現在、業種業界を問わず、多くの企業が激しい環境化にあります。
あらゆるものがインターネットによってつながった結果、競争のルールが上書きされ、新しい製品・サービスを市場に投入しても、その機能や性能はいずれ競合他社に追いつかれ、コモディティ化し、競争力を失っています。
そのような背景もあって、今、あらためて注目され始めたコンセプトが「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」です。
カスターエクスペリエンスは、これまでの競争軸であった機能や、性能といった物理的・合理的な価値だけでなく、心理的・感情的な、価値を大切にしていることが特徴で、次のように定義できます。
『商品やサービスを購入する過程、利用する過程、その後のサポート過程における経験的な価値(心理的・情緒的)』
しかし、心理的・感情的な価値というと非常に抽象的な議論になってしまい、そのままでは具体的なCX施策を考える際に役に立ちません。
そこで今回はCXを考える際の5つの観点についてご紹介します。
目次
心理的・感情的な価値とはなにか?
CXでは心理的・感情的な価値を付け加えることを差別化や競争力の源泉としています。
ではその心理的・感情的な価値とはどのようなものでしょうか?
その価値を紐解くにあたり、「経験価値マネジメント」の著者であるバードン・H・シュミットが提唱する5つの観点が役立ちます。
<シュミットが定義する5つの観点>
1) Sense(感覚的経験価値)
Senseは顧客の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といった五感を刺激する経験で、美しい外観やデザイン、心地よい音楽、落ち着く匂い、美味しい、良い手触りなどを価値として提供 し、空港のラウンジやホテルロビーの装飾、音楽、香りなどが例に挙げられます。また嗅覚、味覚にはプルート効果(嗅覚や味覚から過去の記憶がよみがえる心理現象)があり、記憶面では大きな影響を発揮する。こららの五感をうまく組みあせた提供価値がSenseに分類されます。
2) Feel(情緒的経験価値)
feelは顧客の内面の感覚・感情に訴求する経験でかっこいい、かわいい、安心、感動、熱狂などを価値として提供します。多くの製品・サービス、ブランドはこの価値に焦点をあてる事が多く、この施策を検討する際、情緒的な価値に目が行きがちになりますが、これ以外に4つの観点がある事を敢えて意識すると良いでしょう。
3) Think (創造的経験価値)
Thinkは顧客の創造性や知的欲求に訴求する経験で、興味深い、勉強になる、面白い、自分を高められるなどを価値として提供します。旭山動物園(動物の生態が学べる)、LEGO等がその例です。
4) Act(行動・ライフスタイル的経験価値)
Actは顧客の行動やライフスタイルに訴求する経験で、今までにない・普段の生活では体験できない価値を提供します。キッザニア、snowpeakなどがこのActの提供価値を訴求している例にあげられます。未知・未経験なものに対する「知りたい」「体験したい」といった認知欲求や「こんな自分になりたい」といった自己実現の欲求がベースになります。
5) Relate(準拠集団・社会的経験価値)
Relateは顧客に対して特定の手段や文化に属しているという感覚を訴求する経験で、メンバーに属していることの誇りや特別感などを価値として提供します。以前よりハーレーダビッドソンやミニなどオーナー同士の繋がりによってロイヤリティを高めることに重点をいています。また、最近ではユーザーコミュニティーや会員サロン,ファンクラブによって価値提供するブランドが増えています。
心理的・情緒的な価値をデザインする
顧客に高い CX を感じてもらうためには、現状の把握が必要不可欠です。
カスタマージャニー上に、5つの視点で、心理的・感情的な価値をマッピング。
自社が提供している(そう思っている)価値と、(ユーザーインタビューを通じて明らかになった)顧客が感じている価値を比較し、どのようなギャップがうまれているのか?把握するところから始めましょう。
みなさんのブランドはどの観点に焦点をあてて価値を提供していいますか?
あるいは、顧客からみた御社のブランドはどの価値によって評価されていますか?
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