから未来のマーケティングビジョンまで、グイグイ掘り下げて伺いました。
株式会社イノーバ
代表取締役社長
宗像 淳さん
目次
マーケティング事業のルーツは実家の酒屋業?
事業方針を決定づけた、起業家との出会い
——今日は宜しくお願いします。コンテンツマーケティングで多彩な実績をお持ちのイノーバさんですが、御社が誕生するまでにどんな経緯があったんでしょうか?
マーケティングの考え方は、「売れそうな商品を仕入れて売る」という商売そのものだと思っています。そういう意味では、幼い頃から少なからずマーケティングには馴染みがありました。実は私の実家は福島で小さな酒屋を営んでいて、よく家業を手伝ったりしていたんです。
事業開始のターニングポイントになったのは、東日本大震災の時でした。
「これから世の中がどうなるか分からない。だからこそ今勝負すべきだ」と一念発起して、当時在籍していた会社を辞めました。
起業する以前は、富士通でマーケティング企画部に在籍していたことも。サーバーの営業をしていたこともあってその頃からクラウドの大きな可能性も感じていましたね。
とはいえ事業をスタートさせるにあたって、いきなりWebマーケティングで勝負しようと思ったわけじゃありません。
まず最初に立ち上げたのは、海外のワイナリーを色々回り質の良いワインを集める輸入販売事業でした。ところが最終的に在庫問題へ行き着き、やむなく撤退。次に海外ベンチャーが考案したスポーツやライブイベントをネット配信するシステムの国内販売事業を始めるも、マーケティングにお金をかける文化がない日本のスポーツ界では馴染まず、これもまったく売れませんでした。
——そんな紆余曲折があった中、どうして「マーケティング」をメインの事業に?
一番の原点にあったのは、起業家であるジェフ・チャー氏との出会いでした。
彼に、あたためていた事業プランを見せると、「人の真似みたいなことをやるんじゃない」と怒られました。そしてこう教えてくれたんです。「起業は一本道じゃない。マップを描くだけでなく、そこに情熱があるかどうかが大事なんだ」と。
ハッとしましたね。今までは、MBA的な発想で、立派な事業計画を立てていたのだけれども、ジェフの言う「情熱」が大きく欠けていた、と。
実は、自分でも忘れていたんですが、MBAを受験する時に書いたエッセイで、「5年以内に中小企業のためのマーケティング会社を作る」と書いてあったんです。「あの時決意したんだから、これしかない!やっぱり自分が勝負するならマーケティングなんだ!」と腹を決めました。
——素敵な恩師との出会いがあったんですね。そうやって立ち上げられたイノーバ、手ごたえはどうでしたか?
私は開発者じゃありません。コストもそんなにかけられません。そこで、まずは「メディア」を先に作ろうと思いました。
マーケティングを中心に、ひたすらコンテンツ記事を書く毎日。そんな時、たまたま最初に声をかけてもらったのが、リスティングやSEOに行き詰まりを感じられていたYahoo!の担当者さんでした。
この時担当させて頂いたお仕事が、本格的なイノーバをスタートさせることになったきっかけになりましたね。それと同時に、『”お客様の事業規模の大小に関係なく声をかけてもらえる”のが、コンテンツマーケティングのメリットなんだ』と、強く実感出来た貴重な機会でもありました。
マーケティングの常識を覆す。
目指すは、「ファーストコール&オンリーワン」企業
——イノーバの事業を進めていくうえで、大切にされていること。教えてください。
「マーケティング」という言葉自体、結構曖昧です。何を指しているのか分かりにくい。
本来、マーケティングは、商品企画から宣伝・広告までを包括的に指す言葉です。
これまでの時代は、ビジネスにおいて“ものづくり”が大切にされ、良い製品を作ることだけに注力されてきました。でも経済が成熟しきった今、「どうやって商品やサービスを届けたら良いのか分からない」といった戸惑いを隠せない人たちに沢山出会ってきました。
そんな人たちが専門的な勉強をすることなく、すぐに結果を残せ、しかもひとつのツールで完結できるサービスを提供出来ないか?それも、自社で見込み客を作って商談まで成立させられるような画期的なサービスを。
「イノーバ」という社名には、そんな今までのマーケティングの常識を変えるほどのイノベーションを起こしたい、という想いが込められています。
経営コンサルティングであるタナベ経営さんは、『ファーストコールカンパニー』という言葉を標榜していますが、まさにその通りだと思います。何か始めたいと思った時に、一番最初に頭に浮かぶ企業であり続けることが大切であると思っています。そのようにして業界における自社の存在感を高めていきたいですね。
——そうやって会社のあり方を定義付けられてきたんですね。今や「コンテンツマーケティングといえば」すぐに御社が頭に思い浮かびます。そもそもなぜ今、このマーケティングに注目が集まっているんでしょうか?
