企業内の新規事業のプロジェクトは「既存事業の枠組みにとらわれず自由な発想を」と言って検討が始まりますが、既存事業を無視して自由に発想したユニークな事業案が社内を通ることは滅多にありません。
事業案を通すか否かを判断するのは、既存事業で実績をあげてきた役員です。彼らの目線に立って合意を取り付けやすい事業案に仕立てておくことが求められます。
もちろん、トップや上司など議決権をもつ人が新規性の高いもの寛容で実現までドライブしてくれるなら別ですが、一般的には合議制の会議の中でアイデア保守派の攻撃にされされることになります。
そこで、今回はイノベーションマインドにあふれる斬新なアイデアがつぶされないための4つの防御策についてご紹介します。
目次
防御策1:
客観的データしか信じられない分析タイプにはエビデンスで防御する。
アイデアは所詮、直感的、主観的な情報の塊です。それを分析、客観的に物事を見る論理的思考の人に納得してもらうためには、エビデンスが一番有効です。アイデアを補強するエビデンスとなるようなものを集めましょう。例えば、顧客の思考や活動内容に関する統計、アンケートなどから提案したアイデアとのつながりを見出し、メッセージにします。定量データといっても自分のアイデアを補強するために「都合の良いエビデンス」を自分で意図的にあつめるため簡単です。ただし、エビデンス同士に矛盾があったり、論理的なつながりが希薄になると逆にウイークポイントとして際立ってしまいます。その点はで注意が必要です。
防御策2:
自分の経験以外は理解できない固定観念タイプにはリアルなケーススタディで防御する。
「俺が◯◯だった時にはさぁ〜」というタイプの上司は新しいアイデアの価値判断を常に自分の経験と照合することが大好きです。こういう主観的な価値判断をするタイプは、ケーススタディ(事例)が有効です。その人が一目おいている企業、または商品の事例あるとアイデアの防御に貢献するでしょう。事例がだけでなく、顧客の生の声を映像や画像を使って、生々しく紹介するという手も有効です。また本来は競合他社にむやみに追随する必要はありませんが、提案を通すためにはライバル視する他社に同様の動向が見られるという情報だけでも考えを変えるスイッチャーになることもあります。
防御策3:
当事者意識の欠如した他人事タイプにはアクションプランを具体化する。
当事者意識のないタイプは、新しいアイデアが提案されても賛成・反対の明確な態度をとろうとしません。「自分がやるんだ」という明確な意思を持たないので、極論、どちらでも良いと思っているのです。こうしたタイプに真剣に考えさせるにはより具体的な情報を提供する必要があります。「現状のままではこのほうになる」「改善提案を実施するとアナタの仕事はこうなる」という自分の身の回りのことおつぃてリアルに実感できるような話をしてください。具体的な実行計画案に本人をバイネームでアサインしたスライドを見せるなど、自分ごとで意思決定せざるを得ない状況に持ち込みましょう。
防御策4:
決断力に乏しい保守的タイプには撤退条件付きで承認をもらう。
社内のリソース(ヒト・モノ・カネ)をかけて大きな勝負にでるにはなかなかの勇気のいるものです。オーナー企業であればいざ知らず、大きな決断は事なかれ主義の上司ににはつらいでしょう。そうした決断力が不足している状態においては提案の中に活動に対する具体的なKPIと期限そして撤退条件を明記しておくことがオススメです。投資額の大きなプロジェクトであったとしても、段階的な投資することで、ダメージを最小限にできます。ということを伝えておくことで、同意を得やすくなるでしょう。
新規事業のプロジェクトでは、既存事業の慣習や枠組みから離れたアイデアであればあるほど、「リスクが大きい」「成果が読めない」「時期尚早でまだ判断すべきではない」という抵抗に遭うことになります。プロトタイプを通じた仮説検証や実証実験に至る前に社内でアイデアが死滅してしまわぬよう、社内起業家には自身のアイデアを守り、しっかり孵化させるためのしたたかな作戦が求められます。
引用元:永田豊志著[革新的なアイデアが生まれる発想フレームワーク55]を一部加筆