2021年3月5日

テクノロジー

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

COVID-19の影響で世界中のあらゆる業界・業種で急速にデジタル化が進んでいます。デジタルトランスフォーメーション(DX)というキーワードが溢れ返るようになってきました。しかしながら元々、産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの流れはCOVID-19が原因だった訳ではありません。そこで改めて、デジタルトランスフォーメーションの定義、背景と必要性、国内の事例、そして成功した企業の特徴について解説させていただきます。また、デジタルトランスフォーメーションと「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」との違いについてもご紹介させていただきます。

 

1.デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

まず、デジタルトランスフォーメーションの概要について解説します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義

デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル時代に対応しながら企業の競争上の優位性を確立することを目的として、データやテクノロジーを活用し組織、業務プロセス、ビジネスモデルを変革するという概念です。デジタルトランスフォーメーションに成功した企業は、利益や生産性が向上し、新製品・サービスを生み出すなどのメリットを享受することができます。

デジタルトランスフォーメーションは、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏によって初めて提唱されました。そして日本においては、2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を提出したことを契機に、広く浸透し始めました。

デジタルトランスフォーメーションはその名前から、組織内IT強化、データの活用などの単純な変化であると勘違いされることがあります。しかし上述の通り、デジタルトランスフォーメーションはただIT化を推進するという意味ではありません。

参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性

デジタルトランスフォーメーションが現在必要とされている背景には、下記の3つの要因が存在します。

<3つの要因>

  • 消費者のマインドの変化
  • 事業環境の変化の速さ
  • GAFAの台頭
  • データ量の増加とAI技術の進化

 

物が溢れかえるようになった現代、商品を購入して所有することから、喜びや満足感を味わえる体験を重視するという変化が消費者のマインドに起こっています。いわゆる「モノ消費」から「コト消費」へ、消費者のニーズが移行しているということです。したがって各企業は、消費者が商品の購入から得られる体験に焦点を当てたビジネスモデルへ移行し、システムや組織全体を変革していく必要があります。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例

建設機器大手の小松製作所は、中期経営計画でデジタルトランスフォーメーションに取り組み、その成果から経産省が選ぶDX注目企業2020においてグランプリを受賞しました。

同社は、建設機器を開発・提供してきた企業です。社会の価値ニーズがモノからコトへ変革する中で、デジタル技術を活用してDXに取り組むコトで競争優位性を再構築しました。

まず、中長期計画で「モノ(建設機械の自動化・高度化)とコト(施行オペレーションの最適化)で施工のデジタルトランスフォーメーションを実現し、安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場を実現する」という目標を立て実行しました。

具体的には、施工の業務プロセスに対して、ドローンや3Dシミュレーション、Webアプリといった最新のデジタル技術を活用して、従来提供していた「モノ(建設機械)」だけでなく、顧客の施工プロセスを大幅に改善するサービスを展開しました。また、オープンイノベーション体制を構築し、CTO室を中心に産学連携も行い、社内のコア技術と外部の知見の融合による技術革新のスピードアップも図りました。その結果、デジタルトランスフォーメーションの好例として経産省に表彰されたのです。

参考:経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/report2020.pdf

https://home.komatsu/jp/ir/library/results/03_KomatsuDX.pdf

デジタル化に伴い、世界中のあらゆる産業において次々と新規プロダクトやビジネスモデルが開発されています。この流れに乗り遅れないためには、新しいデジタル技術を用いて既存のビジネスを脱却し、新しい価値を生み出していくことが必要です。数多くの企業において、既存のITシステムは老朽化しています。既存事業を成長させることも、新規事業を始めることも苦しい状況です。また多くの場合、ITシステムは企業の事業部門ごとに構築されているため、部門間の連携や企業全体としてのデータ活用に至っていません。この体制のままでは、最新のデジタル技術を導入した後の効果も限定的になってしまう危険性があります。

 

2.デジタルトランスフォーメーション(DX)と「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」との違い

デジタルトランスフォーメーションとよく混同される概念として、デジタイゼーションとデジタライゼーションがあります。この二つの考え方は、それぞれ企業がデジタルトランスフォーメーションへとシフトしていく段階を表しています。

  • デジタイゼーション:デジタルを活用した既存業務ならびにオペレーションの効率化化やコスト削減
  • デジタライゼーション:デジタルによりビジネスモデルの変換と新たな価値創造
  • デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術の活用を通じて組織を変革することで、競争優位を築くこと

 

デジタイゼーションとは

デジタイゼーションとは、特定の業務の効率化・コスト削減、またコンピュータに蓄積できるようにアナログデータをデジタル化するなど、部分的なデジタル化を指します。具体的には、紙媒体で管理していた書類を電子化することや、新聞やチラシのようなアナログ広告ではなくネット上のデジタル広告を使用することなどが例として挙げられます。またはビジネスモデルや業務フロー全体のデジタル化によって改善、最適化を目指す活動を指します。具体的には、業務の自動化を目指したIoTの活用、そしてバックオフィス業務の効率化を目的としたRPAの導入などが例として挙げることができます。