ひと昔前まではマス広告が圧倒的に強かったのにも関わらず、今ではすっかりWebにシフトしています。例えばネットユーザーのつぶやきから話題になり、テレビで紹介されることも珍しくないですよね。
少し前の企業はその流れに追いつくために、Facebookなどを続々と活用し始めました。でも商品情報をただ垂れ流すだけでは、結局誰も見てくれず、多くの企業が戸惑うことになりました。
一方時を同じくして、不況を背景に沢山の出版社が倒産。ライターが企業のWebマーケティングメディア担当になる傾向が増えました。その頃から、企業側がコンテンツという存在を重要視するようになってきたと思います。そしていざコンテンツを作り始めてみると、「コンテンツは常に出し続けることが重要」ということも分かり、ニーズがますます膨らんできた。これがコンテンツマーケティング浸透までの流れだと思います。
『ad:tech tokyo 2014』にてメディア各社の取材を受ける宗像社長
ストーリー性溢れるコンテンツ制作にアド連携
総合的施策でメディア価値の最大化を
——質的需要と量的需要の重なりが、昨今のコンテンツマーケティング市場を急拡大させたんですね。とはいえ、すぐに利益が見えないこのマーケティングに二の足を踏む企業も多いと思います。中長期戦が想定される中、どう進めていけば良いんでしょう?
コンテンツマーケティングでは、潜在顧客の獲得を目的にするケースが多々あります。リスティング広告などに比べると、どうしても1クッション、2クッション多くなってしまうことは確かです。
そこで大切なことはまず、『そもそもの目標をはっきりさせる』こと。
将来的な事業規模拡大なのか?達成すべき予算なのか?などによって、途中で計測するKPIが決まってきます。SEOが目的なのか?ブランドイメージのアップリフトが目的なのか?これらによっても、使う予算が変わってくるはずです。
中小規模の企業だと、オウンドメディア単体でいきなり多くの人に読んでもらうことは正直難しいでしょう。
だからこそセミナー告知などの定型記事ではなく、自社独自のストーリーをからめ魅力的な記事に仕上げることが大切です。
これは社員に向けたインナーブランディングにも繋がります。これにプラスして、SEOやネイティブアドなどと組み合わせた施策も欠かせませんね。SEOでは競合他社との優位性を見定めて、隙間を見つけた検索ワード対策が必要ですし、オウンドメディアへの誘導として即効性のあるネイティブアドを選ぶ際には、もっとも適切なメディアを深く研究する必要も出てきます。
とりあえずコンテンツを大量に作る!というよりは、総合的な施策を考えることが大切になってくると思います。
グローバルに戦い続ける企業のために。
イノーバが見据える、この先の未来とは
——イノーバ誕生の秘話から具体的な施策アドバイスまでありがとうございました。最後に、宗像さんが考える「コンテンツマーケティングの未来」、教えてください!
国内の少子高齢化が加速する今、各企業は本格的に海外展開への傾向を強めています。一方で、「海外拠点を増やすことは出来るが、海外での売り方が分からない」という企業が増えているのも事実です。
そこを私たちがサポートできると思っています。その準備として、今後はさらに外国人社員の登用や海外展開している企業の現地法人の案件を積極的に獲得していくつもりです。そのために多言語での制作体制拡充にも力を入れています。
コンテンツマーケティングだけに視点を絞って言えば、今後はその「広め方」がますます大切になってくると思います。
コンテンツだけでなく、ターゲティングが可能な広告やSNSの領域を含めた「一体運用」がポイント。長く多くの人に読み続けてもらうためには、コンテンツを探しやすくすることも欠かせませんから。また、PVを上げると同時に、商談につながらないケースなども積極的にサポートする必要があると考えています。資料のダウンロード率から商談成立まで、一連の流れを「ストーリー」として提案していける。そんな企業を目指していきたいですね。
株式会社イノーバ
http://innova-jp.com/
代表を務めるのは、自社製品・サービスのファン形成の手法としていま注目を集めている「コンテンツマーケティング」の先駆者、そして数多くの著書・講演実績を持つ宗像 淳さん。国内外1000名以上のライターネットワークでSEOやソーシャルメディアに効果を発揮する高品質のコンテンツ制作サービスを提供する。一方で、中堅・中小企業を対象に、コンテンツマーケティング支援に特化したマーケティングオートメーションソフトウェア「Cloud CMO」も提供。2015年12月には、個人事業主・小規模企業のコンテンツマーケティング支援に特化したソフトウェア「Cloud CMO Lite」をローンチ。これからのWebマーケティング業界の要を担う企業の1社として今後も目が離せない。