AWS Lambdaとは?初心者向けにFaaSの仕組み・メリットデメリット・料金を解説

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「上司から『AWS Lambdaで処理を作って』と言われたけど、そもそもLambdaって何?」 
「AWSの勉強を始めたばかりで、Lambdaがどんなサービスなのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか。 

AWS Lambdaは2014年11月にAmazon Web Services(AWS)からローンチされた、サーバーレス実行環境のひとつ。AWSにはEC2(仮想サーバー)やECS(コンテナサービス)などのコンピューティングサービスがありますが、Lambdaはそれらと異なり、特定の「関数」だけを必要なときに実行できるのが大きな特徴です。

2020年のデータによると、AWSを利用する顧客の約半数がLambdaを採用しており、 2022年12月時点では、毎月100万人以上の顧客がLambdaを使用。サーバーレスな開発を行ううえで、無視できないサービスとなっています。

とはいえ、「具体的にどんな仕組みなのか」「他のAWSサービスとどう違うのか」が分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、AWS Lambdaの基本概念や、IaaS・CaaSとの違い、他のサービスとの比較、料金体系、実際の活用事例までを詳しく解説します。「AWS Lambdaって結局どういうものなの?」を理解すれば、プロジェクトや業務にLambdaを取り入れるヒントが見つかるかもしれません。

目次

AWS Lambdaとは?

[AWS公式によるLambdaの解説動画]

AWS Lambdaは、サーバーを自分で用意・管理する必要がないサーバーレスアーキテクチャの一種である、FaaS(Function as a Service)を提供するサービスです。FaaSとは、開発者がプログラム(関数)だけを用意すれば、必要なときに自動でサーバーを準備し実行してくれる仕組みです。

従来、開発者がウェブサービスやアプリを動かす際には、

  1. サーバーというコンピュータを用意する
  2. そのサーバーのOSやソフトウェアを設定する
  3. サーバーの性能管理や安全対策を常に行う
  4. トラブル時の対応や定期的なメンテナンスをする

という専門知識も時間も必要な大変な作業をする必要がありました。

AWS Lambdaでは、AWS側がサーバーの準備から実行までを自動的に行ってくれるので、このような開発者の負担を軽減できます。

プログラムが自動的に実行されるのは、あらかじめ指定しておいた特定のイベントが発生したときです。たとえば、ウェブサイトからリクエストが送信されたときや、クラウドストレージにファイルが保存されたときなど、「何かが起きた」というタイミングで動作する仕組みになっています。このように特定のイベントをきっかけに処理を行うFaaSの特徴を「イベント駆動型実行モデル」と呼びます。

▼ イベント駆動の例

  • 写真がアップロードされたら自動で画像サイズを変更
  • 注文が入ったらすぐに在庫管理システムを更新
  • センサーからデータが送信されたら分析処理を実行
  • 予約フォームが送信されたら確認メールを自動送信
  • SNS投稿に特定のハッシュタグがついたら集計
  • ログファイルに異常値が記録されたらアラート発信

なお、プログラムが実行された後には不要なリソース(コンピューターのメモリや処理能力)が自動的に解放されるため、無駄なコストが発生しません。使った分だけ課金されるため、コスト効率が高く、アクセスが増えたときには自動で処理能力が拡張されるため、大量のリクエストにも柔軟に対応できます。

IaaS・CaaSとの違い

FaaS(Function as a Service)とよく比較されるのが、IaaS(Infrastructure as a Service)、CaaS(Container as a Service) というふたつの提供モデルです。

IaaSとの違い

IaaSは、クラウド上で「自分のサーバー」を借りるイメージです。たとえば、パソコンを買うときに、CPUやメモリを選んで自分好みに設定するように、IaaSではサーバーのスペックやOSを自分で決め、必要なソフトを入れて管理します。

一方、FaaSは、プログラムの実行だけに特化したサービスです。サーバーの設定は一切不要で、必要な処理を「関数」としてクラウドに預けると、自動で動かしてくれます。そのため、開発者はインフラ管理をせず、プログラム開発だけに集中できます。

IaaSは自由度が高いが管理が必要、FaaSは手軽だが動かせるものに制限があるのが大きな違いです。

CaaSとの違い

CaaSは、「コンテナ」という箱の中にアプリをまとめて動かす仕組みです。FaaSより自由度が高く、自分の好きなプログラムやツールを含めることができます。アプリを安定して動かし続けたい場合に向いています。

