UXデザインから始める新規事業の作り方

2000年当時、私がまだソフトバンクにいた時代には、「ビジネスモデル特許」という言葉が持て囃されていました。当時、やっていた事といえば、いまのようにUXの観点からビジネスを創造するというよりも、あるビジネスモデルを逆さにしたり、裏返したり、斜めにしたりして、市場機会の創出を行っていました。もしくは市場調査や統計情報からビジネス機会を導いていくようなことをしていました。
 
そのアプローチからすると、時代は大きく変わって、いまやITのサービス開発において「UXデザイン」は欠かせないものになってきました。
 
当社は自社のクラウドサービス(GOMOBILE)の提供と受託開発の2つの車輪で事業を展開しています。受託開発では主に、大企業かベンチャー企業の新規のIT事業のサービスとシステム開発を得意分野としています。
 
具体的には、Lineを使ったBotの開発から、Iot関係のサービス開発、C2Cを対象にしたシェアリングのサービスからブロックチェーンまで多種様々な開発プロジェクトを実施してます。
 
UXデザインという言葉は、実際には色々な使われ方をしているので、人によってUXデザインで意図されるものが異なることがよくありますが、当社でいうUXデザインとは、文字通り「顧客体験をデザインする」ことを指しています。
 
 

Google – デザインスプリント

UXデザインとITのサービス開発という意味では、Googleベンチャーズが提唱する「デザインスプリント」はもっとも体系化されている手法の一つではないでしょうか?
 
「デザインスプリント」を簡単に説明すると、Googleの投資部門であるGoogleベンチャーズが投資先のスタートアップに対して、アイデアのプロトタイプ化、ユーザーインタビュー、アイデアの効果・検証を5日間で行うためのフレームワークです。
 
多くのメディアでも説明されていますが、スタートアップが失敗する理由の半分は、そもそもそのサービスを必要とするユーザーが存在しなかったということにあります。その為、時間をかけてサービスを作ってから残念になる前に、アイデア→プロトタイプ→ユーザー検証を短期間で回すことによって、Lean StartUPよりリスクを減らしてサービス開発を行うことが可能になります。
 

出典:StartitUp

 
このフレームワークは、スピードが優先されるこの時代においては極めて理にかなっているのですが、現実的な問題としては5日間も社内のキーマンをMTGに集中させることは難しいという問題点があります(もちろん期間は標準の5日間である必要はないのですが、内容の深さを求めるとそれなりに時間はかかります)。
 
また当然のことながら、デザインスプリントは何らかのアイデアに対し、実施をしていくので、アイデアを創出するところが含まれていません。なので、どのプロジェクトにも適用できる訳というではありません。
 
そこでもっと、簡単にUXデザインから新規事業を創造する方法について考えてみました。
 
 

アイデアの創出

それでは、そもそもビジネス・アイデアの創出はどうするのがいいのでしょうか?当社が社内でも実際に実施している手法は、「世の中の困っていることを書き出す」です。
 
通常、ビジネス・アイデアの創出は、それなりに業界に精通しているか文字通りビジネスセンスが求められますが、それだと単純にビジネス経験が豊富な人材でないとアイデアが創出されません。このアプローチの最大の欠点は何かというと、ビジネス経験が豊富な人材は一方で経験値が多い分、失敗するパターンも多くみてきているため、逆に多くのビジネス機会を見落としてしまいがちです。
 
一方で、世の中の困っていることを書き出す方法は、ビジネス経験の量に関係なく、極端な話でいくと小学生でも、社会人になりたての新卒でも可能です。勿論、そうやって書き出された中から、実際にビジネスアイデアとして選択に値するかは、次のアプローチによって検証することができます。
 
 

Amazon的新規ビジネスアプローチ

Amazonでは、新規ビジネス・新規サービスを提案する際に、社内でそのアイデアのプレスリリース(案)を先に発表させるというアプローチをとっているのはご存知でしょうか?
もちろんプレスリリースですので、その中には、それがどんなサービスで、そのサービスを使う顧客がどんなメリットがあって、それが世の中にどんなインパクトがあるかを纏める必要があります。
 
アイデアは通常、最初はフワッとしていますが、それを文章に落として、そのサービスを使う人がどんなメリットがあって、どういった使い方をするというのが言語化されることによって、より多くの人に共感して使って貰えるかを検証することができます。
 
上でアイデアが創出されたものも、こうやって検証することによって、どのアイデアが新サービスとして魅力的なものかどうかをある程度は検証することが可能です。
 
そして最後は、どのアイデアが一番世の中に対して、もしくはその会社にインパクトを与えられるか、が大事です。内容的には魅力的であったとしても、それを実際にビジネスとして行う場合には、インパクトが小さいと結果としてビジネスとして大きくならずにシュリンクしてしまいかねません。なので、できるだけインパクトがあるものを選ぶことが大事です。
 

 
 

ユーザー調査

上のようなプロセスを経て、ある程度アイデアが言語化できるレベルまでブレークダウンできたら、それをベースにユーザー調査を行うことによって、そのビジネスアイデアをより有意義なものにすることができます。
 
もしくは自分たちが面白いと思っていても、実際にはユーザーからすると何のメリットも見出してもらえないという事態を回避することができます。
 
ユーザー調査は、この段階では多くの人数に実施する必要はありません。むしろ想定されるペルソナーに、親しいユーザーに5名ほども実施するだけでも十分な情報を得ることができます。
 
当社でも、クライアントのビジネスを検証する際にユーザーインサイト調査の提案と実施をしていますが、神は細部に宿るとはよく言ったもので、機能のちょっとした違いにユーザーは不満を持っていたり、それを解消するだけも大きな差別化要因になったりしている場面をよく目にしています。
 
例えば、旅行アプリなどにある予約機能一つにしても、大手のアプリであっても痒い所に手が届いておらず、それに気づいた会社のアプリが急速に勢力を伸ばすといったようなことも見受けられます。
 
ユーザー調査は本当に面白く、想定していたビジネスアイデアに付帯して、新たな周辺のサービスアイデアも出てくることが多々あります。その際に、気をつけなければならないのは、逆にいろんなアイデアが出過ぎてしまい、収集が付かない事態にもなりかねないのでここはバランス感覚が大事になります。
 
内容の幾つかは今すぐにでも始められる内容だと思いますので、是非、試してみてください。
 
 
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Yoichiro Shiba
大手シンクタンクにて金融機関むけのシステムコンサルティング業務に従事後、ソフトバンクにて海外ベンチャーキャピタルとの折衝、投資案件のデューデリを担当。当時ソフトバンクグループ会社内の最年少役員。その後、一部上場企業を対象に投資事業ポートフォリオ再編、バイアウトのアドバイザリー業務を提供、複数のIT企業の役員歴任。ロータリー財団の奨学生としてドイツBielefeld大学にて社会哲学を専攻。
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