最近、企業からインタビューに関するセミナーやトレーニングのご相談を多くいただきます。そこには、インタビューを通じてチーム(プロジェクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、マーケッター)の顧客に対する理解を深めることで、サービス開発活動を加速させたい!という願望や、インタビューという顧客理解活動そのものが、チームに強い共感と課題解決に対する所有感を与えてくれるので、様々な壁にぶち当たる新規事業創出活動の着火剤として社内で定着させていこう!などの狙いがあります。
しかし一方で、いざインタビューを実践してみると、既存事業にてこれまで調査会社やコンサルティング会社のインタビューレポートを読んできたビジネスパーソンであったとしても、自分が顧客に向き合うと表層的な話しか聞けない、引き出せない、それどころか対話すらつながらない。といった事態に直面するケースがよくあります。
そこで今回は、インタビュー活動をサポートするなかでチームに対して伝えている5つの心得をご紹介したいと思います。
(いずれもインタビューの技法やフレームワークというより、心構えとして持っておいてほしいポイントです。)
目次
1) 何を持ってもまず、受容(歓迎)の態度を示す。
「インタビューの冒頭でラポールを形成する」っていう話はよく聞きますよね。ラポールとは、カウンセリングやセラピーの世界でいわれるクライアントとの関係性のことで、フランス語で「架け橋」を意味します。で、このラポールを気付くために冒頭で雑談しながらお互いの共通点を探すわけですが、インタビューの開始5分程度で信頼関係を気づくって相当難しいですよね。天気の話や出身地の話で信頼関係築くなんて、到底無理です。では、どのように架け橋をかければよいのか?
その時大切なのは、インタビュールームに来られた対象者を精一杯歓迎すること。外が寒ければ、あたたかいお茶をいれる。ブランケットを渡す。
インタビュー開始前に、なぜ、あなたから話を聞きたいのかを丁寧に伝え、今日会えるのをとても楽しみにしていた、ということも伝えます。
そうすると対象者は、自分は「迎えられたんだ」とう気持ちになり、インタビューアーを助けるつもりになって、普段は答えないような自身の内面や葛藤についても話てくれるようになります。
一番のNGは社交辞令の挨拶もそこそこに、パソコンの画面を見ながら、インタビューに入ってしまうことです。
2) 鉄板フレーズで深掘りする。
インタビューをしていると、予め用意したガイドに沿って進行することや、対象者の話をしっかり記録することに集中をしてしまいがち。
そうすると対象者の発話の中で興味深い話題や視点があったとしても、意識をそちらに向けられず、するーとスルーしてしまうことってよくあります。
どうやって深掘りすればいいのか、聞き方がみつからないまま、次の話題に行ってしまうんです。そんな時おすすめなのが、
A:「なぜ、そのように思われるのですか?」(上位概念)
B:「なるほど、非常に興味深いですね、もう少し詳しく教えてもらえますか?」(下位概念)
というフレーズ。対象者の話題になにか引っかかりを見つけたら、あれこれ考える前にこのフレーズで質問してみてください。
Aでは、発言の背景にある考えや、過去体験、理想の状態などを聞けますし、Bでは、そのエピソードや体験の一部始終を生々しく語ってくれるようになります。この2つはあらゆるテーマ、状況のインタビューで使えるマジックワードです。
「非常に興味深いですね。」というフレーズも相手にスイッチをいれるキーワードなので忘れずに笑
3) とことん「個の追求」を行う。沈黙は当たり前。普段考えてないことを話してもらう。
インタビューをしているとそれが対象者個人の考えなのか、対象者の属性や、所属するコミュニティの総論なのかわからないことがあります。たとえば子育てについて一個人としての考えか、母親全般の代表的な考えなのかが本人も気づかないまま混同して語ってしまっているのです。ここの切り分けが曖昧だと、分析の段階で一般的な総論をあたかも個人の考えのように解釈し、プロジェクトをミスリードします。
そんなときは、「それは●●さんの考えですか?それとも・・・・」という風に確認をし、個人の考えを語ってもらいましょう。
また、対面インタビューでの最大の利点は、個人がもつ考え、気持ち、意味、をじっくり聞けることにあります。「▲▲は●●さんにとってどんな存在ですか?」「●●を使うことでどんな気持ちなりますか?」というように普段考えない問に対しい回答に時間がかかっても回答をじっくり待ちましょう。
4) What→why→Howで終わらない。
課題解決を目的にしたインタビューを実施すると、対象者の問題(what)、そしてその背景にある原因(why)が見えてきます。
よく陥る罠で、WahtとWhyが聞けた段階で「なるほど!そういうことね!」と解決策を早合点に当て込んでしまうことがあります。
しかし多くの場合、その問題を解決できない別の理由が存在します。インタビューアーの意識としてはインタビューしながら、what、whyが見つかっても、そこで探索を終えず「なぜこの問題がいままで解決されなかったのか?」に意識をむけ、そこからもう一歩対話を深め、その謎を解き明かしてください。What→why→Howではなく、What→why→why not yet→Howで課題の本質に迫りましょう。
5) 対象者に弟子いりする。
これまでの総括的な心得になりますが、インタビューは師匠と弟子のモデルだとよく言われます。ポイントは、対象者がインタビュアーに教えるつもりになること。教えるつもりになってもらえれば、対象者は結論だけを話すのではなく、自分の体験を始めから終わりまで、順序立てて詳しく説明してくれるようになります。そしてその時、弟子に求められる立ち振舞は3つ。
・教えを請う。「何を教えて欲しいのか」を対象者に話し、特定のテーマの話題にフォーカスを当てること。
・根掘り葉掘りきく。理解できるまで、対象者の行動や説明に少しでも不明な部分があれば根掘り葉掘り質問する。
・確認する。フォーカスを当てた話題について、理解した内容を対象者に話して確認してもらう。解釈が違えば訂正してもらう。
曖昧、不確実、不明確なビジネス環境下において顧客との対話を通じて、仮説検証を繰り返す能力はあらゆるビジネスパーソンの必須スキルになっています。ぜひ組織全体でインタビュースキルの向上に取り組んでください。