FaaSは、プログラムの「特定のプログラム(関数)」だけをクラウドに預けて動かす仕組みです。サーバーの管理は不要で、プログラムが呼び出されたときだけ実行され、終わると自動で消えます。小さな処理を素早く実行したいときに便利です。

CaaSは自由度が高く柔軟な運用ができ、FaaSはシンプルで手軽な点が大きな違いです。

AWS Lambdaの特徴

FaaSのサービスはほかにもいくつかあり、次の章で詳しく説明しますが、それらと比較した際のLambdaの最大の強みは、AWSエコシステム全体とシームレスに統合できる点です。

また、ほかのサービスがクラウド内の特定の範囲に閉じた連携にとどまる中、AWS Lambdaは、AWS内の幅広いサービスに加え、サードパーティーのAPIやオンプレミス環境との安全な接続を可能にしています

さらに、1ミリ秒単位の従量課金制を採用しているため無駄なコストを抑えられたり、AWSのセキュリティ機能(IAM、VPC、KMSなど)を活用できたり、ほかのサービスよりも運用負担が少なく自動スケーリング機能を利用できたりする点も大きな魅力です。

そのため、特に、複雑なAWSエコシステムを活用するプロジェクトや、ハイブリッドクラウド環境でのシステム運用を目指す企業にとっては、最適な選択肢と言えるでしょう。

以下で、AWS Lambdaの各特徴について詳しく説明していきます。

1. AWSエコシステムとの強力な連携

AWS Lambdaは、S3、DynamoDB、API Gateway、Step Functions、EventBridgeなど、AWSの主要なサービスすべてと直接連携できる点が大きな強みです。ほかのサービス(例: Google Cloud Functions、Azure Functions)もイベント駆動型ではありますが、LambdaほどAWS全体に深く組み込まれているものはありません。これにより、複雑なワークフローの実現や、マイクロサービスアーキテクチャの構築が容易です。また、サードパーティーAPIやオンプレミス環境とも安全に接続できるため、複雑なハイブリッドクラウド環境でも活用しやすい柔軟性を持っています。

2. 高度なセキュリティとコンプライアンス対応

Lambdaは、AWS Identity and Access Management (IAM)、仮想プライベートクラウド (VPC)、AWS Key Management Service (KMS) など、AWS独自のセキュリティ機能を活用できます。他のサーバーレスサービスでも基本的なセキュリティ機能は提供されていますが、Lambdaは特に企業の厳格なセキュリティポリシーやコンプライアンス要件に対応しやすいという特徴があります。たとえば、金融機関や医療機関など、高いセキュリティ基準を求められる業界でも安心して利用可能です。

3. 1ミリ秒単位の従量課金制

Lambdaは、1ミリ秒単位での従量課金により、使った分だけ支払うモデルを提供しています。これは、短時間のバッチ処理や自動化タスクでも無駄なコストを抑えることを可能にします。また、AWSのセキュリティ機能(IAM、VPC、KMSなど)を活用することで、企業のセキュリティ要件やコンプライアンス基準を満たすことも容易です。他のサービスでも従量課金はありますが、ここまで細かな単位でコストを最適化できる点は、Lambdaの大きな特徴です。

4. 自動スケーリング機能

Lambdaは、実行リクエスト数に応じて自動的にスケーリング する機能を備えています。これにより、突然のアクセス増加にも対応可能で、サービスの安定性を維持できます。特に、手動でスケーリング設定が必要なサービスに比べて、運用負担を大幅に軽減できます。

5. 幅広いプログラミング言語サポート

AWS Lambdaは、Python、Node.js、Java、Go、.NET、Ruby など、さまざまなプログラミング言語をサポートしています。このため、既存の開発リソースや知識をそのまま活用でき、開発チームの学習コストを削減できます。

ほかFaaSサービスとの比較

FaaSには、「AWS Lambda」のほかに、「Google Cloud Functions」「Azure Functions」「Cloudflare Workers」「IBM Cloud Functions」「OpenFaaS」があります。

