マッチングサービス開発成功のカギとは?その本質とグロースのコツ

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はじめに

2023年にi3DESIGNに入社したAJです。現在、クライアント企業様のアプリケーション開発でPM(プロジェクトマネージャー)を担当しています。

これまで私は、BtoBからBtoCまで、様々な業界におけるサービスの企画・開発・運営に携わってきました。サービス開発とは、使う人のニーズを深く理解し、それに応える仕組みを作ることです。まず、誰がどんな課題を抱えているかを明確にし、その解決策を具体的な機能やデザインとして形にします。そして、リリース後もデータやユーザーの声をもとに改善を繰り返し、使いやすさや価値を高めていきます。このプロセスを通じて、日常の中で自然と使いたくなる、実用性の高いサービスが完成します。

今回は私が経験してきたサービス開発の中から「マッチングサービスの本質」についてお伝えしたいと思います。

これからマッチングサービスを企画される事業者様にとって、この内容が新しい視点やヒントとなれば幸いです。

マッチングサービスの本質とは

そもそもマッチングサービスとは、人や企業の「出会い」を創出するサービスのことです。いきなりですがタイトルの結論としては、この「出会い」を創出することこそが、このサービスの一番重要かつ本質の要素となります。
では、マッチングサービスで「出会える」ものやコトには、どのようなものがあるでしょうか?

  • 人と出会うサービス:「タップル」「Pairs」など
  • 仕事と出会うサービス:「クラウドワークス」「Lancers」「ITプロパートナーズ」など
  • 会社と出会うサービス:「BizReach」「Wantedly」など

パッと思いつく有名なサービスを並べてみましたが、みなさんも使用したことがあるサービスもあるかもしれません。たとえば、転職サイトは仕事と求職者を結びつける場を提供し、クラウドソーシングは仕事の発注者と受注者をマッチングさせる代表例です。さらに、BtoB分野では、新たな取引先を見つける商談サービスもマッチングサービスの一例と言えます。

これらは様々な形で従来から社会に機能としては存在していましたが、インターネットの成長とともにより多種多様な「出会い」を、より迅速に選択しやすい形で提供するサービスが発展してきました。

マッチングサービスの特徴

オンライン上のサービスとして提供されているマッチングサービスにはどんな特徴があるのでしょうか。大きな特徴の一つは、利用者が「複数の主体」にまたがる点です。一人で完結するものではなく、必ず双方向の思惑が合致することでマッチングが成立します。そして、双方向の思惑を合致させるためには、お互いにとって価値のある情報提供ややりとりの仕組みを構築することが、マッチングサービスの重要なポイントになります。では、それらを実現し、サービスとして提供する際に意識するべき課題やポイントを具体的に解説していきます。

  1. 登録ユーザーの存在

まず、マッチングが成立するためには、十分な数の登録ユーザーが必要です。これはサービス開始時の最初の課題となります。

  1. 適切なマッチングの実現

ユーザーが期待するのは、自分のニーズや条件に合致した相手との効率的なマッチングです。そのためには、信頼性の高い情報登録やアルゴリズムの最適化が欠かせません。

  1. 取引プロセスのサポート

マッチングが成立した後の取引プロセスも重要です。サービス事業者がこのプロセスをサポートすることでユーザー体験が向上し、リピート率の向上や評判の拡大につながります。

これらを意識しながらサービスや必要な機能をイメージしていくことで、よりスムーズに歩みを進めて行くことができます。

マッチングサービス運営のコツ:ユーザー獲得だけがゴールじゃない

マッチングサービスを成立させるには、十分な数の登録ユーザーが必要と前述しましたが、ユーザー獲得はあくまでサービスの始まりにすぎず、「どうグロースさせていくか?」ということが本質的な課題となります。もちろんユーザーの獲得もグロースの一環であり重要なプロセスであることには変わりありませんが、ここでは、特に開発・運営で直面した課題や意識した取り組み、さらにユーザー獲得後に直面する課題について詳しく解説します。

まずはユーザー獲得から

マッチングサービス運営の初期段階では、いかにしてターゲットとなるユーザーを集めるかが大きな課題です。私の場合、以下の手法を駆使してユーザーを獲得しました。

  • SEOやオウンドメディアでの情報発信
  • SNSやネット広告を活用した集客
  • アウトバウンド営業による直接アプローチ

アイスリーデザインでは、市場のフィードバックを製品開発に反映させるため、マーケティング領域を担当するPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)を設置した体制の支援を行っています。PMMはプロダクトをグロースさせるための営業戦略やマーケ戦略を専門に担います。
▶︎ PMMとは?PdMとの分業体制でプロダクト成長を加速させる、今注目の職種を解説

ただし、ユーザー獲得に成功しただけでは十分ではありません。ユーザー満足度が低ければ、利用頻度が減少し、最悪の場合、離脱してしまう可能性もあります。このような状況が続くと、アクティブユーザー数が減少し、補うための集客コストが増加してしまいます。

改善プロセスの構築 〜理想と現実は…やはり違った〜

サービスのコンセプトを言語化し、それにブレがないように機能やデザインを設計するのは、決して簡単なことではありません。どれだけ慎重に考えても、ローンチした機能が想定より使われなかったり、思ったような反応が得られなかったりすることもあります。そうした事態は決して珍しいことではなく、むしろ起こりうるものとして捉えておくことが大切です。