 

デジタイゼーションの事例

住信SBIネット銀行は、いち早くアプリやSNSなどのデジタルツールを活用し、国内有数のネット専業銀行として成長を続けています。特にアプリ開発に力を入れており、サービス領域に応じて11種類のアプリが提供されています。

一方で、同行では2015年頃から商品ラインナップの拡充や認知度の高まりから口座開設が急増し、事務処理の負担が課題となっていました。そこで、RPAを活用して事務処理の効率化を推進しました。具体的には、契約システムや保険システムへの入力作業をRPAで自動化し、年間94,830時間もの事務処理時間を削減しました。

このように、デジタイゼーションはデジタルツールを活用して既存の業務を大幅に効率化します。業務フローを大幅に変更せずに取り組め社内の混乱を最小限に抑えて改善できる点がデジタイゼーションの最大のメリットと言えるでしょう。

参考:UI Path
https://www.uipath.com/ja/solutions/case-study/netbk

 

デジタライゼーションとは

デジタライゼーションとは、デジタル技術やデータを用いてビジネスモデル自体の変革を行い、新たな価値創造していくことです。サブスクリプションモデルといったように保有から利用への変換であるとか、ユーザーの体験価値に変容をもたらすような変革をするようなケースがこれに該当します。デザイン経営とDXいう言葉はよく並列されて利用されます。これは実現手段がデジタルで、価値創造の出発点が利用ユーザーに注目するデザイン思考と合致しているためです。

 

デジタライゼーションの事例

アパレル大手のストライプインターナショナルは、店舗やECでの販売に加えて、スマホアプリを活用したファッションサブスクリプションサービス「MECHAKARI」を展開しています。利用者は、MECHAKARIのアプリ上でさまざまなコーディネートを参照できるだけでなく、サブスクリプションサービスを利用することで同社の新品アイテムをレンタルすることができます。また、MECHAKARIを支える仕組みとしてレコメンドシステムやDMPが導入されており、アプリを通して顧客の嗜好性を分析することで、顧客一人一人に最適なコーディネートやアイテムが自動提案されるようになっています。

従来、ファッションアイテムは購入スタイルが中心でしたが、MECHAKARIは「アプリ + サブスクリプション」で新しい価値創造をしている点がデジタライゼーションの好例と言えるでしょう。

参考:MECHAKARI
https://mechakari.com/

まとめると、デジタイゼーションは既存の業務要件から出発してデジタル化による効率化、コスト削減なのに対して、デジタライゼーションはユーザーに提供する新たな利用価値をデジタルによって創出する違いとも言えます。

この二つの違いの差は大きく、従来のシステム開発のプロセスは要件定義から出発するのに対して、デジタライゼーションの場合には価値の定義、創出から出発する必要があり、DX支援するプレイヤーも異なってくることを意味します。

 

3.デジタルトランスフォーメーション(DX)を成功に導くポイント

最後に、デジタルトランスフォーメーションを成功に導くポイントを3点ご紹介します。

いきなりデジタルトランスフォーメーションからはじめない

昨今デジタルトランスフォーメーションがバズワードとなっていますが、DXは広範な知見と多大な労力が伴うため、デジタイゼーションやデジタライゼーションに取り組んだことがない企業が成功させることは非常に困難です。

デジタイゼーションとデジタライゼーションと段階を踏んだ上で取り組むと良いでしょう。

 

経営戦略として全社で取り組む

経産省のDX銘柄2020で紹介されている事例はいずれも経営戦略としてトップダウンでデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。組織変革も必要なため、経営陣が率先して舵取りする必要があります。

 

リーダーの育成と最適なパートナーとの連携

DXに取り組むには、最新情報を常に学習し、それを深く理解しているリーダーが各部署に必要になります。またリーダーのみならず、デジタル化を推進する過程では労働力全体の変化が求められます。具体的には、デジタルツールを理解し使いこなせることや、労働環境に柔軟に対応できる人材の内製化が進んでいるか、最適なパートナーとの連携が鍵になってきます。

 

4.まとめ

この記事では、デジタルトランスフォーメーションの定義、必要性、国内の事例、成功した企業の特徴などを紹介しました。デジタルトランスフォーメーションは、昨今のトレンドとなっていますが、3章で述べたように成功させるには非常に多くのハードルがあります。まずは、新規事業から取り組んでみることをお勧めします。または、既存事業であればデジタイゼーションからはじめて、ステップアップでデジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションと取り組んでみると良いでしょう。

▶︎in-Pocket編集部より
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