各サービスはそれぞれのクラウドエコシステム(AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなど)や特定のユースケース(AI/ML、Webパフォーマンス、マイクロサービスなど)において独自の強みを持っているため、ニーズに合わせて選択するといいでしょう。

Google製ツールを活用する企業に最適な「Google Cloud Functions」

Googleが提供するサーバーレスコンピューティングサービスで、特にデータ分析や機械学習(AI)分野で強みを発揮します。BigQueryやFirestore、Pub/Subなど、Google Cloud Platformのサービスと高い親和性があり、Googleのエコシステムを活用したい企業にとって理想的な選択肢です。

Microsoft製品や複雑な業務シナリオに対応する「Azure Functions」

Microsoft Azure上で動作するサーバーレスサービスで、Office 365やDynamics 365といったMicrosoft製品や、Azureサービス(Cosmos DB、Blob Storageなど)とのスムーズな統合が可能です。特に、「Durable Functions」を使えば、ステートフルなワークフローも実現でき、企業の高度な業務プロセスの自動化に貢献します。

超低レイテンシーを求めるWebプロジェクトに向く「Cloudflare Workers」

Cloudflare Workersは、Cloudflareのエッジコンピューティングプラットフォームで、JavaScriptコードを世界中のエッジ(CDN)で実行できます。超低レイテンシー(システムが入力を受け取ってから実際に応答が返されるまでの遅れ時間)を実現するため、Webサイトのパフォーマンスを最大化したい、リアルタイムなAPIレスポンスを求めるプロジェクトに最適です。

AI/ML活用や高度な分析ニーズに応える「IBM Cloud Functions」

Apache OpenWhiskをベースにしたサーバーレスサービスで、特にIBM Watsonとの連携を活かしてAI/ML(機械学習)分野での利用に強みがあります。マルチクラウドやオンプレミス環境でも利用可能で、AIを活用した高度なデータ分析やビジネスプロセスの自動化を目指す企業におすすめです。

自社環境をカスタマイズしたい上級者向けの「OpenFaaS」

OpenFaaSは、オープンソースのサーバーレスフレームワークで、KubernetesやDocker上で実行可能です。完全なサーバーレスサービスではなく、自社環境にサーバーレス機能を導入するためのツールキットとして機能します。ベンダーロックインを避けたい企業にとって魅力的ですが、インフラ管理の負担が高いため、柔軟にシステムを構築・運用したい上級エンジニアに適しています。

AWS Lambdaのメリット

AWS Lambdaの特徴を活かすことで、企業や開発者は多くのメリットを享受できます。Lambdaの強力な機能は、具体的なビジネス課題の解決や、開発プロジェクトの効率化に直結します。ここでは、Lambdaの特徴によって得られる具体的なメリットを紹介します。

1. AWSサービスと簡単に連携でき、開発を効率化&コスト最適化

AWSエコシステムとのシームレスな統合により、S3やDynamoDB、API Gatewayなどのサービスと簡単に連携できるため、システムの設定や実装にかかる時間を大幅に短縮できます。これにより、プロジェクトのリードタイムを短縮し、迅速な市場投入(Time to Market) を実現します。また、1ミリ秒単位の従量課金制により、実行時間に応じたコスト管理が可能なため、無駄なサーバー維持費を削減し、特にバッチ処理や自動化タスクでのコスト効率が向上します。

2. アクセス増加に強く、システムを柔軟に拡張できる

Lambdaは、AWS内外のサービスやオンプレミス環境とも安全に接続できるため、複雑なハイブリッドクラウド環境でも柔軟に対応可能です。この柔軟性は、システムの規模拡大や機能追加時にも、既存インフラを最大限活用しつつ新機能を統合することが可能で、ビジネスの成長に合わせた拡張性を提供します。また、自動スケーリング機能により、アクセス急増時でも手動設定なしで自動的にリソースを拡張し、サービスの安定稼働をサポートします。

3. AWSの高度なセキュリティ機能で安全性を確保

AWS Lambdaは、IAM(Identity and Access Management)、VPC(Virtual Private Cloud)、KMS(Key Management Service)などのAWS独自の高度なセキュリティ機能をフル活用できます。これにより、社内システムや顧客データを保護し、情報漏えいや不正アクセスのリスクを軽減 できます。また、特に金融、医療、公共機関など、厳格なコンプライアンス基準を求められる業界においても、Lambdaならセキュリティ要件を満たしやすいのが大きなメリットです。