そうした課題に対応するためには、「計画通りにいかないこともある」と想定し、利用状況を測定できる仕組みを作っておくことが必要だと思います。

開発した機能の利用状況を適切に把握できるよう、あらかじめ指標を設定し、定期的に計測できる仕組みを整えてユーザーの行動をデータとして把握できれば、改善のヒントが見えてきます。こうした指標をもとに改善を重ねることで、サービスの方向性を見失わずに運営できると感じました。

マッチング不成立であってもポジティブな価値を創出

マッチングサービスは、利用者同士が互いの価値を感じてつながる場ですが、すべてのケースで成功するわけではありません。マッチングが成立しなかった場合でも、以下を意識して取り組みました。

  • なぜ成立しなかったのかを分析すること
    このプロセスを通じて、どの条件や情報が不足していたのかを明確化しました。
  • 副次的な価値の提供を目指すこと
    たとえマッチングが成立しなくても、ユーザーが相手を知るきっかけや、次につながる発見を提供することで、サービス全体の満足度を向上させるよう努めました。

これにより、ユーザーは単なる失敗を感じるのではなく、プラスの体験として受け取ることができるようになりました。

与える体験を明確にすることが成功のカギ

そもそもの話になってしまうのですが、マッチングサービスでは、すべてのユーザーに均等な価値を提供することが難しい場合があります。たとえば求人マッチングサービスの場合は、募集要項によっては応募が集まらないことがあります。つまり人気があまりない求人が掲載されることがあり、この求人の企業にとってはサービスに対する満足度が低いと言えます。求人を求める条件は求職者によって様々であるため、全ての求職者が同等のマッチング体験を得られるわけではありません。

これらを前提とし、マッチングサービスの企画段階では、ユーザーにとってマッチングする際の「何が価値であるか」を定義し、マッチングのプロセスにおいて「どのような体験を与えたいか」を設計することが重要です。インセプションデッキやエレベータピッチ、カスタマージャーニーマップを活用し、サービスの方向性を明確化しています。

インセプションデッキとは?

プロジェクトやサービス開発の初期段階で、関係者間の認識を合わせるためのフレームワーク。このデッキを作成することで、「なぜこのサービスを作るのか」という根本的な目的から「どのような方法で実現するか」までを体系的に整理し、チーム全体がビジョンを共有できるようになります。

エレベーターピッチとは?

ビジネスアイデアやプロジェクトの価値を、エレベーターに乗っている短い時間(約30秒〜2分)で伝えられるように簡潔にまとめたプレゼンテーションのフォーマット。エレベーターピッチを作成することで、サービスの本質を明確にし、関係者やステークホルダーに対して短時間で効果的に価値を伝えることができます。また、チーム内での方向性の統一にも役立ちます。

そして、より良いサービスとして継続して提供していくためには、開発フェーズに移行しても、この価値や体験の設計をチームで共有する必要があります。「なんのために作るのか?」「どんな機能が必要なのか?」など、サービスの方向性を具体的に示し、チーム全体に共有・浸透させることで、サービスの本質を見失うことなく、より深い理解を持ちながらマッチングサービスの価値を最大化するための開発体制を整えていきます。

運営フェーズにおいては、継続的な改善がカギを握ります。少しでも価値を感じられるよう、見せ方の工夫、機能の改善、ユーザーサポートなどを強化することにより満足度を補うことにつながります。また、ユーザーからのフィードバックやデータをもとに機能や体験を改善することが、アクティブユーザーの維持やサービスの成長のカギとなります。

  さいごに

マッチングサービスの運営では、常に成長(グロース)が求められ、スピーディーな変化への対応が避けられません。時には企画段階で考えていた前提や要件が大きく変わることもありました。その中で感じたのは、「先を完璧に見通す力」よりも、「変化に柔軟に対応する力」が何より大切だということです。

変化に柔軟に対応するアジャイル開発については、別記事でも紹介しています。
▶︎アジャイル開発とは?メリット・デメリット、他の開発手法との違いを解説

アジャイル開発を成功させるためには、常に顧客中心の考え方を持つことと、それをサービスやプロダクトに落とし込むための体制作りやチーム構築が欠かせません。

この学びは、マッチングサービスに限らず、すべての事業やプロジェクトに共通するものです。変化を恐れず、柔軟な姿勢で向き合うことで、サービスをより良い形へと進化させていけると思っています。この記事が、皆さんの取り組みに少しでもヒントを与えられたなら、とても嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

アイスリーデザインでは、モバイルアプリやWebシステム、UI/UX改善など、お客様のビジネスを成功に導いたサポート実績が多数ございます。​​高い成果を実現するため、ぜひお気軽にご相談をいただけますと幸いです。

ABOUT US
AJ
これまでWEBメディア、クラウドソーシング、マッチングサイト、求人サイトの事業開発に携わり、プログラマ(PG)、システムエンジニア(SE)、プロジェクトマネージャー(PjM)、プロダクトマネージャー(PdM)として幅広くWEBアプリケーション開発に従事してきました。 2023年より、その経験を活かしてi3DESIGNに参画しています。
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