先日、株式会社Too主催の「design surf seminar 2017」に参加してきました。
その感想から「タッチポイント」の話、そして「UXデザイン」との関連性についてお話をさせていただこうと思います。
design surf seminarは虎ノ門ヒルズで行われ、満員御礼の素晴らしいイベントでした。
その中でも下記2つのお話を聞かせていただきました。
● 目印と矢印 - ビジュアルデザインのできること -(色部 義昭 / 株式会社日本デザインセンター)
● 公共サインのフォント、世界の潮流とこれからの日本の課題(小林 章 / Monotype)
どちらも著名な方で聞く前は身構えていたのですが、非常にわかりやすい内容と構成でした。以下それぞれの内容です。
■目印と矢印 - ビジュアルデザインのできること -(色部 義昭 / 株式会社日本デザインセンター)
グラフィックデザインについてのお話でした。
まず、グラフィックデザインとは何か、というお話をいただきまして、目線の30センチメートルぐらいで見ることができるデザイン、それがグラフィックデザインだという話をされていました。
その後、「目印」と「矢印」という、人を誘導するデザインについてどのように意識的にデザインし、また実際に形になったのか、視覚的にも非常にわかりやすくプレゼンしていただきました。白鶴のパッケージデザインや山種美術館の矢印のデザインなど、非常に繊細に作られたものから、銀座の住所表示を変えてみるという社会的な情報のデザインにまで及んでいるのは、30センチの世界からのコミュニケーションの広がりを感じることができました。
■公共サインのフォント、世界の潮流とこれからの日本の課題(小林 章 / Monotype)
「フォントの可読性」を中心にお話されていました。例えばHelvetica BoldとFrutiger Boldだとどちらが可読性が高いかどうか、といった話です。小林さんが仰っていたのは、フォント自体の特性や、可読性の高い低いなども考慮するべきということでした。そして、可読性を高くする工夫がされていない公共表示が、日本には非常に多いのではないかという問題提起がなされていました。欧文の読み方のメカニズムに反していくような文字幅や省略が散見され、実際に英語話者が見た時に読みにくいのでは、ということが考えられていないとのこと。フォントひとつとっても、適切な字幅と線の太さなのか、字形の判別がしやすいかなど検証する必要があるということを、DIN 1450を例にお話されていました。このような、受け取る側が情報をどう受け取るのか見直し設計し直すことが大事なのではないか、という点に感銘を受けました。普段目にするものに対し、もう一度疑問を持つことは大事ですよね。
■グラフィックデザインとは?
今回は、グラフィックデザインとは?という根本のお話から始まり、その中でもグラフィックを形作る「サイン」と「タイプ」のお話を両人から伺いました。
その中でも、色部さんが仰っていた話が印象に残っています。世の中には様々なデザインがありますが、扱う面積の広さでいうと、下記の順となる、というご説明をいただきました。非常にわかりやすい。
[Architecture] > [Interior ] > [Product] > [Graphic]
建築の中にはインテリアがあり、インテリアを形作るための工業製品が存在し、工業製品を彩るためにグラフィックが存在します。扱う面積は上の順で小さくなっていきますが、反比例的に人と触れ合う機会は多くなっていきます。
グラフィックデザインが扱う構成要素は多岐に渡りますが、その中でもご両人からお話いただいたことは、「サイン」と「タイポグラフィ」です。
どちらも、見る人に何らかの「情報」を伝えるために重要な要素です。扱う大きさ(面積)はとても小さいですが、これらの要素が人に与える印象は非常に大きいです。
そしてこの小さい構成要素をどういうプロセスや発想をもってデザインしていくのか?
共通する言語は「タッチポイント」でした。
■タッチポイントからウェブやアプリのデザインを考える
ウェブサイトやアプリを先ほどの図の中でどこに位置付けるかと考えると、下記のような感じになりそうな気がしています。
[Architecture] > [Interior ] > [Product] > [Web/App] > [Graphic]
どちらにせよ、[Web/App]が人に触れる機会は非常に多いと言えるでしょう。
タッチポイントを考えることで、使用する色彩やコントラストも変わってきます。
例えば、
・夜使うアプリであれば画面を暗めに設計する
・イベントのWebサイトならワクワクするような色彩を使う
扱う面積は小さいが人の目に触れる機会が一番多く、また、すーっと認識される要素です。だからこそ、目に触れるあらゆる「機会」を想定することが必要です。そして、その機会に対して、「らしさ」と「伝わりやすさ」をどう表現するかがデザイナーの腕の見せどころです。
考え抜いて作られた「サイン」と「フォント」は、それらで構成されたより面積の大きいデザイン成果物よりも強い個性を持って人に認められると色部さんが仰っていました。結果として「サイン」と「フォント」は、キャラクターとなり、人々に愛されていくのです。
普段のプロジェクトだとどうしても考えがおろそかになりがちな部分ではあり、例えばWeb Fontに頼りきりだったり、フリー素材を使ったりして妥協をするだけで終わってはいけないな、と感じました。細かい文字感や行間、色の使い方、細部の矩形へのこだわりを突き詰めることができれば、シンプルなレイアウトでも十分に見応えがあり、かつ「伝わりやすい」デザインを作ることができます。
UXデザインは最近非常に様々な場所で言及される分野ではありますが、こういった「伝わりやすさ」を考えることが何よりも大事なのではないでしょうか。UIの分野と考えられがちではありますが、伝わりやすさは、こういった細部への配慮と地続きに存在しています。どのようなユーザーに使ってもらい、どのような印象を持ってもらい、どう体験を持ち帰ってもらうかを考えた時、自ずとUIデザイン、つまり「サイン」と「フォント」は決まってくるのだと感じます。
最近のUX体験をどうするか、だけを個別に取り出して考えるのではなく、グラフィックデザイン視点へと立ち返り、丁寧にデザインをしていくこと自体が、UX/UIを考えていく時に何よりも重要なのだなと感じました。
Tooさんのdesign surf seminarの来年の開催を心待ちにしています。今回参加でき非常に嬉しく思いました!皆さんも、次回ぜひ一緒に行きましょう。
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