4. サーバー管理が不要で、運用の手間が減る

インフラ管理やサーバーメンテナンスが不要なため、運用担当者の負担を大幅に軽減できます。通常、サーバーの設定やメンテナンス、スケーリング調整は手間がかかりますが、Lambdaなら開発者はコード実装に専念でき、インフラ管理はすべてAWSに任せられます。これにより、運用コストの削減だけでなく、運用ミスによるシステムダウンのリスクも低減します。

AWS Lambdaのデメリット

AWS Lambdaには多くのメリットがありますが、利用するにあたってのデメリットや注意すべきポイントも存在します。特に、利用シナリオによっては制約や運用上の課題が生じる場合があります。ここでは、AWS Lambdaを導入する際に考慮すべきデメリットを紹介します。

1. 15分以上の長時間処理ができない

AWS Lambdaは、処理時間が1回の実行につき最大15分という制限があります。そのため、長時間かかるデータ分析や大きなファイルの処理には向いていません。特に研究者やデータ分析をする人にとっては不便です。対策としては、処理を小さな単位に分けて複数のLambda関数で並行処理する方法や、時間制限のない別のAWSサービス(EC2やFargateなど)を使う方法があります。用途に応じて適切なサービスを選ぶことで、この制限の影響を最小限にできます。

2. 大量アクセス時に呼び出し制限(スロットリング)が発生する

AWS Lambdaは同時に実行できる処理数に最大1,000の上限があり、これを超えると「スロットリング(呼び出し制限)」が発生して、一部の処理が失敗する可能性があります。通常のWebサイトではスロットリングが発生することは稀ですが、短時間に大量のリクエストが集中するような場合には、システムの遅延やエラーが発生しやすくなるので注意が必要です。対策としては、エラー時に再試行(リトライ)する仕組みを入れることや、必要に応じてAWSに制限緩和を申請することが有効です。

2. データを保持できないため、状態管理が必要なアプリに不向き

AWS Lambdaはステートレス(実行ごとにデータを保持しない)なため、一度処理が終わると情報が消えてしまいます。たとえば、ゲームの進捗やショッピングカートの中身を記憶するようなアプリでは、そのままだと不便です。対策としては、データを外部ストレージ(DynamoDBやS3など)に保存することで、Lambdaの外でも情報を管理できるようにする方法があります。適切な仕組みを組み合わせれば、状態管理が必要なサービスも問題なく作れます。

3. VPC(社内ネットワーク)との接続設定が複雑

AWS LambdaをVPC内のリソース(社内ネットワークやデータベース)に接続する場合、ネットワーク設定が複雑になることがあります。そのため社内システムをクラウドと連携させたい企業のIT担当者にとっては、設定の手間が増え、接続エラーや遅延のリスクがあるため注意が必要です。対策としては、AWSの公式ガイドを参考にしながら適切なネットワーク設定を行うことや、AWS Systems Managerなどを活用してより簡単に接続する方法を検討することが挙げられます。

4. しばらく使わないと起動が遅くなる(Cold Start問題)

AWS Lambdaは、しばらく使われていないと最初の実行が遅くなる「Cold Start(コールドスタート)」という問題があります。特にリアルタイム性が重要なアプリ(チャット、ゲーム、決済システムなど)を作る人にとっては、遅延がユーザー体験を悪化させるため、大きな課題になります。対策としては、「プロビジョンド・コンカレンシー(Provisioned Concurrency)」を設定してLambdaを事前に準備する方法や、定期的にリクエストを送ってLambdaを温めておく方法があります。

5. 使えるプログラミング言語やライブラリに制限がある

AWS Lambdaは決められた環境(ランタイム)で動くため、使えるプログラミング言語やライブラリに制約があります。そのため、最新の言語機能を使いたい開発者や、特殊なソフトウェアを動かしたい人にとっては不便になることがあります。対策としては、Lambdaの「カスタムランタイム」や「コンテナイメージ」を利用すると、独自の環境を構築できます。ただし、設定が複雑になるため、シンプルな処理ならLambda標準のランタイムを使うのが無難です。

