周回遅れと言われていた行政分野でもデジタル庁の設置が準備されるなどニューノーマル時代に向けて一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)が官民ともに加速しそうな状況ですが,あらためてデジタイズ(デジタル化)とDXの違いを考えてみたいと思います。
日本で最初に大型コンピュータが導入されたのは1955年にUNIVAC-120というコンピュータが東京証券取引所と野村證券に設置されたのが始まりです。それまで手作業で行われていた膨大な証券業務の処理をデジタル化するところから始まりました。それ以降はどんどんコンピュータの性能が向上しても,やってきたことは人間が労働集約な手作業でやっていた計算処理を自動計算することがコンピュータの役割でした。しかし,コンピュータがどんどん小型化し,ネットワークに繋がることで単純な計算や処理のような業務の代替ではなく,もはや我々の生活にかかせないスマホやさらに自動運転ロボットのような新しいサービスや価値を創造できるようになりました。
例えばスーパーで言えば買い物かごを置いた瞬間に合計金額を計算する「自動レジ計算機」は店員の計算を代替しているという意味ではあくまでもデジタイズですが,スーパーの店舗に行く前に自分が買うべき商品をリコメンドしてもらい事前予約したり,事前に自分好みに調理してもらったり,自分が今いるところまで自動運転車で配送してもらうことなどこれまでの買い物行動そのものの付加価値を高めることが可能になっているとするとDXと言えるでしょう。
ここで大事なのは「自動レジ計算機」が最新鋭のAIカメラで判定する技術を採用していたとしても,それはレジで計算していた店員さんの時間効率を高めてレジの人件費を節約する部分最適な効果でしかないのでやはり従来のデジタイズでしかないということです。つい最新鋭のAI機器を導入したらDXのように考えてしまう経営者もいるでしょう。しかしDXとして考える上で大事なのは部分最適ではなく全体最適として事業者側と顧客側に価値を提案しているかどうかです。レジはそもそも必要なのか,デジタルの力で顧客の購買体験そのものをもっと便利にできないかという考え方が必要になります。そうすることではじめて競合他社への圧倒的な競争優位を作ることができるようになります。
例えばモバイルオーダーという仕組みが増えています。コロナでテイクアウト需要が増えたために導入する飲食店なども増えています。あるモバイルオーダーの会社のデータでは店舗で購入したよりもモバイルオーダーの人の顧客単価が27.3%も高くなったそうです。その理由は何でしょうか?これまでの店舗での注文を思い出して下さい。店員さんを前にし,しかも後ろには列ができていたとすればゆっくり注文をしたいと思う気持ちはかなりなくなるでしょう。素早くすませたいので,簡単なセットメニューを選んでしまう人も多いことでしょう。実際カスタマイズできることで有名なサンドイッチ屋さんは日本では細かいカスタマイズする人が本国ほどいないそうです。しかし,モバイルオーダーではプレッシャーをかける店員も後ろに並ぶお客さんもいません。ゆっくり自分が頼みたい商品やカスタマイズ,追加注文なども行うことができます。店頭でオーダーすることと,モバイルでオーダーすることは顧客の体験価値がまるで異なるのです。さらに店舗からすれば事前にオーダーが入るので,製造やピッキングなどのオペレーション調整もしやすく,決済もすんでいれば店頭では商品に受け渡しだけというとてもスムーズなオペレーションになりますから,スタッフの稼働時間もかなり短縮されることになります。さらにスマホでコミュニケーションとれていれば次回使えるクーポンを配信したり,様々なプロモーションのためのコミュニケーションも容易にとることが可能になります。これはレジを自動化することよりもはるか全体最適であり大きな付加価値を生み出す施策になるのです。
DXという言葉が叫ばれている現在ですが,すぐに部分最適なデジタル化することを考える前に一度自社の業務を俯瞰し,全体最適な発想で考えることが大事になるのです。
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