VRの世界も2016年頃からいよいよ普及期かと言われながらも、なかなか一般コンシューマの世界での普及は足踏みしています。ようやく先日facebookに買収された注目ベンチャーOculus社の「OculusGo」という商品が出ました。専用PCやスマホを必要としないスタンドアローンで動かせるヘッドマウントディスプレイ（HMD）が23,800円という手頃な価格帯で発売されたことで、ようやく普通の人が手軽に購入できる環境が整いつつあります。Googleからは「Daydream」という、Androidの高性能機種で簡単にVRが体験できるヘッドセットを発売されました。近日中には、スマホを必要としないデバイスも発売予定と言われています。すでに立ち上がりつつあるVRゲーム市場やアダルト市場などのエンタティメント分野での更なる広がりが、今年度こそあるのではという期待が盛り上がりつつあるのです。
そのような中、VRでのショッピングへの挑戦も始まりつつあります。
株式会社パルコはPsychic VR Labと共同で「2020年の買い物体験」というテーマでVRショッピングを体感できるイベントを、渋谷で先日開催しました。筆者も実際に体験しに行きましたが、非日常的な空間に様々なファッションアイテムが展示されており、HMDの一種であるHTCViveのコントローラーを使って操作していきます。仮想空間のファッションアイテムを選択し、詳細に見ることが可能なインターフェイスになっていました。最終的に、その場でアイテムのQRコードを印刷してもらい、そのままリアル店舗で購入できるのです。服は専用の3Dスキャナで読み取っていて、質感までかなり再現されており、購入における違和感がないレベルまで来ていると感じました。
体験するまでは、ガジェット好きな男性でなければいかつく感じるHMDデバイスを装着して買い物するというのは厳しいのではとも思っていました。今回の場所は、渋谷のスペイン坂の上のショップの中で行われていたため、普通にウィンドウショッピングに来ていた女子の中でも楽しみながら体験する人達もいたようです。
今回は非日常空間の中、例えば宇宙空間での仮想ショッピングでした。普段行けないようなリゾート地やパリやイタリアの街角などでのショッピング体験などができると、それだけでテンションがあがり、衝動買いを誘発するようなこともできるのではないかとも感じました。
今回実験をすすめているパルコの担当者に聞きましたが、「パルコとしてはVRを自宅で体験する女性などはまだまだ少ないと考えている。リアルにパルコの店舗に来ていただくためのオムニチャネル戦略の一環として、こうしたVRによるショッピング体験も位置づけている。」というコメントがありました。
こうした仮想世界でのショッピングの可能性は、とても大きいのではないかと私は考えています。
例えば我々は書籍を購入したいと考えた時検索するためのキーワードとしてタイトルや筆者名を入れて検索します。しかしこの「検索ワード」がわからない場合もあります。本屋であればなんとなく探している時に「これはいい本だ!」という発見もあるでしょう。自分が欲しいものの具体的なキーワードがわからないとワードを入力することもできません。
そこで、まるで本屋の中にいるような仮想のショッピングインターフェイスが存在すれば、本棚を眺めるように自分の興味ある分野の様々な本と出会える可能性があります。しかもVRですので物理的な本屋の大きさの制約もありません。巨大な書店の中を自由自在に移動できると、それだけでも色々な気づきがあるでしょう。
このように買いたいものが決まっていない時などは今のECサイトのインターフェイスよりも店舗型のVRショッピングインターフェイスの方が効果的なのかもしれないのです。VRショッピングにはまだまだ様々な体験価値を提供してくれる可能性があり、アマゾンに勝つECサイトを作る可能性すら存在するかもしれない大きなチャンスがある分野と言えるでしょう。