6. エラー発生時の原因特定が難しい

AWS Lambdaは内部の処理が見えにくく、多くの関数が連携するため、エラーの原因を特定しにくいという問題があります。特にシステムの安定運用を担うエンジニアにとっては、トラブル対応が難しくなることがあります。対策としては、「Amazon CloudWatch」でログを記録し、エラーの発生状況を確認する方法があります。また、「AWS X-Ray」を活用すると、関数の実行経路を可視化でき、どこで問題が発生したかを素早く特定できます。

AWS Lambdaの料金体系とコスト最適化のポイント

AWS Lambdaは、サーバーレスコンピューティングを提供する強力なツールですが、料金体系が独自であるため、導入前にコスト構造を理解しておくことが重要です。本記事では、Lambdaの料金計算方法や無料枠の活用方法、パフォーマンスとコストのバランスを取るための最適化ポイントについて詳しく解説します。

参考:AWS Lambdaの料金ページ
https://aws.amazon.com/jp/lambda/pricing

AWS Lambdaの料金体系

AWS Lambdaの料金は、主に「リクエスト数」と「実行時間」に基づいて計算されます。

  • リクエスト数の料金

Lambda関数が呼び出されるたびに、1リクエストとしてカウントされます。料金は100万リクエストごとに0.20 USD です。また、API Gateway経由で呼び出される場合、API Gateway側でも追加料金が発生する点に注意が必要です。

  • 実行時間の料金

実行時間は、関数の開始から終了までの時間(ミリ秒単位)で計測され、メモリ割り当て量(128MB〜10GB)に応じて計算されます。たとえば、1GBのメモリを割り当てた関数が1秒間実行されると、1GB秒 としてカウントされます。料金は、1GB秒あたり0.00001667 USD となります。

  • 実行時間の計算例

例えば、256MBのメモリを割り当てたLambda関数が毎月200万回、1秒間実行された場合の料金は次の通りです。

メモリ消費量: 256MB = 0.25GB
実行時間: 1秒 × 200万回 = 200万秒 = 555.6時間
料金計算: 0.25GB × 200万秒 × 0.00001667 USD = 約8.34 USD

無料枠を活用してコストを抑える方法

AWS Lambdaには、初期段階で非常に有用な無料枠が用意されています。

  • リクエスト数の無料枠

毎月100万リクエストまでは無料です。この枠をうまく活用すれば、小規模なアプリケーションやPoC(Proof of Concept)段階のプロジェクトでは、ほぼ無料でLambdaを利用することも可能です。

  • 実行時間の無料枠

実行時間についても、40万GB秒までが無料となっています。例えば、256MBのメモリを使用する場合、約160万秒(約444時間)まで実行可能です。

  • 無料枠を最大限に活用するポイント

使わないリージョン(地域)のLambda関数を削除する。
実行時間の短縮とメモリ割り当ての最適化を行う。
開発・検証環境では無料枠内で収まるように負荷テストを調整する。

コスト削減のヒント

  • メモリ設定の最適化

AWS Lambdaの料金はメモリ設定に比例して増加します。メモリを増やすと実行速度が上がる場合もありますが、実行時間 × メモリ消費量 でコストが計算されるため、メモリ量を適切に設定することが重要です。実際に、256MBから512MBに増やすことで実行時間が半分になる場合、コストは変わらないかむしろ安くなることもあります。最適なメモリ設定を見つけるために、Lambda Power Tuning などのツールを活用するのもおすすめです。

  • デプロイパッケージサイズの削減

Lambda関数の実行環境にデプロイされるパッケージサイズが大きいと、実行時の初期化に時間がかかり、結果的にコスト増加につながります。そのため、下記を心掛けることで実行時間の短縮とコスト削減が期待できます。

  • 外部ライブラリは必要最低限にする。
  • デプロイ時には圧縮ツール(Webpack、Serverless Frameworkなど)を使用する。
  • 依存パッケージを軽量化する
  • プロビジョンドコンカレンシーによるパフォーマンス管理:

AWS Lambdaのコストを最適化するためには、プロビジョンドコンカレンシーの設定に注意する必要があります。プロビジョンドコンカレンシーとは、AWS Lambdaのパフォーマンス管理に役立つ機能です。通常、Lambda関数はリクエストが来たときに初めて実行されますが、その際に「Cold Start」と呼ばれる初期起動時間が発生することがあります。プロビジョンドコンカレンシーを設定すれば、あらかじめ一定数のLambdaインスタンスを起動状態に保つことで、Cold Startを回避し、即座に関数を実行することが可能です。

ただし、プロビジョンドコンカレンシーは実行していない待機時間にも料金が発生します。たとえば、1つの関数に10のプロビジョンドコンカレンシーを設定すると、すべてのインスタンスに対して待機時間分の料金がかかります。そのため、利用が少ない時間帯には設定数を減らすなど、EventBridgeやScheduled Lambdaのスケジューリング機能を活用して、パフォーマンスとコストのバランスを取ることが重要です。

AWS Lambdaを活用した事例

Netflix:メタデータ処理の自動化とスケーラブルな配信を実現

Netflixは、世界中のユーザーに安定した動画配信を提供するため、コンテンツのメタデータ処理を自動化しました。新しい動画が追加されるたびにLambdaが動き、メタデータを生成・更新し、パーソナライズされたレコメンド機能を強化しています。また、動画ファイルのアップロードやユーザーのリクエストに応じて処理を自動実行することで、迅速かつ効率的な運用が可能になりました。さらに、必要な時だけ処理を実行する仕組みにより、常時サーバーを稼働させるよりもコストを削減。需要に応じてスケールすることで、大量アクセス時でもスムーズなサービス提供を実現しています。

参照URL:How Netflix Uses AWS Lambda to Process the View Requests(https://www.almabetter.com/bytes/articles/how-netflix-uses-aws-lambda-to-process-view-requests

スクウェア・エニックス:ゲーム内の画像処理をAWS Lambdaで高速化しコスト削減

スクウェア・エニックスは、オンラインゲーム『ドラゴンクエストⅩ』内の写真撮影機能において、AWS Lambdaを導入しました。​従来、イベント時などに大量の写真が撮影されると、画像処理に数時間を要することがありました。​AWS Lambdaの導入により、1分間に18,000枚の画像処理を数秒から十数秒で完了できるようになり、処理時間が大幅に短縮されました。​さらに、インフラコストも従来のオンプレミス環境と比較して約20分の1に削減されました。​これにより、ユーザーは迅速に写真を閲覧できるようになりました。

参照URL:AWS 導入事例:株式会社スクウェア・エニックス(https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/square-enix/

AWS Lambdaでインフラ管理を省き、柔軟な開発を加速しよう

Lambdaを使えば、サーバー管理の負担を減らしながら、柔軟でスケーラブルなアプリケーションを構築できる可能性が広がります。もしあなたが「インフラの面倒な設定から解放されたい」「スケーラビリティを自動で確保したい」と考えているなら、Lambdaはまさに救世主になるでしょう。

とはいえ、「実際に試してみないとピンとこない」という方もいるかもしれません。そうした方におすすめなのが、AWSが定期的に開催している無料ハンズオンです。初心者でも実際に手を動かしながらLambdaの基礎を学ぶことができます。

また、AWS Lambdaは無料利用枠(Free Tier)が用意されており、月間100万リクエストと320万秒のコンピューティング時間が無料で実行できます。AWSアカウントがあればすぐに試せるので、まずは簡単なコードを動かしてみるのもおすすめです。

「実際にどう書けばいいの?」という方には、AWS公式のサンプルコード集も充実しています。Python、Node.js、Java、Go言語など、お好みの言語でスタートできますよ。

AWSの世界は奥深いですが、Lambdaは比較的取り組みやすいサービスなので、サーバーレスへの第一歩として最適です。ぜひ取り入れて、必要なタイミングで必要な処理だけを実行する新しい開発スタイルに移行してみてください。

アイスリーデザインでは、AWS Lambdaを活用したモダンアプリケーション開発を支援しています。サーバーレスアーキテクチャの導入やUI/UXデザイン、クラウド最適化についてのご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

また、AWSには「AWS Well-Architected Framework」という設計のベストプラクティスがあり、Lambdaの運用時に役立つ情報も豊富に揃っています。さらに、AWS公式の「Serverless Land」では、Lambdaの活用事例やチュートリアルが多数紹介されているので、実践的な知識を深めるのに最適です。

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